3トップは正副6名を海外組が独占? 意外に少ない「残り枠」に宇佐美、米本、柴崎、そして川崎Fの新星を推す
「意外に枠は埋まっているのではないか?」という視点から、残された枠に滑り込むJリーグの精鋭を予想してみた。
<写真>プレシーズンマッチで活躍する本田圭佑
▼本田、香川、岡崎……。居並ぶおなじみの顔ぶれ
「ガチ予想」はある種の切なさを伴う企画である。
代表選考なんて夢や浪漫を語ったほうが楽しいに決まっているのだが、指揮官の立場になってみればそうも言ってられない。「最初は遊びみたいなメンバーでいいんじゃない?」なんて無責任なことを言う人(しかもサッカー関係者!)もいるのだけれど、監督の立場になって考えてみればそれが非現実的な夢想であることは明らかだ。
9、10、11月に2試合ずつをこなした日本代表は、そのまま1月の豪州で開催されるアジアカップへと臨む。いろいろな選手を大量招集なんて「いかにも」な景気の良い報道もあるけれど、それもどうだろうか。監督就任早々、「ガチ勝負」を求められる大会が4カ月半後にあるのだ。冷静に考えて、「遊び」に使える試合はないと観るべきだし、そうなったときに指揮官を変に責める空気が生まれるのだとしたら、とんだ勘違いというものだ。
アギーレ監督の「最初のリスト」の詳細は不透明で、そもそも何人呼ばれるかも定かではないのだが、慣例どおりに23人が選ばれるのだとしたら、その椅子はすでに相当数が埋まっている。海外組にはすでに「招集状」が発せられており、その相当数が漏れている。[4-3-3]で考えるのであれば、3トップに関してはもう埋まっているのでは?という感覚すらある。
【センターFW】
柿谷曜一朗 1990年1月3日(24歳)
大迫勇也 1990年5月18日(24歳)
【右ウイング】
本田圭佑 1986年6月13日(28歳)
田中順也 1987年7月15日(27歳)
【左ウイング】
香川真司 1989年3月17日(25歳)
岡崎慎司 1986年4月16日(28歳)
以上、海外組6名の名前が挙がる。変な冒険のできない初戦であることを思えば、本田、香川、岡崎といった選手たちを軸にして戦うことを選んだのは、オーソドックスな選択だろう。唯一「遊び」があるのはポルトガルに渡って早々の田中順也だ。アギーレ監督のイベリア半島人脈で何やら情報が入っていたのかもしれない。
もちろんこれは、アギーレ監督が「左利きの右ウイング」を使うことや、岡崎、香川のウイング起用を前提にしての仮定ではある。さらに言えば、原口元気にも招集がかかっていたこと(負傷辞退)を思えば、香川や本田のMF起用を考えているのかもしれない。となると、ウイングには一枠の余裕がある。あるいは柿谷を左で考えるなら、センターFWに余裕があるかもしれない。いずれにせよ、国内組に残された枠は「1」ということになりはしないか。
その「1」は誰だろう。真っ先に名前が出てくるのは南野拓実(C大阪)だろう。ただ、調子は上向きとはいえ、まだ今の彼は万全ではない。10月にはAFC・U-19選手権も控えており、今回の招集は見送るのではないか。現在の調子で言えば、最近話題の「和製ムトゥ」こと武藤嘉紀(FC東京)のプレーは個人的に好きだ。技術があるのに馬力もあって、意外なほどの「頑張り屋」でもある。かつてサイドバックでプレーしていた時期もあり、ディフェンスをおろそかにするわけでもない。個人的には推したい選手なのだが、今回は選外ではないだろうか。というのも、もっと「入りそう」な選手がいるからだ。
つまり宇佐美貴史(ガンバ大阪)である。そのフィニッシャーとしての才能はやはり傑出している。かつてジュニアユース時代の恩師である鴨川幸司監督は、当時中学2年生だった宇佐美について「将来はマグノ・アウベスのようなゴール前で抜け目なく、鋭く点を獲るストライカーになってくれれば」と語っていた。個人的には「ロマーリオのような選手になってくれれば」と思っていたのだが、だいぶ「らしく」なってきたのではないだろうか。かつてはサイドハーフで気ままなプレーを悪い意味で許されていたのだが、「点を獲る」ことに重点を置いた責任を課せられることで一皮むけた。宇佐美はやはりゴール前の選手だ。サイドで上下動を強いても、その個性は消えるだけだろう。そのライバルは香川ではなく、柿谷だと見る。
【もう1枠】
宇佐美貴史 1992年5月6日(22歳)
【俺のイチ押し】
武藤嘉紀 1992年7月15日(22歳)
▼中盤は残り2枠?
