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真面目に妄想、アギーレ・ジャパン。大迫と野津田の2トップ、3バックの左に扇原!?

英国+関西流ライター・内藤秀明が、予想される「メキシコ色」を考察しながら4年後の日本代表を考える。選ばれた11人は、ちょっと意外な顔ぶれとなった。

毎週、週替わりのテーマについて複数の論者が自説を語る。それが『J論』――なのだが、新コンセプトでのコラムも用意させてもらうこととなった。一意専心コラムと題し、週のテーマにとらわれることなく、それぞれの書き手が自由に一つの記事、取材テーマを掘り下げていく。第2回目となる今回は英国+関西流ライター・内藤秀明が、予想される「メキシコ色」を考察しながら4年後の日本代表を考える。選ばれた11人は、ちょっと意外な顔ぶれとなった。

▼似ている選手を選び抜く
 日本が敗れた現実を受けて、過去ではなく未来に目を向けてみようと思う。日本の敗退決定後、サッカー界に一つにニュースが飛び込んだ。日本代表次期監督に、ハビエル・アギーレ氏の名前が挙っていると各メディアが報じたのだ。

 アギーレ氏は、アトレティコ・マドリード、レアル・サラゴサ、オサスナ、エスパニョールなど、スペインのチームでの指導経験があるメキシコ人監督で、自国の代表も2度にわたって率いたことがある、経験豊富な指導者だ。

 さて、このニュースが事実なら、気になるのは「今後の日本代表はどうなっていくのか」という一点だ。アギーレ監督は、様々な国籍のコーチ陣を日本に連れてくるという報道もあるが、やはりメキシコ人の監督であり、メキシコ色を日本に持ち込むに違いない。では、メキシコ色とは何色なのか。

 そこで今回は、ブラジルW杯でのメキシコ代表を説明する。そして、メキシコのレギュラー陣と「似ている」日本人選手を11人選ぶことで、メキシコ色に染まった4年後の仮想日本代表を「真面目に妄想」していきたい。

▼メキシコのサッカーとは
 今大会のメキシコは、[3-5-2](中盤は▽型)のシステムを起用。最終ラインには、足元の技術が高い選手を揃え、低い位置から、長めのグラウンダーの縦パスを当てていく。ウイングバックは高い位置まで上がって相手を押し込み、ボールをもらえば、クロスを上げることもあるが、繋ぐことをより重視する。中盤の攻撃的MFの二人と2トップは、縦パスを受けると、即興のパスワークでペナルティボックス侵入を目指す。相手ボックス攻略に関してパターン化されてないとはいえ、系統的には、浦和レッズ・ペトロビッチ監督のサッカーに近いと言えるだろう。

 さて、そんな前がかりになるサッカーなだけに、守備戦術もしっかり組織しておかなければ崩壊してしまう。メキシコはボールが奪われると、ポジションは関係なく、すぐに意識を切り替え、前線からプレッシャーをかけ、ボールを取り戻そうとする。ただ、攻守の切り替えがいくら素早かろうとも、プレッシャーの網をかいくぐられることはある。そんな時は、アンカーの選手が、危機察知能力と豊富な運動量を駆使して、ボール回収に動く。

 守備は組織的ではあるものの、攻撃に関しては、個のテクニックやアイディアに頼っているのが、今年のメキシコのサッカーだ。では、各スタメン選手の紹介とそれに似ている日本代表の選出に移りたい。

▼今大会のメキシコ代表から占うアギーレ・ジャパン
(メキシコの選手は2014年7月3日時点での年齢、日本代表選手は2018年7月3日時点・”4年後”の年齢)

GK:ギジェルモ・オチョア(29歳、185cm)=東口順昭(32歳、184cm、ガンバ大阪)
 GKの活躍=チームの躍進と言われる今大会において、最も大きなインパクトを残しているゴールキーパーが、オチョアだ。彼の武器はなんといっても、シュートセービング能力。決定機を何度も阻止して、失点を許さない。そんなオチョアに似ているキーパーは誰かと考えると、2013年度のJリーグにおいてもセーブ率が最も高い東口ではないか。

DF:フランシスコ・ロドリゲス(32歳、191cm)=吉田麻也(29歳、189cm、サウサンプトン)
 3バックの右でプレーするロドリゲスは、身長が高く、空中戦に強い。また攻撃面では、両足でボールを扱えて、前線にボールを当てることができる。これに該当する選手となると、吉田だろう。ただ、ロドリゲスは、サイドの守備で粘り強く相手についていくこともできるのだが、現時点の吉田はサイドに流れた時の守備が苦手だ。3バックを考えると、この欠点を改善する必要がある。

