J論 by タグマ!

えとみほと村上アシシがサッカー界の炎上ネタで大激論!

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経営コンサルタントとサッカーライター、ふたつの顔を併せ持つ村上アシシ氏が著名人と対談する連載企画「村上アシシのJにアシスト!」。今回はスタートアップ経営者からJクラブ(栃木SC)のフロントへ転身したえとみほこと、江藤美帆氏をお招きした。

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アシシ:今回は面識ない人間からのオファーに快諾いただき、ありがとうございます。

えとみほ:はじめまして、ですよね。ツイッターでよくアシシさんの「炎上」は遠目から眺めてましたよ。

アシシ:僕はここ1~2年、炎上しなくなってきたんですよ。炎上芸人と名乗るのもやめました。最近のサッカー界隈の炎上といえば、えとみほさんの方が有名じゃないですか(笑)。

えとみほ:じゃ、今日はサッカー界でよく炎上する人の新旧対談ですかね。

▼物議を醸した水戸エンブレム騒動

アシシ:えとみほさんの炎上と言えば、今春に物議を醸した「水戸エンブレム問題」かなと(編集部注:詳細を知らない方はこちら)。最終的にはあの騒動のあと、謝罪ツイートしたんですよね?

えとみほ:しましたね、すいませんでしたと。あれは栃木SCに入社する直前で、スナップマートの社長を辞めて、一般人という立場だったんですけどね。

アシシ:海外旅行に行って、FCバルセロナのスタジアムとかを見学してきたんですよね?

えとみほ:そうですね。ちょっと気が緩んで普通のサポーター感覚でツイートしちゃった感じですね。

アシシ:何かを評価する際に、他の比較対象をベンチマークとして取り上げるのは、コミュニケーションとしてはよくある手法ですよね。そもそも「ダサい」とは言ってないんですよね。

えとみほ:そうなんですよ!「ダサい」とは言ってないんです。今でもダサいとは思ってないですし。でも、そう言ったみたいになっちゃうのは本当に勘弁してほしいなって。いまだに言われますから。

アシシ:批判ツイートは当事者の水戸サポからが多かったんですか?

えとみほ:水戸の人も少しいましたが、関係ない人の方が圧倒的に多かったです。

アシシ:炎上あるあるですね。お前関係ねーだろって人が、変な正義感かざして火炎瓶投げてくるパターン。えとみほさん的には何も、例示するのは水戸じゃなくても良かったわけですよね。

えとみほ:そう、水戸じゃなくても全然よかったんです。水戸を取り上げたのは、エンブレムが象徴的というか印象的じゃないですか。私がその発言をする前に千葉対水戸の試合があって、スタジアムで女の子たちが水戸のエンブレムを見て水戸黄門だねって話をしてたんですよ。

アシシ:たしかに初めて見た人は、そう思う人が多いかもしれません。

えとみほ:私はずっとJリーグを見ていたんで、そんなことを思ったことなくて、あれはホーリーホックのエンブレムだと思ってたんですけど、全然サッカーを知らない人から見たら水戸黄門に見えるんだっていうのがすごく頭に残ったんですよ。じゃあ水戸が新しいグッズを作りましょうとなった時に、そういう先入観を持った女性客や新規客にどう訴求するかってすごく大変そうだ、って思ったのをそのままツイートしちゃった感じです。

アシシ:なるほど。あの発言にはそういう背景があったんですね。海外だとユベントスのロゴが昨年、マーケティングの観点でいろんなグッズにも汎用的に使えるデザインに刷新しましたよね。あれもユベントスのサポーターの中では賛否両論あったらしいですが、クラブの象徴でもあるエンブレムは慎重に取り扱わないと燃えるってのは、世界中どこも一緒なんでしょうね。

▼ビジネス視点とサポーター視点との摩擦

えとみほ:私も何回か炎上して理解したというか学習したんですけど、ビジネスの視点で物事を語ると突き放して見るというか、遠くから俯瞰的に見ますよね。その視点でツイートしちゃうと、ちょっと冷たい感じ、愛情がない感じに取られちゃうんだなと。

アシシ:クラブ愛をベースに語るサポーターの視点と、売上とかビジネスチャンスをベースに語るマーケターの視点は、相容れないというか、摩擦が起きるのは必然かもしれませんね。

えとみほ:私も20年ジェフのサポーターをやっているんで、愛するクラブのことを全肯定したくなる気持ちはわかるんですよ。ただ、それじゃお金儲けはできない。まったくサッカーに興味ない人から見てどうか? という視点は、マーケターとして忘れてはいけないと思っています。

アシシ:最近だとサッカー指導者の河内一馬さんが、選手が女装をするファンサービスはどうなんだというツイートをして、川崎サポーター界隈で批判が巻き起こった事象がありました。



えとみほ:これもブランディングの視点では面白い考え方ですよね。

アシシ:フロンターレのやり方も河内さんの理想とするブランディングもどちらも正しくて、クラブごとに方法論が異なっていいと思うんですが、結局は片方を持ち上げる際にもう片方を駄目出ししてしまうと燃える、という典型例かと。

えとみほ:河内さんは川崎の「か」の字も出してないんですが、なんかそう捉えてしまった人が多かったみたいですね。私のエンブレムの話もそうですけど、海外サッカーとJリーグを比較するようなニュアンスを出すとだいたい燃えます。JリーグにはJリーグの良さがあると思うんですけどね。

▼「育成年代の扱い方」で炎上

アシシ:他に最近、火の粉をかぶった経験あります?

