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【田村修一の視点】2025年12月13日 J1昇格プレーオフ2025 ジェフユナイテッド千葉vs徳島ヴォルティス

J1昇格プレーオフ2025 千葉1(0-0)0徳島
13:08キックオフ フクダ電子アリーナ 入場者数 17,634人
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徳島を下し、千葉が悲願のJ1昇格を決めた。

 

長かったJ2での戦い——その16年間の思いが詰まった感極まった瞬間にも、選手やスタッフに一種の落ち着きが感じられたのは、J2優勝を逃し3位での昇格だったからではない。それは小林慶行が監督に就任してからの3年間の積み重ねの結果であり、その3年間があっての徳島戦の勝利であったことを、誰もが理解していたからに他ならなかった。

 

選手たちは浮足立つこともプレッシャーを感じることもなく、平常心で試合に臨めたと鈴木大輔は語った。実際、徳島が攻撃の圧力を強めた後半も落ち着きを保ち、逆に一瞬のカウンターからゴール(69分、カルリーニョス・ジュニオ)を奪うと、交代要員も含め選手たちは小林監督のマネジメントを忠実に遂行し、しっかり守り切ってゲームを締めくくった。

 

昨年までのアグレッシブなスタイルで勝ち切りたかった=J1昇格を決めたかったというのが、恐らくは小林の本音なのだろう。それだけ見るものをエキサイティングにさせる何か——ラディカルな面白さが千葉にはあった。

 

だが、それが叶わなかったときに、千葉はさらなる変貌を遂げた。今季の千葉が見せたのは、安定した攻守のバランスであり、何があってもベースへの信頼は決してプレない落着きだった。小林はそれを、「3年間の積み重ね」という言葉で表現した。その積み重ねが、来季はJ1でどこに繋がっていくのか。千葉と小林の新たなチャレンジが始まる。

 

一方、勝てば5年振りのJ1復帰が実現する徳島だったが、課題であったゴール前の効率の欠如は最後まで克服されなかった。来季も増田功作監督が続けるのか、それとも新監督が就任するのか。どちらを選択するかで、チーム構築の出発点は大きく変わってくる。

 

 

 

 

田村修一(たむら・しゅういち)
1958年千葉県千葉市生まれ。早稲田大学院経済学研究科博士課程中退。1995年からフランス・フットボール誌通信員、2007年から同誌バロンドール選考(投票)委員。現在は中国・体育週報アジア最優秀選手賞投票委員も務める。