予想外=期待ハズレ?「日本代表」というより「アギーレJAPAN」だったサプライズ選考
そもそも代表選考に「サプライズ」は求められるのか?まったくの予想外だった選考から、「日本代表はどうあるべきか」を問い直す。
<写真>ファルカン元日本代表監督
▼「予想」は「期待」
全国のサッカーファンのみなさま、先頃開催されました第1回アギーレJAPANメンバー当てクイズはいかがでしたでしょうか。全問正解者、おそらくゼロですよね。「俺は全問正解だよー」と堂々と嘘をつける方がいましたら、ぜひ一度お目にかかりたいものです。これぐらい気持ちよく外れると、ちょっと笑ってしまいますね。
その中でも特に笑いのツボに突き刺さったのが、コンビニで見かけた『週刊サッカーダイジェスト』。「指揮官の哲学と戦術的傾向から導くアギーレJAPANのリアル布陣」とドーンと表紙に赤文字で書きつつ、デカデカと宇佐美貴史さんの写真を掲載するという豪快フルスイングぶり。見るたびに「全然傾向が見えてない」「何ひとつ導けてない」「リアル布陣(笑)」とニヤニヤしてしまいます。アギーレ監督の写真を使えば何も問題ないところを、あえて宇佐美さんで果敢に攻めていった週刊サッカーダイジェストの姿勢。僕は好きです。面白いので。
さて、何も僕は雑誌の予想が外れたことをネチクチいじろうというものではありません。むしろ共感しているくらいです。雑誌も商売。表紙ひとつとっても、どうしたら一番売れるか考えて作るもの。表紙への宇佐美さんの起用も、そのほうが売れると踏んだからでしょう。「宇佐美さーん、残念!」と嫌味を言うためだけに、大事な表紙を作るはずがありませんから。
「これから新しい日本代表が動き出す」というとき、どんな雑誌を作ると売れるのでしょうか。僕はごく普通の感覚として「未来への期待」を語る雑誌が読みたいです。そういう雑誌のほうが売れるんじゃないかと思います。ですので、週刊サッカーダイジェスト誌もそういう気持ちで表紙の写真を選んだと想像するのです。「宇佐美JAPAN」への期待感で雑誌が売れると思ったんだろうなぁ……と。
「予想」って「期待」なんじゃないでしょうか。
識者・ファンの予想というのは、普段の試合を見る中での「この選手はすごいな」という感動から生まれるものでしょう。「代表に入るんじゃないか」という予想は、「この選手が代表でプレーするところを見たい」という期待とほとんど同じ意味でしょう。プレーに魅了され、積み上げた素晴らしい思い出が「期待」となり「予想」となる。そういうものだと思うのです。
しかるに、発表されたアギーレJAPANは「予想」とは大きく異なるものでした。
入るのではないかと思った何人かが漏れ、想像もしなかったところから何人かが飛び込んできました。「予想」は大ハズレでした。それは言い換えれば、日本の多くの人の「期待」を裏切るチームだったということではないでしょうか。やる前から早くも「期待」を裏切っているのです。
▼サプライズなんて……
「日本代表」というのは、やはりみんなの代表だと思うのです。みんなが納得し、支え、信じ、我が誇りとして送り出せる存在。もちろん監督の方針もあるでしょうし、人数に限りもあるわけですから、すべてが満たされないのはわかります。「俺達の●●を選べ!」という声が完全になくなるはずはありません。
それでも、先日のW杯代表メンバーなどは、一応の納得感はあったでしょう。彼らが高校・ユース時代、Jリーグ、海外リーグ、日本代表戦などで積み上げてきた幾多の実績、即ち「思い出」が納得感を生んだはずです。「この選手を選ぶのも理解できる」「こういう編成になるのも理解できる」「彼らを信じてみよう」程度には。最終メンバーも大方の予想通りでしたしね。だから、結果も甘んじて受け止めることができた。
しかし、今回のメンバー選考は、今のところ納得感はありません。「コレコレ!日本代表ってこういうチームだよ!」という期待通りの編成になっていないからこその「サプライズ」なわけですからね。もしかしたらアギーレ監督は、日本人の期待に沿ったチームを作ろうなどとは、まったく考えていないのかもしれません。「俺達の●●」をチームに組み込むとか、「日本のベストメンバーを考える」とか、「日本らしいサッカー」とかではなく、自身の方針に選手をあてはめたアギーレのチームを作っているのではないでしょうか。
「日本代表」と言うよりは、文字通り「アギーレJAPAN」を。
僕は、日本代表に「まったく予想外のサプライズ」なんて必要ないと思います。むしろサプライズのないチームであるべきだろうと。「こういう選手が見たい」「こういうチームが見たい」「こういうサッカーで勝ちたい」という人々の期待を背負い、みんなを代表して戦うチームが「日本代表」でしょう。その期待を取りまとめて取捨選択・決断するのが代表監督の仕事であり、「どんなチーム、どんなやり方でも勝てばいい」なんて話ではないのです。
どうせ、最後の最後、勝って終われるのは世界でただ1チームだけ。アギーレJAPANも9割9分は負けて終わるチームです。負けたとき、どう気持ちよく終われるか。納得して散れるか。思い出に裏打ちされた期待通りの「日本代表」ならば、たとえ敗れても思い出を抱き締めながら一緒に泣けます。逆に、サプライズに満ちたチームは、勝利でしか納得感を生むことはできません。
できるなら僕は「アギーレJAPAN」が勝ったり負けたりするところではなく、「日本代表」が勝ったり負けたりするところを見たい。ファルカンJAPANのように「日本とは無関係のチームです」「そんなものありましたっけ?」「アレは『ファルカンさんのかんがえたさいきょうのちーむ』です」という、「無かったこと」にはしたくないのです。
納得できる負けなら、それもまた素晴らしい思い出にできるのですから……。
フモフモ編集長
サッカー、野球、大相撲、バレーボールや格闘技・モータースポーツに至るまで、日本のスポーツ界を広く浅く生温かく見守るぬいぐるみ。試合本編については大した洞察ができないが、「まぎれ込んできた犬」「おかしなことを言い出す解説者」「ポロリこぼれたおっぱい」などについては舌鋒鋭く追及する。 2005年3月にライブドアブログにて「スポーツ見るもの語る者~フモフモコラム」を開設し、日々駄文を撒き散らしている。
スポーツ見るもの語る者~フモフモコラム http://blog.livedoor.jp/vitaminw/