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得点ランク2位。J2ルーキー・清原翔平を突き動かす原動力

現在リーグ得点ランキング2位で、チームの攻撃をけん引しているエース清原翔平の秘話に、金沢を追い続ける男・野中拓也が迫った。

第14節を終えて、8勝4分2敗勝ち点28で現在3位。今季から初のJ2リーグに参戦しているツエーゲン金沢の旋風が止まらない。一時は首位に立ち、現在は自動昇格圏・2位のジェフユナイテッド千葉と勝ち点で並び、首位・ジュビロ磐田との勝ち点差はわずかに『1』だ。なぜここまで金沢は強いのか。J2に一大旋風を巻き起こしている金沢の強さの深層を多角的に分析していく。果たして、その実力の源は? 第3回は現在リーグ得点ランキング2位で、チームの攻撃をけん引しているエース清原翔平の秘話に、金沢を追い続ける男・野中拓也が迫った。

▼雑草軍団の先頭に立つ男
 Jリーグの4月の月間MVPに選手されたMF清原翔平。他にノミネートされていたのは、三浦知良(横浜FC)、フォルラン(C大阪)。誰もが知るスター選手を押さえての受賞は、チームと清原の存在がある程度知れ渡ったいま、もはやサプライズなどではなかった。清原は「チームの調子が評価されている」と話すが、得点ランキングで2位につけていることもあり、金沢といえばまず名前が挙がる。

 金沢にはJFLや地域リーグでのプレー経験のある選手が多い。その中でも2013年1月に活動を休止したSAGAWA SHIGA FCでプレーしていたという点からも、清原が注目されているのだろう。JFLのクラブへの在籍経験自体、金沢の選手では珍しいことではない。何しろ、金沢も2年前まではJFLに所属していたのだから当然だ。

 主力選手に限っても、JFLでのプレー経験を持つ選手は何人も挙げられる。DF太田康介(横河武蔵野FC、町田)、MF山藤健太(アルテ高崎、ソニー仙台)、FW水永翔馬(ホンダロック、長崎)、GK原田欽庸(栃木ウーヴァ、長崎)。そしてMF清原翔平……。金沢所属の選手でいわゆるエリートコースを歩んでいると言えるような選手は、Jクラブのユースからトップチームに昇格した、期限付き移籍で山形から加入したMF秋葉勝くらいだ。

 雑草集団とも例えられるチームのキャプテンを務める清原は、主に右サイドでプレーして攻撃をけん引する。当然組織の一員としてハードワークを欠かさないが、真骨頂は果敢なドリブルでの仕掛けだろう。

▼仕掛ける勇気と素直な心
 第7節・C大阪戦でPKを得たシーンは圧巻だった。SBとの1対1の場面で仕掛けを選択し、見事に抜き去った。これに相手はたまらずファウル。「PKが多い」と言われることもあるが、それはチームとして危険なエリアに侵入できていることの裏返し。試合終盤に決勝点となるPKを決めた第8節・讃岐戦(1○0)後、清原は「今年は自信を持って蹴れている」と話していた。

 ただ、決め切るメンタルが揺らいだ試合がある。今季初めてPKを失敗した第12節・徳島戦(0△0)だ。「蹴るときに自分の中で『微妙だな』とモヤモヤしていた」というPKは、相手のGKに完全に読まれて止められた。「チームのこと、来てくれたサポーターのことを考えると、ちゃんと蹴らないといけないと思いつつも……」とあの場面を悔やんだ。

 追い付きドローに終わった第13節・岡山戦後に話を聞くと、「この前の試合でPKを外してしまった。そこでチーム的には流れが止まってしまうかも」と懸念していたようだ。この一件に象徴されるように、清原はしばしば「チーム」のことを口にする。キャプテンならそれは当然と思われるかもしれない。しかし、決して口だけではない。清原はツエーゲン金沢というクラブ自体に対して、並々ならぬ思いを持っている。

▼過去があっての”いま”
 清原はSAGAWA SHIGA時代を「チームワークも良かった」と振り返る。仕事をしながらサッカーをするイメージがあるが「JFLの中では結構優遇されていて、サッカーに集中してやらせてもらっていた」。だからこそ「会社に感謝しながら、昇格はできないけど優勝だけを目指していた」。

 そして訪れたチームの活動休止――。当時負傷を抱えおり、道が閉ざされそうだった清原に声をかけたのが金沢だった。「サッカーがやりたくてもできなくなった選手を多く見ている。いまサッカーができていることが本当に幸せ」と清原は話す。

 金沢に移籍後は「J2に上がりたい、上がりたい」一心だった。実際にJ3で優勝しJ2昇格の目標を達成した。「これまで踏んできたステップがなければいまはない」と自身の過去を回想する。残留を目標に掲げた今シーズン。「チャレンジャーとして次の試合を楽しみに戦いたい」という言葉は本音だろう。

 試合を重ねるごとに相手のマークもキツくなり、これまでほど自由にさせてはもらえない。「精度、連係、仕掛け、一つひとつの細かいことによりこだわらないといけない」と成長を誓う。

▼サッカー文化を根付かせるために
 SAGAWA SHIGA FCから金沢へ移籍した経緯もあり、清原は金沢に大きな感謝の気持ちを持つ。だからこそ、プロスポーツ不毛の地・石川県に「ツエーゲン金沢」を定着させたいと強く思っている。

 ホーム開幕戦を目前に控え「どれだけの人が入ってくれるか不安でもあり、期待しているところもある」と話していた。「サッカーを観に行くことがひとつの文化になってほしい」というのは切なる願いだ。そのためもまずJ2に残留することが重要だと強調した。

 チームの主将、象徴として背負うものは多いが、それは重荷なのだろうか。いや、きっとそれは大きな夢なのだ。どんなときも感謝の心と楽しむ気持ちを忘れずに、金沢の背番号7はサッカーができる喜びをかみ締め、今日もピッチに立つ。

【プロフィール】
清原翔平

1987年6月25日生まれ、27歳。北海道出身。168cm/62kg。帯広若葉SS→帯広八中→帯広北高→札幌大→SAGAWA SHIGA FCを経て、2013年からツエーゲン金沢に加入。J2通算14試合出場8得点。J3通算32試合出場9得点(2015年5月22日現在)。

野中拓也

フリーランスのサッカーライター。サッカー専門新聞エル・ゴラッソでツエーゲン金沢を担当。