
【田村修一の視点】2025年12月6日 J1リーグ第38節 柏レイソルvsFC町田ゼルビア
J1リーグ第38節 柏1(0-0)0 町田
14:05キックオフ 三協フロンテア柏スタジアム 入場者数 14,092人
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シーズン開幕前のちばぎんカップ(千葉0-3柏)を見たとき、リカルド・ロドリゲス監督は、かつてのネルシーニョ監督がそうだったように、柏というチームにピッタリと嵌るのではないかと思った。実際、リカルドは、選手個々の能力を引き出し、瞬く間に柏をスピーディで強度の高い、Jでも有数な攻撃的なチームへと変貌させた。
勝てば鹿島の結果次第では、優勝の可能性も残す柏だったが、フィジカルの強さを前面に押し出し、個の戦いで柏のパス攻撃を分断する町田の守備に試合は拮抗した。勝負を分けたのはドリブルだった。町田の守備を引き裂き、決勝点(63分、オウンゴール)を演出した中川敦瑛のロングドリブルを、リカルドはこう語った。
「町田の守備を打開するには運び出すドリブルが重要なポイントであることを、今週の準備で選手たちには言っていたし、ハーフタイムにも『もう少し運び出そう。それで町田の守備陣形を崩せる』とアドバイスをした」
そして(中川のように)ボールを運び出せる選手がいるのは貴重であると。たしかに柏のパスサッカーにおいて、それは重要なアクセントになる。
今季の柏は、魅力的なサッカーを展開しながらタイトル(J1リーグとルヴァンカップ)にはあとひとつ届かなかった。リカルドは、今のスタイルを迷うことなく来季も推し進めるという。さらなる進化に期待がかかる。
一方、敗れた町田ではあるが、昨年はJ1初昇格でいきなり3位、2年目の今年は6位ながら天皇杯では初優勝。着実にJの上位チームの地位を確立した。ただ、黒田剛監督も認めるように、J1での優勝を目指すには、攻撃——とくにフィニッシュのクオリティをさらに上げる必要がある。
町田はJにはこれまでなかったサッカーのスタイルを持ち込んだ。それは今日の最先端を行くものではないが、フィジカルと個の強度をベースにした戦い方は、Jのクラブの盲点を突くものではあった。それを今後どこまで推し進められるか。そして強豪として定着するために、プラットフォームをどれだけ確立できるか。来季に注目したい。
田村修一(たむら・しゅういち)
1958年千葉県千葉市生まれ。早稲田大学院経済学研究科博士課程中退。1995年からフランス・フットボール誌通信員、2007年から同誌バロンドール選考(投票)委員。現在は中国・体育週報アジア最優秀選手賞投票委員も務める。


