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【田村修一の視点】2025年4月20日 J2リーグ第10節 ジェフユナイテッド千葉vs大分トリニータ

J2リーグ第10節 千葉1(0-0)0大分
14:03キックオフ フクダ電子アリーナ 入場者数11,603人
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エドゥアルドがミドルレンジから放ったシュートが大分ゴールに突き刺さり、千葉が今季9勝目をあげて首位を堅持した。ただ、試合自体は拮抗していた。主導権は千葉が握りチャンスを作り出しながらも、大分の堅守を崩しきれずに試合終了まで緊張感が続く展開だった。

 

千葉の小林慶行監督は、葛藤のなかで毎試合戦いに臨んでいるという。昨年まで築きあげ、貫き通して来たチームの理念と、結果を得るために現実の力関係を分析して立てる戦略マネジメント。両者のバランスをどうとっていくか。その判断が適切であるがゆえに、ここまで抜きん出た安定感でリーグ首位に立つことができた。

 

だがそれは、小林個人にとってはジレンマでもある。自らの哲学、理念、ジェフでの2年間で築き上げてきたものと、それだけでは得られなかった結果を得るための現実との妥協。それにさほど悩まされることなく、自身を貫き通せた監督は数少ない幸福な人たちである。ヨハン・クライフやアーセン・ベンゲル、イビチャ・オシム、横浜FM時代のアンジェ・ポステコグルー……。小林の葛藤は今後も続く。そしてそれを乗り越えられたときに、彼も千葉も新たな地平を切り開くことができる。

 

一方、大分の片野坂知宏監督も葛藤を抱えている。守備に関しては、選手たちのポテンシャルを最大限に引き出しながら、コレクティブで戦いにも強い組織構築を実現できた。ただ、攻撃には、明らかに限界がある。千葉戦でも可能な限りのほぼすべての手を打ち尽くしながら、高度に熟練し規律に乱れのない千葉の守備を突き崩すことができなかった。課題は明快であるにもかかわらず、それを解決する手段を見いだせない。大分の方が、ジレンマはずっと根深い。

 

 

 

 

田村修一(たむら・しゅういち)
1958年千葉県千葉市生まれ。早稲田大学院経済学研究科博士課程中退。1995年からフランス・フットボール誌通信員、2007年から同誌バロンドール選考(投票)委員。現在は中国・体育週報アジア最優秀選手賞投票委員も務める。