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【日本vsUAE超速レビュー】切り替えるしかない敗戦を受け、新しい井戸を掘るときが来た。希望は、足元にある

果たしてこの敗戦から読み取るべきこととは何か。まずは試合そのものを振り返ってみたい。

2015年1月23日、日本代表のアジアカップは終幕を迎えた。早々に先制点を奪われ、一方的に攻め込んで同点としたものの、勝ち越しはならず。1-1からのPK戦の末、アギーレ・ジャパンの挑戦は早すぎるエンディングとなってしまった。果たしてこの敗戦から読み取るべきこととは何か。まずは試合そのものを振り返ってみたい。

▼表出した個のミス
 これぞアジアカップ――。

 日本代表が苦難と逆境を、とことん味わい尽くすのがこの大会だ。しかしアギーレ・ジャパンは試練を乗り越えられなかった。そこが2004年、11年との違いだった。

 キックオフから7分間の攻防が、結果的には試合を左右した。UAEはこの短い時間に3つの決定機をつかんだ。日本DFに大きな脅威を与えたのが俊足アタッカー、マフブード。彼は3分に左サイド、6分に中央とスペースを破って決定機を演出すると、7分にはエリア右に抜け出して右足を一振り。対角ネットを揺らす、鮮やかな先制弾だった。

 この場面を見て気になったのが、やはりCBである吉田麻也の対応だ。彼は並走された相手にあっさり振り切られる場面が多く、1対1になったときの安心感がない。酒井高徳のボールロスト、カバーリングの遅さもピンチを招く要因になっていた。また日本は中盤も、奪われた後の切り替えに鋭さがなかった。

 組織が機能していれば”個”のミスは表出しなかっただろう。誰かを入れ替えれば解決するというほど問題は単純でない。しかし最終ラインの不安感は、ザッケローニ監督時代から続く難題だ。昌子源、植田直通といった若手CBを引き上げる時期が、そろそろ来たのではないだろうか? アジア大会のような短期決戦ならともかく、W杯予選は長く、当然ながらケガやコンディションによる主力の離脱も起こるだろう。となれば、なおさら新しい井戸を掘るべきだ。

 試合運びについても明白な課題があった。中2日の疲れは当然あっただろう。ただ逆に言えば疲れがあるからこそ、相手の出方が分からぬ立ち上がりは慎重に試合を運ぶべきだった。”3つの決定機”は、いずれも単純にDFの枚数が足りていなかった。攻撃で不要なリスクを負わず、中盤でフィルターをかける、一人がミスをしてもカバーするという組織ができていれば、3つの決定機は未然に防げた。慎重さが足りなかった。

 勝負に”たられば”はないが、あの失点さえなければ日本は勝っていただろう。「もったいない」としか言いようのない失点だった。

 一方、UAE目線で見れば、守備の狙いが実にハマっていた。前の4人が縦のパスコースを切り、遠藤保仁、香川真司の”受け”を遮断。日本を減速させつつ外に押し出し、外に入ればサイドMFが一旦引いて前に踏み込む。ボールを外で奪って外で作り、機を見て縦へ一気に出る――。彼らにはそういう攻守の狙いがあったのだろう。この試合に限れば外は安全地帯でなく、UAEが罠を張る危険地帯になっていた。そして日本はそこに誘い込まれていた。

▼これがフットボール
 その後の110分間は、ある意味で必然に近い展開だったと思う。チェイシング、帰陣で”足”を使っていたUAEは、後半20分過ぎから完全に専守防衛モードになった。日本はボール持ち放題、クロス上げ放題という状態になる。ただエリア内に5人、6人と”邪魔”がいる状態で、シュートを決めることは想像以上に難しい。もどかしい場面が続くとリズムが狂い、今度はフリーの場面でも力みが出て、決められなくなる。それがフットボールだ。

 後半の日本は魅入られたようにシュートミスが続く”サッカーあるある”に出てきそうな状況だった。90分間のボール保持率7割近く。シュートも30本超というワンサイドゲームながら、日本は1得点にとどまった。

 UAEはグッドチームだった。各年代の世界大会では既に常連で、2012年のロンドン五輪も3つしかないアジアの代表枠をつかんでいる。とはいえ、試合の内容はどう見ても日本が上だった。あのPK戦を制していれば、04年の準々決勝・ヨルダン戦や、11年の準決勝・韓国戦と同じく、正当化できる120分になっただろう。”これでいい”という気持ちを味わえただろう。

▼希望は足元にある
 この1試合でアギーレ・ジャパンを全否定するのはナンセンスだし、徐々に見えてきたチームの輪郭もある。しかし結果は何より雄弁だ。この敗戦はサポーターや選手の心に傷となって残る。何かを変えなければ気持ちが晴れない。そして”切り替えてもっと上を目指す”ことが、再起のエネルギーになる。一番オーソドックスな方法が、若手の抜擢だろう。

 日本サッカーの育成が間違っているとは、断じて思わない。ヨーロッパの有力リーグでプレーする選手が代表に顔をそろえる現状は、むしろポジティブだ。日本の育成年代が世界大会に出られていないことを悲観する人もいるが、本田圭佑や岡崎慎司の世代は13年前にU-16のアジア予選で惨敗している。香川真司や酒井高徳も、U-19代表で世界を逃した。しかし彼らはその後の活躍により、目先の結果からその将来を否定してはいけないことを証明した。

 その次の世代を見ても、見事な同点弾を決めた柴崎岳のような人材が控えている。G大阪を三冠に導いた宇佐美貴史もいる。アギーレ監督もこの半年で、Jリーグの選手を知る時間があっただろう。希望は、Jリーグという足元にあるはずだ。

大島和人

出生は1976年。出身地は神奈川、三重、和歌山、埼玉と諸説あり。ヴァンフォーレ甲府、FC町田ゼルビアを取材しつつ、最大の好物は育成年代。未知の才能を求めてサッカーはもちろん野球、ラグビー、バスケにも毒牙を伸ばしている。著書は未だにないが、そのうち出すはず。