アギーレカラーは何だ? 東口、米本、昌子、柴崎、そしてスペイン語を解するあの男を推す!
まずは博識の党首・大島和人が占う23名。「落選は誰か?」という視点とJリーグから吸い上げるであろうタレントについて大胆に予想してみた
<写真>FCソウルで活躍するエスクデロ・セルヒオ
▼まず問われる。「最初に誰を外すのか」
軽い気持ちで受けた原稿だったが、23人を選び始めてすぐ後悔した。”ガチ予想”は日頃からサッカーを丁寧に見ていないとできない。その人の見識を、良くも悪くも如実に浮かび上がってしまう作業である。
まず23人に”入れられない選手”が何名かいる。例えば内田篤人は状態が万全でなく、今回の代表戦は選考対象にならない。原口元気(ヘルタ・ベルリン)は招集レターが出されていて、ブンデスリーガの開幕戦にも出場したが、そこで負傷してしまった。
国内組を見ると、9月14日に開幕するアジア大会出場メンバーが、日程の重複によりアギーレ・ジャパンから外れる。ここに呼ばれている植田直通(鹿島)、大島僚太(川崎)、野津田岳人(広島)はJ1上位チームの主力で、早い時期に代表へ呼ばれても不思議のない存在だ。
新生アギーレ・ジャパンの初戦に絡むメンバーはどうなるのか――。
ベースとなるのは、W杯ブラジル大会の23名だろう。とはいえ、4年後に向けて入れ替えを始めなければいけないし、競争も活発にしなければならない。ザックジャパンはメンバーが固まりすぎて、最後に停滞を起こしてしてしまった。”バトル”が常態化していい意味で活気のある、誰が出ても揺らがぬチームを作ることを、恐らくアギーレ監督も望んでいるはずだ。
まず誰を”外した”かについて説明しよう。ザックジャパンの主力だと、負傷の内田以外に川島永嗣、長谷部誠、遠藤保仁を23名に加えていない。28才の青山敏弘、岡崎慎司が最年長という編成になった。
ロシア大会の時点で川島は35才、長谷部は34才。当然まだ代表に絡んでくる可能性はある。ただし彼らへの依存は大きな問題で、次のキャプテン、ディフェンスリーダーを引き上げなければいけない。アギーレ・ジャパンの主将について”ガチ予想”をするなら、吉田麻也だ。
▼GK、川島の「次」は誰か?
GKは川島の”次”が誰になるか読みにくい。それぞれに強みはあるが、監督の志向するサッカーへの適応も含めて、未知数の部分が大きい。当面の問題は西川、権田に次ぐ選手ということになる。東口順昭、林彰洋は年齢が近くて、次に備えるという部分で弱い。J1でポジションをつかんでいる若手なら櫛引政敏、守田達弥といった顔ぶれだが、「コイツだ!」というレベルには達していない。
“俺推し”は柏レイソルの中村航輔である。GKは何しろ”突然出てくるポジション”だ。川口能活が1995年に19歳で横浜マリノスの正GKに抜擢されたのは、松永成立とソラリ監督の衝突が理由だった。新人の楢崎正剛も95年に、森敦彦の長期出場停止から、横浜フリューゲルスの正GKとなった。そんな彼らが98年のW杯フランス大会では正GKを争った。つまりは、まだJで出番を得られていない選手が、4年後に向けて急浮上する可能性のあるポジションということである。中村は鋭い反応はもちろん、コーチングやビルドアップに強みを持つオールラウンドなGKで、その資格はあるのではないか。
その才能がどうあれ、”その日”に向けて地道にコツコツと実力を積み上げていくしかないのがGKというポジションだ。
■GK
東口順昭 1986年5月12日(28歳)
西川周作 1986年6月18日(28歳)
権田修一 1989年3月3日(25歳)
■俺のイチ推し
中村航輔 1995年2月27日(19歳)
▼DFは激戦の予感
DFはアジア大会に出場するU-21代表から、最大2,3人がこちらに上がってくるのではないだろうか? CBはザックジャパンの強みと言い難いポジションだったが、下の年代には遠藤航、植田直通、岩波拓也といった人材が揃っている。若手で可能性の有りそうなCBとして成長著しい昌子源と、オールラウンダー佐々木翔(甲府)を選出してみた。昌子源は米子北高時代から身体の強さ、キック力と”ハードウェア”は明らかだったが、鹿島という競争の厳しいクラブで”ソフトウェア”のバージョンアップを急速に進めている。佐々木は右利きだが、左のキックがパーフェクト。今の代表にいないタイプの選手である。
