【六川亨の視点】2024年6月15日 J1リーグ第18節 横浜F・マリノスvsFC町田ゼルビア
J1リーグ第18節 横浜FM 1(1-1)3 町田
16:03キックオフ 日産スタジアム 入場者数37,396人
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先制したのはホームの横浜FMだった。前半14分、ヤン・マテウスのクロスのこぼれ球を渡辺皓太が粘ってつなぎ、宮市亮が右足のコントロールシュートをゴール右に決めた。しかし横浜FMの決定機はこの1回だけ。後半36分に天野純が1点を返したものの、その前に味方の反則があったとしてオンフィールドレビューの結果、取り消されてしまう。それだけ「相手のハードワークが上回った」(ハリーキューウェル監督)試合だった。
町田は12日の天皇杯2回戦、筑波大戦でナ・サンホら主力4人が大ケガを負ったが、そのハンデを感じさせない充実の試合内容だった。守っては、攻撃から守備への素早い切り替えでスペースを与えず横浜FMのカウンターを封じた。ヤン・マテウスやアンデルソン・ロペスが単独ドリブルを試みてもハードマークで突破を許さない。喜田拓也と渡辺皓といったテクニシャンにも持ち味を発揮させず、中盤を完全に制圧した。そしてマイボールになるとGK谷晃生も含めてタテへの速い攻撃を選択。同点弾こそFKから昌子源が今シーズン初ゴールを決めたが、町田らしいのは後半12分の決勝点だ。横浜FM陣内で平川悠がパスカットすると素早く右サイドのバスケス・バイロンにパス。するとバスケス・バイロンはワンタッチでゴール前にクロスを送り、藤尾翔太のゴールを演出した。藤尾のシュートもワンタッチのため、DF陣は為す術もなかったと言っていい。
黒田剛監督は「心技体、気持ち、魂、走りきる体力。町田らしいサッカーを確立できた。けして連敗しないのは偶然ではなく必然。しっかり整理されている」と胸を張った。指揮官が自負するように、町田は昨シーズンのJ2から今シーズンまで、一度も連敗したことがない。そして『先行逃げ切り』のイメージが強いが、この日は今シーズン初めて逆転勝利を収めた。選手にとっては自信につながるだろうし、横浜FMには気の毒だが選手層の厚さ=スカウティングと監督のモチベーション力が鮮明になった一戦だった。
六川亨(ろくかわ・とおる)
東京都板橋区出身。月刊、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長を歴任し、W杯、EURO、南米選手権、五輪を取材。2010年にフリーとなり超ワールドサッカーでコラムを長年執筆中。「ストライカー特別講座」(東邦出版)など著書多数。