J論 by タグマ!

「FC東京を追いかけて15年。自分の媒体を持つことの価値とは?」後藤勝/後編【オレたちのライター道】

フリーランスで自分の媒体を持っていると、あらゆるところに主体的に顔を出すことができます。それはすごく幸せなことです。

“ライターの数だけ、それぞれの人生がある”。ライターが魂を込めて執筆する原稿にはそれぞれの個性・生き様が反映されるとも言われている。J論では各ライター陣の半生を振り返りつつ、日頃どんな思いで取材対象者に接して、それを記事に反映しているのか。本人への直撃インタビューを試み、のちに続く後輩たちへのメッセージも聞く前後編のシリーズ企画がスタートした。第7回は『トーキョーワッショイ!プレミアム』の後藤勝氏に話を聞いた。
(前編「ライターと編集者。”二足の草鞋”を履くことになった動機とは?」)

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▼考える材料の提供

ーーそれでは、Webマガジン『トーキョーワッショイ!プレミアム』の話に移りましょう。スタートはどの時期ですか?

後藤 2011年から『トーキョーワッショイ!MM』というメールマガジンを始め、2012年10月からタグマ! に於ける『トーキョーワッショイ!プレミアム』に移行しました。11年にメルマガを始めた理由は、FC東京がJ2に降格したら掲載してくれる媒体も減るだろうから、情報を露出する経路を一つ持っておこうじゃないかというものだったのですが、それを継続強化するべくWebマガジン化したという経緯です。

ーー更新頻度はどのぐらいですか?

後藤 1日1回を心がけていますが、間隔が開いてしまうこともあるので、休んだぶんも別の1日にまとめて2回という日もあると思います。平均すると、1日1回以上の更新頻度になるように努力はしています。

ーー記事を書く上で大事にしていることは?

後藤 記事の完成度を求めるよりは、フットワークを生かしてできるだけ速やかに情報をお届けしたいと思っています。まずは練習場で何があり、どんな雰囲気だったのか。読者のみなさんが考えるための材料を提供したいという考えが第一ですね。

例えば、Twitterなどでアンチの方が記事に対して否定的なコメントをしたとすると、それは目的を果たしたことの証左になっていると思います。読まないと書けないわけですからね。僕がお届けした情報が読者の方に一度咀嚼してもらえていて、考える材料になったのだから、それでいいわけです。

ーーコンテンツとしてはどんなラインナップがあるのでしょうか?

後藤 FC東京の場合はキックオフ30分前に監督の囲み取材があります。そのコメントをはじめとして試合関連の情報が基本ですね。試合後に関しては、マッチレビューになるのか、選手にフォーカスした人モノになるのか、試合の状況によって変わります。もちろん、小平の動向もできる限り追うようにしています。むしろそっちのほうが試合よりも特長になっているかもしれませんね。

ーー昨年からはFC東京U-23がJ3リーグを戦っています。U-23のコンテンツはどうされていますか?

後藤 昨季はJ3参戦初年度ということもあって、アウェイゲームも9割方、取材しましたが、今季に関してはホームゲームと近場のアウェイゲームに限って取材しています。ただ可能な範囲でプレビューを書くようにしています。特にホームゲームの前はそうですね。まだJ3を見るという習慣が定着していませんし、U-23のゲームへ少しでもお客さんを誘引できるようにと考えています。その意味で無料記事にすることが多いですね。

もともとFC東京のファン・サポーターはユースウォッチャーの方が多く、その延長線上でU-23を見ているケースも多いようです。実際、顔見知りも多いのですが、トップチームの試合を見に行く方たちまでU-23が浸透しているとまでは言えないので、今後も積極的に扱っていこうと思います。

▼コンテンツの質を高める必要性

ーー今後の展開については、何かプランはありますか?

後藤 最近は目の前の試合や最新の情報の発信に偏りがちになっていますので、シーズン中から掘り下げた取材物や論考を入れていきたいなと思っています。情報を早く届けることも大事ですが、質を高める必要性があると反省してもいますので。タグマ!の他媒体で試みられている新しいアイデアも逐一『トーキョーワッショイ!プレミアム』に採り入れていきたいですね。

ーー『トーキョーワッショイ!プレミアム』をやっていて良かったなと思うことは?

後藤 クラブ関係者や選手だけに限らず、単純に人との接点が増えました。フリーランスで自分の媒体を持っていると、あらゆるところに主体的に顔を出すことができます。それはすごく幸せなことです。

ーーこれからライターを目指す後輩たちへ、メッセージをお願いします。

後藤 現状、この業界に参入しようと思うと、下のカテゴリーから上がってきた新しいクラブに入り込まない限り難しいです。入り口が次第に狭くなっています。それでも、どうしてもやりたいという方は知恵を絞って考えてくださいと伝えたいです。

厳しい言い方になるかもしれませんが、そのアプローチ方法を100通り考えられるようでなければライターはできません。極端な話、直木賞作家になってからその知名度を生かしてサッカーライターになるというぐらいの覚悟がないとやれないと思います。現状はJクラブの数が存在できるライターの上限という状況。パイは決まっているので、そこに入り込むか、異なるフィールドを開拓するやり方を考えてほしいですね。

【EXTRA TALK】
良き相棒の取材アイテム

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このカメラは忘れもしない、元FC東京所属で現在はベガルタ仙台でプレーしている三田啓貴選手が、明治大学4年生の時の、インカレ試合中に、それまで使っていたカメラが壊れてしまい、その帰りの足で新宿の中古カメラ屋さんに行き、購入したもの。定価は20万円で、11万円ぐらいまで値下がりしているカメラがないかなと探していたところこれを見つけました。今では良い相棒です。

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この印傳屋の名刺入れは、海野一幸さん(現・甲府会長)がヴァンフォーレ甲府の社長の時にインタビューをさせていただき、帰り際に頂戴したものです。名刺入れで『VFKロゴ』が入っているものは買えませんし、一生大事に使っていこうと思っています。

もうひとつ、無印良品のA5ノートはもうタグマ!メンバーの定番ですね。自分もよく使います。ファミマで買えるので、なくなるとすぐに補充できることも魅力の一つです。

https://twitter.com/book_j2
なお「J2本」新刊でも取材を受けました。冬コミをチェックしてみてください!

【プロフィール】
後藤 勝(ごとう・まさる)
サッカーを中心に取材執筆を継続するフリーライター。FC東京を対象とするWebマガジン『トーキョーワッショイ!プレミアム』を随時更新。著書に小説『エンダーズ・デッドリードライヴ 東京蹴球旅団2029』(カンゼン刊)がある。