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石崎監督を招へいし、森島、高地を獲得した目的とは?(柳田代表インタビュー/前編)【テゲバジャーロ宮崎の野望】

地元の底上げも含めて、イシさんの下に付くことにすごく価値があると思っています。

“J空白県”の宮崎県では現在、テゲバジャーロ宮崎とJ.FC MIYAZAKIという九州リーグを戦う2チームが将来のJリーグ参入を目指してしのぎを削っている。そのうちテゲバジャーロは今季、J最多クラスの指導歴を持つ石崎信弘氏を新監督に迎えた。また、元日本代表FW森島康仁、サガン鳥栖などで活躍したMF高地系治を獲得。Jを目指す本気度を見せるなど、全国的な注目を集めている。今回は『テゲバジャーロ宮崎の野望』と題した緊急企画を掲載。まずは代表の柳田和洋氏に、クラブの現在と将来について話を聞いた。(インタビュー・写真:高浜確也)

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▼前身は少年サッカー団のOBチーム

–まずは柳田代表の経歴から確認させてください。柳田代表は宮崎県の門川町出身で名古屋の大学に行き、Jリーガーを目指しましたが、それは叶わず故郷に帰郷。プロフェソール宮崎を経て、テゲバジャーロ宮崎の前身、門川クラブに加入しています。ちなみにいつ頃のお話ですか?

柳田 1999年のことです。もともと門川クラブはサッカー少年団のOBチームで、当時は僕が小学生の時の指導者が代表をされていました。9部リーグ相当の日向地区リーグでやっている草サッカーのチームだったのですが、選手も高齢化して人がいなくなるから立て直してくれと言われたんです。

–その当時からJリーグを目指そうという目標をお持ちだったのでしょうか?

柳田 その時はまだ、仲間と楽しみながらサッカーをやるというスタンスでした。地元のクラブなので、競技成績よりも門川や日向など地元で愛されるチームを作りたいということを考えていました。

–最終的にJを目指すとしても、まずは地元に愛されるチームが基本ですよね。

柳田 段階を踏んでいくことが大事ですから。2010年に九州リーグに昇格した時から下部組織のチームの整備も始めました。もともと自分自身が(過去に宮崎からJを目指していた)プロフェソール宮崎にいたので、その時に何がダメで成功しなかったのか。そういったことを選手として経験していたので、行けるところは行くというタイミングを見計らいながら、ここまでクラブを継続させてきました。

–そして今季は石崎信弘監督を招へいしました。期待していることは何でしょうか?

柳田 Jリーグでの手腕と実績は間違いない方ですし、若手の育成にもすごく定評のある方なので招へいしました。Jリーグチームのない宮崎にあれだけのキャリアを誇る監督さんが来るということは過去にはありませんでしたから、宮崎にそういう手腕を発揮できる監督が来たために、例えば夏休みなどに各高校から1・2名の選手を受け入れて、テゲバジャーロのトレーニングを積んだ子どもたちが自分たちの高校に還元できるようなこともやりたいなと思い描いています。イシさんにもそういうお話をしていますし、選手の受け入れは常にやりたいと思っています。

–すでに始められているのですか?

柳田 宮崎の指導者の方がトレーニングを見に来ています。最初は遠慮がちに遠巻きに見ているのですが、だんだん近付いて見学しています。いま、トレーナーをしている九保大(九州保健福祉大学)の子も、時間がある時に勉強したいと来ていますし、今年からヘッドコーチに就任した倉石も門川出身です。地元の底上げも含めて、イシさんの下に付くことにすごく価値があると思っています。

–クラブ自体だけではなく、宮崎県全体を一緒に盛り上げたいと。

柳田 イシさんを招へいできたことは、クラブはもちろんのこと、宮崎の財産にもなると思っていますので、共有したい、共有してもらいたいという思いはあります。

▼森島、高地両選手を獲得した理由

–監督だけではなく、森島選手や高地選手といったJリーグ経験者が加入したことも大きな話題となっています。Jリーグの選手だったから、ほかの選手の中には溶け込まないという様子はまったくないと監督もおっしゃっています。

柳田 彼らは自分たちの経験をしっかりと経験のない選手や若手に伝えようとしている意思を感じています。地域リーグだからダメとか、下手だからダメではなく、自分が持っている技術や経験をプレーの面だけではなく落とし込んでもらっていますし、彼らもそういう役割を担っているという自覚はあると思います。

–そこまで考えて獲得したのでしょうか?

柳田 実際には来てみないと分からない部分も少しあったのですが(笑)、高地選手に関しては最初にそういうことができる選手か、リサーチをしていました。森島選手の場合は、地域のこういうリーグからでもしっかりやるという話をした上でこのチームに来てもらっています。自分自身の”再生”も含めて、「このチームで這い上がって行くぞ!」という強い決意を感じています。

–クラブとして、まずはJFLに参入できれば全国転戦になりますし、注目度も変わります。

柳田 今の環境は、イシさんにすればないものばかりだと思いますが、不満を言われることなく、この環境でどうするかを考えてくれていて、すごくありがたいです。その上で私がどれだけストレスを取り除けるか、それが自分の仕事だと思っています。私の中ではイシさんの経歴に傷を付けられないなという思いもあります。

これだけの戦力を持ったことで注目されていますが、こちらはまったく追われる側だとは思っていないのですが……。先日の天皇杯県予選の決勝や、(逆転で勝った)開幕戦を戦ってみて、「勝負は足し算にはならない」との思いを強くしました。

選手もフロントも心を一つにして、試合のメンバーに選ばれなくても、練習をしっかりやるなど、チームの雰囲気はすごく良いです。常に不安はありますが、その中でも結果を出すことに価値を見い出せるのかなと思っていますので、楽しみのほうが大きいですね。

(後編「宮崎発。クラブの壮大なる野望とは?」)