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【田村修一の視点】2025年9月27日 J2リーグ第31節 ジェフユナイテッド千葉対ロアッソ熊本

J2リーグ第31節 千葉2(1-1)2熊本
18:03キックオフ フクダ電子アリーナ 入場者数 13,902人
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悲願のJ1昇格とJ2優勝のためにもう1戦も落とせない千葉と、その千葉にこの2年間負けていない熊本。両者が織りなしたのは、J1でもあまり見ることのない高い強度と激しい戦いに満ちたスリリングな90分の攻防であり、どちらも勝ち切れなかった悔しさの残る好勝負だった。

 

千葉は熊本の圧力を正面から受け止めた。その結果、2度にわたり失点を喫し(12分のオウンゴールと67分の神代慶人の得点)リードを許したが、ともに呉屋大翔(30分)とイサカゼイン(70分)の個の力によるゴールで追いつき、ペースを自分たちのものにしていった。そして後半は、選手交代で攻撃のギアをさらにあげて得点機を作り出したが、決めきるまでには至らなかった。

 

自分たちの流れを作りながら、結果は得られなかった。小林慶行監督も言うように「勝たなければいけないゲーム」ではあったが、千葉の最大の強みは目先の結果だけに一喜一憂しないところにある。目標と現状を冷静に認識し、そこに向けてのブレがない。次週の長崎戦は優勝と昇格を争う直接対決であり、昨年は苦杯を舐めた相手でもある。熊本戦以上の大一番といえるが、脚を地につけた準備を進めるのだろう。

 

一方の熊本は。大木武監督のコンセプトと哲学が全面に出たチームである。その運動量とプレー強度はJ2でも屈指で、本来なら降格ゾーン周辺に甘んじるチームではないだろう。浮上できないのは、メリハリの利いたプレーでゲームをコントロールできないから。90
分間あれだけの強度でゲームを続けるのは、不可能ではないが難しい。どこかに緩急が必要で、ただ緩のときも本当に緩むのではなく、高い集中力はずっと保ち続ける。そうしたメンタルマネジメントが、熊本はまだ出来ていない。この終盤、さらには来季に向けて、熊本が上がっていくための課題はそこにある。

 

 

 

 

田村修一(たむら・しゅういち)
1958年千葉県千葉市生まれ。早稲田大学院経済学研究科博士課程中退。1995年からフランス・フットボール誌通信員、2007年から同誌バロンドール選考(投票)委員。現在は中国・体育週報アジア最優秀選手賞投票委員も務める。