えとみほ:最近で燃えたというかボヤ騒ぎがあったのはユースの話題ですかね。ウチのユースの監督から、ユースの試合には女子高生がよく見に来るという話を聞いたんですよ。トップの試合では女子高生はあんまり見かけないのに。たしかにユースの年代から応援していると青田買いみたいな面白さがありそうだなと感じたので、例えとしてジャニーズにおけるジャニーズジュニアみたいな感じとツイートしたら、アイドルみたいにチヤホヤするなと指摘されたんです。まだ何も成し遂げていない年代は、チヤホヤすると潰れてしまうこともあるから、ユースの選手は持ち上げるべきじゃないと。

アシシ:随分硬派な意見ですね。

えとみほ:実際に育成に携わっている著名な方から言われたんですよ。今の仕事に就いてからは基本的に何を言われても反論しないようにしてるんですけど、その人は匿名アカウントではなくて、名前も素性もちゃんと出している人だったので、私も反論というか自分の意見を返したんです。私はマーケティングの人間で育成や強化の人間じゃないので、そういう意見があるのはわかるけど、マーケティングと強化、それぞれ別の視点で意見を述べて、最終的には経営者が判断すればいいと。でも、そんなことはない、フットボールのマーケティングは育成や強化のことも全部理解しないとできないみたいな高い要求を突き付けられて。

アシシ:それも炎上のよくあるパターンですね。
 
えとみほ:素人がちょっとなんかいうとツッコミが入るっていう。

アシシ:すべてのジャンルはマニアが潰す、っていう格言があるじゃないですか。それってサッカー界にも言えて、新規顧客獲得のためにいかにフックをかけるかというマーケター視点で持論を述べると、古参の人が「お前は何もわかってない」と文句を言ってくる。いや、そもそも既存顧客相手の施策じゃないから、古参の人に理解されるマーケティング施策でないのは明らかなんだけど。

えとみほ:そのジャンルが本当に廃れてしまったら、そこの摩擦は乗り越えられると思うんですよね。J1のクラブは現状、それなりに多くのお客さんが来てくれるじゃないですか。J2やJ3のクラブにとって、新規顧客向けのマーケティングはどこも死活問題だと思います。少なくとも私はそういう危機感を持って仕事しています。例えばウチの場合、栃木SCはバスケットチームの栃木ブレックスに売上規模で抜かれちゃってるんです。全国的にもバスケに抜かれてるところって珍しいと思うんですけど、そういったビハインドの環境もあって、幸いにも栃木のコアなサポーターとはそういった摩擦は今のところなく、うまくやれていると思います。サポーター自身に危機感があると、やはり我々は仕事がしやすいです。

▼サッカー界では炎上は避けられない?

アシシ:世間では「炎上=悪」みたいな雰囲気がまかり通ってますけど、そもそもサッカーって敵と味方に分かれて勝敗を争う競技で、スポーツマンシップとか言いながら選手もピッチ上で揉め事起こしたりするわけじゃないですか。サポーター同士もダービーとかになると問題を起こしたりします。勝ち負けを争う以上、サッカー界隈では炎上の要素って避けられないのかなって個人的に思うんですよね。

えとみほ:そういう面はありますよね。サッカーって独特な常識みたいなものがあるじゃないですか。ダービーだからしょうがないんだみたいな。

アシシ:ダービーになると、許容範囲が突然拡大解釈されたり。

えとみほ:まったくサッカーを知らない人の常識だと「え?」って思うようなことが、ゴール裏では常識としてまかり通る、みたいなことが多々ありますよね。それは避けられないことですけど、やっぱり新規の人が入ってきづらい要因のひとつになっていると思いますね。

アシシ:ゴール裏には独特な文化やローカルルールがあって、彼らにもアイデンティティがある。とはいえそこを聖域化してしまうと、新規顧客が入ってこられない。でも、彼らが応援を主導するからこそ、スタジアムは盛り上がる。難しい問題です。

えとみほ:その線引きもクラブによって違っていいですよね。浦和みたいに、ガチで応援する雰囲気を重視するところ、川崎のように家族連れで来てアットホームな雰囲気を重んじるところ、それぞれのクラブのスタンス次第ですよね。

(後編はこちら

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