J論 by タグマ!

絶賛勢力拡大中。フロサポたちの”合言葉”とは?【Jに魅せられて/川崎フロンターレ編・前編】

ただ憲剛選手に優勝させたい。いまはそれだけかな。

近年のJリーグは新規ファン層の開拓に向けて積極的に取り組んでいるものの、満員の観衆で埋まる日本代表の公式戦と比べて、まだまだJリーグの動員力にはさまざまな課題が残っている。新規層に響くJリーグの魅力とは何か。その女性的視点で、女性ファン拡大の取り組みを続けている団体が『Jユニ女子会』だ。J論では定期的なシリーズ企画として、Jユニ女子会のメンバーにインタビューを敢行し、Jリーグの新規ファン層拡大のために、私たちができることを検証していく。第5回は独特な企画力で人気を集めている川崎フロンターレから二人のサポーターが登場する。

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(写真・左)
みやまぃさん
愛知県名古屋市出身。川崎フロンターレのサポーター歴は7年。イチ押しの選手は新井章太選手、阿部浩之選手。

(写真・右)
いずみさん
神奈川県横浜市出身。攻撃的なパスサッカーと独創的な企画の数々でサポーターを楽しませてくれるフロンターレに魅了されてサポーターに。好きな選手は中村憲剛選手。今年の目標はホーム全試合参戦!


▼それぞれのターニングポイント

ーー今まで合計4回、この『Jに魅せられて』のインタビューをやってきましたが、必ず「フロンターレ」という言葉が出てくるぐらい他クラブのサポーターから見ても川崎フロンターレは魅力的に映るようです。

そこで今回はファン歴の長いフロンターレサポーターとファン歴の短いフロンターレサポーターの方に集まっていただき、それぞれが好きになったきっかけを比較することで、さらにフロンターレの魅力を探れるのかなと思いまして、今回はフロンターレサポーターお二人にお越しいただきました。

まずはファン歴2年と、比較的最近フロンターレサポーターになったいずみさんからお話を聞かせていただきます。まずは、フロンターレサポーターになる前のサッカーとの関わりはいかがでしたか?

いずみ サッカーとの最初の関わりは、小学生のときに開催された2002年日韓W杯です。私は神奈川県の横浜市出身なのですが、当時は横浜市全体が盛り上がっていました。それまでは自分の中でサッカーは大きなものではなかったのですが、横浜市の小学校の給食が出場する国の料理が日替わりで出てくる時期がありました。子どもは割と単純なのでそういう試み自体も面白かったですし、テレビでW杯の試合を見ると「サッカーは面白いな。迫力があるな」と思っていました。当時気になっていた選手は、バットマン(宮本恒靖選手)、トサカ頭の選手(戸田和幸選手)、あとは稲本潤一選手。いわゆるインパクト系の選手たちです。

ーー初めてJリーグの試合を見に行ったのはいつ頃ですか?

いずみ たしか2009年ぐらいの横浜FCの試合でした。学生時代にトレーナーの実習で試合を見学したときに見たのが初めてです。

ーーそのあと、横浜FCを好きになるところまではいかなかったのですか?

いずみ そうですね。当時はカズ選手の偉大さに気付いていないぐらいですので……。そのあとは新卒で入った会社がマリノスのスポンサードをしていたこともあって、新入生歓迎の一環で新入社員全員でマリノスの試合を見に行きました。そのときは日産スタジアムのピッチ内をグルっと回って、マスコットのマリノスケと一緒に写真を撮りました。三ツ沢と日産スタジアムの違いも感じましたが、試合中の駆け引きとか、そういうことがあるんだろうなと思うと、サッカーをもう少し見たいなと思うようになりました。ただコンスタントにサッカーの試合を見に行くようになったのはなぜか代表戦でした。

ーーマリノスではなかったのですか?

いずみ それには理由があります。ずっと仕事がシフト制の休日だったため、Jリーグの試合は土日が多く、私は平日休みが多いので、火曜日や水曜日に開催される代表戦のほうが見に行きやすかったんです。土日休みになっているいまは、フロンターレの試合ばかりに行っている状況ですが……。

ーー代表からフロンターレサポーターに移行するまでのプロセスはいかがですか?

いずみ 勤務地が等々力のある武蔵小杉になったことが一つのきっかけでした。武蔵小杉には熱狂的なファンの方が多く、それに影響されました。接客の仕事だったので、フロンターレが会話の切り口になりますし、そういった方々と会話ができるように、フロンターレのことを知ろうと思い、行ってしまったのが麻生(グラウンド)だったんですよ。

麻生では中学生のときに見ていたサッカー部の練習とはもちろん全然違くて、「さすがプロだな」と感心していました。練習後には一人ひとりと握手をして、サインを書いて、写真も撮ってくれるファンサービスに対して、「サッカー選手はこんなことまでしてくれるんだ」とすごい衝撃を受けました。良く接してくれる選手たちの試合をちゃんと見に行きたいと思うようになって、いまは土日休みでもあることからここ1、2年でフロンターレの試合を見に行くようになりました。フロンターレは女子を魅了する企画もすごくたくさんありますし、グッズもかわいい。そう思うと、いつの間にかハマっている自分がいました。

ーーその一方でみやまぃさんは長いファン歴だと聞いていますが、フロンターレサポーターになる前のサッカーとの関わりはいかがでしたか?

