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【六川亨の視点】2024年3月16日 J1リーグ第4節 東京ヴェルディvsアルビレックス新潟

J1リーグ第4節  東京V 2(1-1)2 新潟
16:03キックオフ 味の素スタジアム 入場者数17,055人
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J1復帰の今シーズン、東京Vは開幕から3試合連続して後半アディショナルタイムのPKによる失点で勝利を逃したり、逆転負けを喫したりしていた。そして第4節の新潟戦も、開幕戦の横浜FMとの試合に続いて開始8分にMF山田楓喜の直接FKで先制したが、前半32分に右CKからの失点で同点に追いつかれてしまう。さらに後半24分、左SB谷口栄斗のバックパスが弱くて失速するところ、FW長倉幹樹にカットされて勝ち越しゴールを許してしまった。前半22分にはFW染野唯月がGKと1対1になりながらシュートをブロックされて追加点を奪えないなど、これまでと同じ“嫌な流れ”はこの日も東京Vにつきまとうのかと思われた。

ところがここで城福浩監督は、「不運な形での失点、メンバー交代で腹をくくってリスクを背負いながら」反撃に出た。後半31分に2トップの木村勇大に代えてMF食野壮磨、33分にはMF山田に代えてFW山見大登を投入すると、それまでの4-4-2から染野を1トップ、食野をトップ下、山見を左MF、そして後半開始と同時に左MFに起用されたMF翁長聖を右MFにコンバートする4-2-3-1にシステムを変更。さらに4分後、左SB谷口に代えてFW山田剛綺で5人目の交代枠を使うと、再び染野と山田の2トップ、食野をダブルボランチに落とし、MF見木友哉を左MFにポジションを上げ、山見を右MFにコンバート。そして翁長を左SBと本来のポジションに戻した。

このシステム変更は後半45分に結実する。後半開始と同時に交代出場した右SB宮原和也のクロスにゴール前で見木が飛び込み、左に流れるところ翁長が押し込んで同点ゴールを奪った。残念ながらJ1復帰後の初勝利は今節も実現できなかった。それでも城福監督は終了間際の同点劇に「意味があるのは我々の中心選手のミスで失点した。盛り返して同点にしたことに意味がある」と、これまでの3試合とは違うポジティブなコメントを残した。そして選手交代とシステム変更にしても「いくつかはやっています、短い時間で。ただ最後の形が、本当にそのメンバーでそういう形でやったかっていうとそうではないんですけれども。多分メンバーを見た時に(選手は)これは 回すんだなっていう形、ローリングしながらこう攻めていくんだなって理解はあったと思います」と選手の対応力を称えた。

指揮官の“ギャンブル”に今シーズン移籍組の見木や翁長が応えて演出した同点ゴール。順位こそ後退したが、ターニングポイントになる試合にできるかどうか。29日の京都戦が楽しみでもある。

 

 

 

六川亨(ろくかわ・とおる)

東京都板橋区出身。月刊、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長を歴任し、W杯、EURO、南米選手権、五輪を取材。2010年にフリーとなり超ワールドサッカーでコラムを長年執筆中。「ストライカー特別講座」(東邦出版)など著書多数。