SBは現代日本の”お家芸ポジション”だが、3番手以下が意外にいない。内田の穴は容易に埋まらないが、上下動が旺盛で技術もある、吉田豊(清水)を入れてみた。
“左利きのDF不足”は日本サッカーの負の側面だが、個人的には中村太亮(千葉)を押す。J2ながら、今季は急台頭を見せているレフトバックだ。182cmとサイズがあり、キックの種類が豊富。鈴木淳監督は今季途中で退任を強いられたが、米倉恒貴・中村太亮とSBの育成で手腕を見せた指揮官だった。
■DF
長友佑都 1986年9月12日(27歳)
森重真人 1987年5月21日(27歳)
吉田麻也 1988年8月24日(26歳)
佐々木翔 1989年10月2日(24歳)
吉田豊 1990年2月17日(24歳)
酒井宏樹 1990年4月12日(24歳)
酒井高徳 1991年3月14日(23歳)
昌子源 1992年12月11日(21歳)
■俺のイチ推し
中村太亮 1989年7月19日(25歳)
▼MFの軸はやはり本田&香川
MFは引き続き本田圭佑、香川真司が軸になるだろう。米本拓司はフィッカデンティ監督がFC東京の監督に就任して、水を得た魚のように生かされている。彼の球際の強さとしつこさを、代表でもぜひ見てみたい。柴崎岳は怜悧な判断と配球が強みの選手。遠藤保仁の後継者となり得る才覚の持ち主だ。2人とも間違いなく今季のJでアギーレ・ジャパン入りに値するプレーを見せている。
■MF
青山敏弘 1986年2月22日(28歳)→扇原貴宏 1991年10月5日(22歳)※
細貝萌 1986年6月10日(28歳)
本田圭佑 1986年6月13日(28歳)
香川真司 1989年3月17日(25歳)
清武弘嗣 1989年11月12日(24歳)
米本拓司 1990年12月3日(23歳)
柴崎岳 1992年5月28日(22歳)
(※青山が直近の試合を負傷で欠場している状況を反映し、記事を修正しました)
■俺のイチ押し
大島僚太 1993年1月23日(21歳)
▼最前線は岡崎除いて横一線
FWは良くも悪くも激戦だ。岡崎慎司を除けば、横一線だろう。田中順也のスピード、左足という”武器”は他の日本人選手にないもの。 [4-3-3]の布陣なら、彼がどこに入るかで、アギーレ監督の攻撃における狙いも見えてくる。宇佐美貴史は後半戦に入って”シュートが上手い”というスペシャリティに磨きがかかっている。7試合5得点と絶好調で、今まさに旬だろう。
武藤嘉紀の名前が挙がっていることは、承知している。ウイングプレイヤーとして面白いだろうし、代表入りの資格は当然あると思う。ただFC東京の選手の名が”挙がりすぎて”いるので、本当かな?と。
イチ推しプレイヤーは、エスクデロ・セルヒオ(FCソウル)である。彼の重心が低い突破、強烈なシュートは大きな魅力だし、スペイン語圏で育ち、言葉や文化の部分でアギーレ監督と”ギャップ”がないことも大きな魅力ではないか。チームには羽生直行氏という極めて能力の高い通訳も帯同しているが、監督と選手の”触媒”として面白いのではないだろうか?
■FW
岡崎慎司 1986年4月16日(28歳)
田中順也 1987年7月15日(27歳)
柿谷曜一朗 1990年1月3日(24歳)
大迫勇也 1990年5月18日(24歳)
宇佐美貴史 1992年5月6日(22歳)
■俺のイチ押し
エスクデロ・セルヒオ 1988年9月1日(25歳)
初戦は監督の”色”が一番出やすい試合だ。戦術的にいえば、どんな監督も自分が一番得意なことから仕事を始めるからだ。選出メンバーについても、来日して十分な視察が出来ていないとはいえ、何かしらの「意外性」は出るだろう。すべてが新監督の色に染まっていない今だからこそ、”小さなにじみ”から見えてくるアギーレカラーを、注意深く見ておきたい。
大島和人
出生は1976年。出身地は神奈川、三重、和歌山、埼玉と諸説あり。ヴァンフォーレ甲府、FC町田ゼルビアを取材しつつ、最大の好物は育成年代。未知の才能を求めてサッカーはもちろん野球、ラグビー、バスケにも毒牙を伸ばしている。著書は未だにないが、そのうち出すはず。
(※青山敏弘選手が直近の試合を負傷で欠場している状況を反映しました)