みやまぃ 私は両親に多分に影響されたのですが、両親は2003年からフロンターレのことを追いかけています。両親がハマった一つのきっかけは、川崎市内の小学生に親子で入れるペアチケットが年に2・3回無料で配布されていて、そのチケットを利用してフロンターレの試合を観戦するようになりました。

生まれは愛知県の名古屋市なのですが、祖父母が中日ドラゴンズの大ファンで、名古屋ドームの近くに住んでいた影響もあって、野球を見に行っていたのですが、父親の転勤で川崎市に引っ越してきた当初は、中日の試合を見に行けなくなったので、一つの家族の共通の趣味がなくなったような状況でした。こっちで何か家族でできることはないか。そう考えたときにマリノスの試合を見に行くこともあったのですが、両親はフロンターレにハマっていきました。

ーーご両親は何に惹かれたのでしょうか?

みやまぃ 両親は天野春果さんという、いまは東京五輪・パラリンピックの大会組織委員会に出向している独特な発想をする方に惹かれたようです。選手ではなく、天野さんに惹かれたという特殊なパターンですね。たしか03年は中村憲剛選手のプロ初年度の年で、ジュニーニョ選手が加入したのもたしか03年。天野さんが展開する企画に惹かれつつも、チームとしても上り調子でしたので、そこから両親もズボッとハマったようです。

「家にどうせご飯はないんだから、等々力に行ってご飯を食べるよ」ぐらいの感覚で、私も年に何回か両親に連れられて等々力に行くようになりました。それが7年前ぐらいですが、どっぷりハマったのはここ2・3年の話です。社会人10年目を超えると、職業柄のストレス解消も含まれていますが……(苦笑)、スタジアムでの応援は家では出ないような大声を出せますし、勝てばその後5日間は働けるみたいな、そういう”リポD効果”があるので、それで私はハマっていきました。

また決定的だったことが、長年好きだった稲本選手がフロンターレに移籍してきたこと。02年の日韓W杯で”金髪・稲本”がゴールを決めて、”稲本フィーバー”が到来。そのあとはイングランドのクラブに移籍してしまったので、あまり追いかけていなかったのですが、私がファンになっていたフロンターレに稲本選手がやってきたことは、もう運命だろうと(笑)。たしか当時は未婚だったし(笑)。「これは毎回等々力に行かないと!」と決心した次第です。

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▼選手との距離感が近いフロンターレ

ーー先ほど、いずみさんはフロンターレの企画やグッズに惹かれたというお話でしたが、具体的に惹かれたものは何ですか?

いずみ 例えば、選手がバナナの被り物で宣伝する企画や、マスコットのふろん太をモチーフにしたグッズに惹かれます。あとは選手たちの商店街回りですね。

ーーその商店街回りとは?

いずみ 新シーズンの初めに川崎大師に必勝祈願をしたあとに、選手たちがいろいろな商店街に散らばって商店街を回るんです。そのとき、私は中村憲剛選手のいるグループに同行したのですが、子どもから大人まですごい行列ができていました。

みやまぃ 川崎市内の各商店街に選手2人ずつぐらいが配置されて回っているんだよね。

いずみ 商店街の方々のフロンターレ愛が伝わってきましたし、みなさんは選手たちに「今年こそタイトルを獲ろう!」といろいろな声をかけていました。でも私はファン歴がまだ浅かったので、何を話して良いのか分からずに、「応援しています。頑張ってください」しか伝えられませんでした。もちろんサインも書いていただいたのですが、私の誕生日が近かったこともあって、「ハッピーバースデー」と書いていただきました。選手の方々は嫌な顔一つせず、丁寧に対応してくださったことがすごくうれしかったです。

ーー選手との距離が近いんですね。

いずみ 選手との距離感がすごく近いことはうれしいです。

▼JリーグMVPの次は、「憲剛にシャーレを」

ーーちょっと心苦しい質問をさせていただきますが、フロンターレはまだタイトルを獲ったことがないことに関しては、どう思っているのでしょうか?

みやまぃ ウチの家族は、またJ2に降格しても離れないんじゃないかな。いまよりも成績が良くない時期を知っているので、あまり気にしていないというか……。「2位? すげーじゃん!」みたいな。ただ憲剛選手に優勝させたい。いまはそれだけかな。

いずみ 「憲剛にシャーレを」。これはもう合言葉ですね。JリーグMVPは獲ったのですが……。

みやまぃ 私はMVPの発表の瞬間に会場の横浜アリーナにいて、聞いた瞬間に号泣しました。「川崎フロンターレの中村憲剛」と呼ばれる前の「か」って呼ばれた瞬間に「うわー!」と泣きました。個人的にはなんかそこで消化されてしまったところは否めないかも。憲剛選手が一番になったのならばそれで、と。

いずみ 個人的に私は憲剛選手がベストイレブンに並んでいるだけですごく幸せでした。すごくうれしくて泣きました。

みやまぃ 私は憲剛選手が座っているところと結構近めの席に座っていて、憲剛選手がアウォーズの途中でトイレに立つ場面を見たので、「これは緊張しているな。あれ、憲剛選手がMVP?」みたいな思いは、発表前に一度感じました。

ーー中村憲剛選手がMVPを獲得して、周りのサポーターの反応はいかがでしたか?

みやまぃ 「ぎゃー!」「わー!」と言っていましたね。

いずみ 「選手得票でダントツの1位だった」といったニュアンスのことを言っていたと思いますが、村井チェアマンのスピーチも良かったです。

みやまぃ もしかしたら優勝していないのに、MVPに選ばれたことに対するフォローだったのかもしれませんが、称賛の言葉としてはものすごくうれしかったです。

いずみ それだけに昨季はシャーレが欲しかった。

みやまぃ タイトルを獲るならば、やっぱりリーグ戦が良いですね。
(後編「やめられない、止まらない。あなたにとって、フロンターレとは?」)