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ミシャ式はガラパゴスか最先端か?3-4-2-1の可変システムがもたらした革命(西部謙司)

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ミシャ式はガラパゴスか最先端か?3-4-2-1の可変システムがもたらした革命(西部謙司)J論プレミアム

サンフレッチェ広島、浦和レッズ、北海道コンサドーレ札幌で指揮をとり、いずれのチームでも攻撃的なサッカー哲学を根付かせてきたミハイロ・ペトロヴィッチ監督。
彼が発明した可変式の3-4-2-1システムは、その後多くのJクラブで汎用されているように、Jリーグに革命をもたらしている。
これだけ長く普及している理由はどこにあるのか? またその機能性と構造的な課題とは?
ミシャ式がもたらした変革を戦術ライターの第一人者・西部謙司が紐解いていく。


▼ペトロヴィッチが発明した3-4-2-1の可変システム=ミシャ式

限定された特殊な環境での独特の進化は「ガラパゴス」にたとえられる。孤島ガラパゴスにおける生物の進化から来ているわけだが、スマートフォンが席巻する前に高機能化していた日本の携帯電話が「ガラケー」(ガラパゴス携帯)となってしまったのは周知のとおりだ。

ミハイロ・ペトロヴィッチ監督の3-4-2-1システム、いわゆるミシャ式は日本ではすっかりお馴染みだが、世界的には珍しい部類だろう。筆者が知る範囲では、メキシコ代表が似たやり方をしていたが同じではなかった。かなり特殊な戦術にしては、日本で長期に渡って使われていて成果も出している。ペトロヴィッチ監督が指揮したサンフレッチェ広島、浦和レッズ、北海道コンサドーレ札幌だけでなく、大分トリニータや湘南ベルマーレ、さらにJ2に関しては3-4-2-1のほうが主要システムになっている。大分のようにミシャ式を踏襲したクラブもあれば、湘南のように機能性の異なるチームもあるのだが、3-4-2-1という点のみにフォーカスするとかなり普及している。

では、ミシャ式はガラパゴスなのか? そうともいえるし、そうでないともいえる。

▼攻守で形が変化。試合中のほとんどの時間で3-4-2-1にならない理由
ミシャ式の概要を簡単に説明しておこう。すっかりお馴染みのやり方なので、今さらの感もあるが、とりあえず。

キックオフのフォーメーションは3-4-2-1だが、試合中のほとんどの時間でこの並び方になっていない。つまり、攻守で形が変化する可変式のシステムである。また、それがミシャ式の大きな特徴でもあるわけだ。

攻撃時の変化は大きく3つ。第一に3バックの左右がタッチライン際まで開く。第二にボランチの1人が後退して中央のDFと並ぶ。この時点で3バックは4バックに変化する。第三に左右のウイングバックがポジションを上げてサイドハーフ、あるいはウイングとなる。この3つのポジション変化によって、攻撃のフォーメーションは4-3-3ないし4-1-5になる。

ポジション移動の目的は、ボールの確保と前進だ。

対戦相手を4-4-2とすると、初期段階の3バックがすでに捕まりにくい立ち位置になっている。3バックの左右は相手の2トップとサイドハーフの中間ポジションにいるので、そのままパスを受ければ自分の前方に敵がいない、つまり前方へボールを運べる状態である。次にウイングバックがポジションを上げることで、相手のサイドハーフは味方のサイドバックにマークを受け渡すまではウイングバックをみなければならない。つまり、タッチラインへ開く左右のセンターバックへのマークが遅れる。そこへマークしにいく段階では、すでにボランチの1人が中央に下りてきていて、そこがフリーになる。

攻撃側の4バックへの変化に対して、守備側が2トップとサイドハーフ2人が4バックをマークすればはめ込み完了になるが、その過程で各所がフリーになってしまう。攻撃側はそのぶんボールを確保しやすいわけだ。ここまでがボール確保のメカニズム。ボールの前進は、確保の過程でボール保持者の前方のコースが開いていれば即時に行われるが、そうならなくても前進させる手が用意されている。

ボール前進のための仕掛けが、中盤の空洞化だ。

ポジション移動が完了した4-1-5で、4バックの前にはボランチ1人しかいない。相手が4-4-2ならボランチ2人に対して数的不利に思えるが、2シャドーをMFにカウントすれば3対2で数的優位になっている。ポイントは、2シャドーが守備側ボランチの背後から動き出すために捕捉されにくいことだ。さらに、前線5人の状態で守備側4バックに対しても数的優位になっている。これが何を意味するかというと、攻撃側の「1」にあたるボランチに対して、守備側のボランチが釣り出されると、もう1人が守っているスペースの左右にシャドーが下りてくるとフリーになりやすいのだ。守備側ボランチの背後から動き出すこと、数的不利になっている守備側DFが下りていくシャドーへのマークを躊躇しやすいことから、下りるシャドーへのマークが遅れやすくなる。

まとめると、後方でのポジション移動によってボールを確保。中盤の空洞化によるボールの前進。この2つが攻撃時にフォーメーションを変化させる主な理由である。

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