DF:ラファエル・マルケス(35歳、185cm)=阿部勇樹(36歳、177cm、浦和レッズ)
 足元の上手さは、ワールドクラス。正確な縦パスはもちろん、両サイドに両足でサイドチェンジすることができるセンターバックは希有な存在だと言える。ボランチでもプレー可能。守備に関しては、危機察知能力が高く、カバーリングでチームに貢献する経験豊富なベテランだ。正直、マルケスと同じタイプのCBは、日本はおろか世界中を探してもそういない。それでも近いタイプを挙げるなら、ヨーロッパでのプレー経験があることも考慮して、阿部ではないか。他には、今野泰幸、高橋秀人で悩んだのだが。

DF:エクトル・モレノ(26歳、183cm)=扇原貴宏(26歳、184cm、セレッソ大阪)
 左CBとしてプレーする左利きの選手。高い位置まで、ボールを持って運び、前線の選手の足下にボールを供給するテクニカルなディフェンダーだ。正直に言えば、日本人で左利きのセンターバックは少ないので、右利きの選手で選ぼうとも考えた。ただ、組み立ての局面で、左CBが左利きである意味は大きい。実際、それを重要視する監督は多い。そうなってくると年齢、体格、技術で、モレノに一番近いのは扇原だという結論に至った。ただ、現状の扇原には日本代表のCBを務められるほどの強健さはないので、今後鍛えてほしいところ。

DF :パウル・アギラール(28歳、178cm)=内田篤人(30歳、176cm、シャルケ04)
 対人戦が強い右ウイングバック。また、サイドを何度も往復する運動量もある。黒子に徹することができるタイプだ。これはもう、高いインテリジェンスと一対一の強さを持つ内田で決まりだろう。

DF:ミゲル・ラユン(26歳、176cm)=酒井高徳(27歳、176cm、シュトゥットガルト)
 左ウイングバックとしてプレーする、右利きの選手。ボールを相手の前にさらしながら、縦に抜くスピードを持つ選手である。プレースタイルだけみれば、長友のほうが似ているかもしれない。ただし、体格や年齢も考えて、酒井高徳を選んだ。

MF:ホセ・フアン・バスケス(26歳、166cm)=山口 蛍(27歳、173cm、セレッソ大阪)
 中盤の底でひたすらボールをかっさらっていくアンカー。この選手なしに、メキシコの守備は語れない。攻撃では大きな展開はしないが、短いパスを正確に当てる。ここは、山口というぴったりな選手がいただけに、ほぼ迷う余地なし。ただ、バスケスに比べると球際が弱いので、より成長してほしい。

MF:エクトル・エレーラ(24歳、183cm)=南野拓実(23歳、174cm、セレッソ大阪)
 攻撃的MFでプレーするエレーラは、両足でボールを扱え、ドリブルで相手をかわし、パスやシュートで決定的な仕事をする、メキシコの中心的選手だ。はじめは、香川真司が該当するだろうと考えたのだが、エレーラにはある力強さや球際でファイトする部分が香川には足りない気がした。そこで、その部分も持ち合わせている南野を選出した。

MF :アンドレス・グアルダード(27歳、169cm)=丸橋祐介(27歳、178cm、セレッソ大阪)
 メキシコでは、攻撃的MFとしてプレーしたグアルダードだが、本職は、左サイドバック。そのため、展開力というより、縦へのドリブルで、チームに推進力をもたらす。また、キック精度が高いので、セットプレーのキッカーも務めた。左利きのサイドバックで、キック精度が高く、攻撃的MFも務められそうな選手は誰かと考えた時に、最初に浮かんだのが、丸橋だった。

FW:ジオバニ・ドス・サントス(25歳、175cm)=野津田岳人(24歳、175cm、サンフレッチェ広島)
 トップでプレーしたドス・サントスは、元々ウイングの選手。ボールを晒すドリブルを仕掛け、相手をかわし、左足で強烈なミドルも決めることができる。また、絶妙なスルーパスも送る事が可能。ここも正直、悩むポジション。利き足さえ気にしなければ宇佐美貴史が一番近いのだが、レフティーとなると、選択肢が狭まる。ここは今後の活躍も期待して、野津田を選んだ。

FW :オリベ・ペラルタ(30歳、178cm)=大迫勇也(28歳、182cm、FCケルン)
 裏への抜け出しから、ポストプレーまでこなせる万能型FWだ。ここのポジションも迷いはなかった。少ないタッチでボールをさばき、得点も狙える大迫が一番近い選手だろう。

 以上が、アギーレ監督は日本代表監督に就任した際の、仮想4年後の日本代表スターティングイレブンだ。正直に言えば、偏っていることを認めざるを得ない。異論は当然だと思うので、ここでもいいし、ツイッターでもいいので、ぜひコメントしてきてもらいたい。


内藤 秀明(ないとう・ひであき)

英国在住中にFA Coaching License Level 1, 2, internationalを取得。英国的・コーチ的観点からプレミアリーグのゲームを分析する。また、現在は関西を中心に育成年代からJリーグまで幅広く取材活動を行っている。Twitterアカウントは @nikutohide