前線に7枚のカードを配してしまったので、中盤中央の3枚に選べるのは合計5枚。[4-3-3]の3センターハーフにどんな選手を置くかは監督の個性が色濃く出るもの。たとえば、アンカーの選手として文字通りにディフェンスラインの前に「錨(いかり)」としてタフに戦える屈強な選手を置く監督もいれば、あえてこの位置にピルロのような創造性豊かなタイプを置く指揮官もいる。駒次第、組み合わせ次第となるこの3つのポジションに当確の選手はいるだろうか。
【セントラルMF】
長谷部誠 1984年1月18日(30歳)
細貝萌 1986年6月10日(28歳)
清武弘嗣 1989年11月12日(24歳)
まず海外組で名前が出てくるのは、この三人だろう。清武は前線の候補という可能性も高いが、前線はちょっと人余りの傾向もあるので適性を探る意味でもこちらでの起用ではないか。30歳になる長谷部の当落は注目ポイントだが、私はメンバー入りすると見る。心理面で大きな影響力を持つ選手であるし、34歳の遠藤保仁を外すとしたら、長谷部も同時に外すのは監督として「リスク」という判断になるのではないか。長谷部を構想外にするとしたら、それは「アジアカップ後」と予想する。
となると、残りは2枠。山口蛍(セレッソ大阪)が健在ならば、残り1枠となることだったが、彼は負傷中だ。上記3人が比較的高齢の選手であることを考えても、25歳未満の(つまり4年後に肉体的なピークが来る)世代の選手が望ましい。国内組の「ボランチ」から適材を探していくと、まずはボールを「奪う」能力に長けた選手から1名を選ぶと、やはり青赤軍団の7番ではないか。米本拓司の現在のパフォーマンスは「国際試合ならどうだろう?」という興味を駆り立てるのに十分なものと言える。さらに遠藤に代わる、ボールを「出す」選手となると、これもまた「やはり」柴崎岳の名前が思い浮かぶ。ほかにもJリーグに良いボランチはいるのだが(J2にもいる)、4年後まで意識して「メンバー入りさせたくなる」選手は柴崎と米本。この二人だ。
イチ押しは負傷中のために絶対に選ばれないことは分かっている札幌の深井一希。米本がそうであったように、たび重なる負傷を乗り越えての「復活」を期待して選んでおく。
【残り2枠】
米本拓司 1990年12月3日(23歳)
柴崎岳 1992年5月28日(22歳)
【俺のイチ押し】
深井一希 1995年3月11日(19歳)
▼選考難航の最終ライン
最初から難しいことが分かっていたのが最終ラインである。吉田麻也は恐らく呼ばれるのだと思うが、31歳になる相方の今野泰幸(G大阪)をどう考えるか。落選予想が多いようにも思うのだが、今回はメンバーに残るのではないか。試したくなるような若手はアジア大会のU-21代表に呼ばれて今回は招集困難という事情もある。
【センターバック】
今野泰幸 1983年1月25日(31歳)
森重真人 1987年5月21日(27歳)
吉田麻也 1988年8月24日(26歳)
よって、センターバックはあと1枠。ザッケローニ監督時代の最後に候補入りしていた昌子源(鹿島)、山下達也(C大阪)の名前も出てきそうだが、個人的には毛色の違う選手を推す。
【あと1枠】
谷口彰悟 1991年7月15日(23歳)
原口元気と同世代、大卒ルーキーの谷口(川崎F)だ。テクニックを持ったボランチタイプのセンターバックという、他の候補には見られないタイプ。アンカー起用も含めての選出は意外にあるのではないだろうか。イチ押しは、今回選ばれないであろうこの選手。
【俺のイチ押し】
植田直通 1994年10月24日(20歳)
サイドバックはどうか。内田篤人が負傷中だが、3枠は埋まっているように思う。
【サイドバック】
長友佑都 1986年9月12日(27歳)
酒井宏樹 1990年4月12日(24歳)
酒井高徳 1991年3月14日(23歳)
あと1枠、探したいのは「左利きの左サイドバック」だろう。[4-3-3]で左ウイングに中へと切り込むタイプを置くなら、なおさらだ。その発掘ができれば、「長友の右サイド起用」という新たな選択肢も出てくる。では、左利きの左サイドバック、それも相応に若い選手でとなると、今のJ1リーグでは登里享平(川崎F)、丸橋祐介(C大阪)、大野和成(新潟)といった名前が出てくる。少し上の世代では藤春廣輝(G大阪)、太田宏介(FC東京)、下平匠(横浜FM)といった選手たち。ここは正直に言って分からないので、純然たる「予想」だが、バランスで考えて太田を選んでみた。
【あと1枠】
太田宏介 1987年7月23日(27歳)
▼GKの人選にサプライズはあるか?
一言で言ってしまえば、焦点は川島永嗣を選ぶのかどうか。GKはチームの要。入れ替えにもっとも繊細さが要求されるポジションだが、「監督交代」はその契機となりやすい。ただ、今年31歳、4年後に35歳という川島の年齢はGKというポジションの特質を思えばそれほどネックと思われないのではないか。よって、GKの選考に「遊び」は発生しないと見る。ただし、正GKの人選についてはここからだろう。
【ゴールキーパー】
川島永嗣 1983年3月20日(31歳)
西川周作 1986年6月18日(28歳)
権田修一 1989年3月3日(25歳)
この3人、年齢バランスもいいのだ。個人的イチ押しはやはり、東口順昭(G大阪)。Jリーグのパフォーマンスで言えば、林彰洋(鳥栖)も選ばれておかしくないプレーは見せている。
【俺のイチ押し】
東口順昭 1986年5月12日(28歳)
「最初の選考結果」が発表されるのは、28日15時半から。それほどサプライズに富んだメンバーにはならないだろうが、その中でも新監督の「色」は見えるモノ。特にベテラン選手たちの処遇は一つの注目ポイントと言えそうだ。
川端暁彦(かわばた あきひこ)
1979年、大分県生まれ。2002年から育成年代を 中心とした取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画し、2010年からは3年にわたって編集長を 務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴ ラッソ』を始め、『スポーツナビ』『サッカーキング』『月刊ローソンチケット』『フットボールチャンネル』『サッカーマガジンZONE』 『Footballista』などに寄稿。近著『Jの新人』(東邦出版)。