【六川亨の視点】2024年4月13日 J1リーグ第8節 東京ヴェルディvsFC東京
J1リーグ第8節 東京V2(2-0)2FC東京
16:03キックオフ 味の素スタジアム 入場者31,746人
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16年ぶりの“東京ダービー”は2-2のドローながら、2-0のリードを守れず勝点1にとどまった東京Vにしてみたら「負けに等しいドロー」と言えただろう。
立ち上がり、FC東京は2度のシュートチャンスをつかんだものの、ヒートアップする両ゴール裏のサポーターとは対照的に、両チームの選手は冷静に試合を進めていた。ところが25分、MF見木友哉の攻撃参加に慌てて戻ったFW安斎颯馬が足を引っ掛けて倒してしまいPKを与える。これを見木は確実に決めてリードを奪った。さらに33分、CBエンリケ・トレヴィザンのFW俵積田晃太へのパスを右SB宮原和也がインターセプト。宮原はドリブルで進んでからアーリークロスを入れると、ゴール前でフリーだったFW染野唯月が鮮やかなボレーで突き刺して追加点を奪った。43分には安斎が足の裏を見せてのアタックで、この日2枚目のイエローカード(1枚目はPKのシーン)。となり退場処分を受けてしまう。
1人少ない状況でピーター・クラモフスキー監督が動いたのは後半16分のこと。MF小柏剛に代えて180センチのMF寺山翼を1トップに起用し、FW俵積田晃太に代えてFW遠藤渓太を送り出した。すると23分、CB山越康平のフィードをカットした右SB白井康介が高速ドリブルでカウンターを仕掛ける。白井のグラウンダーを寺山がスルーすると背後から遠藤がワンタッチで合わせて1点を返した。東京Vも選手交代から決定機をつかんでいたが、3点目を奪いに行くのか、試合をクローズさせるのか意思の疎通を欠いたのかもしれない。城福浩監督は「私の指導力不足でしょう。僕が未熟だったということ」と自身を責めていたが、流れは追いかけるFC東京に傾いていた。
後半のアディショナルタイムは4分で、2分を過ぎたころにはエンリケ・トレヴィザンが最前線に上がる。そして90+4分、GK波多野豪のロングキックをエンリケ・トレヴィザンが頭で落とし、FW仲川輝人が左につなぐと遠藤がワントラップから値千金の同点弾をゴール左下に流し込んだ。
ドラマチックな結末だったが、東京VはFW山田楓喜、FC東京はFW荒木遼太郎とMF松木玖生の不在が痛手であることを改めて証明した一戦でもあった。
六川亨(ろくかわ・とおる)
東京都板橋区出身。月刊、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長を歴任し、W杯、EURO、南米選手権、五輪を取材。2010年にフリーとなり超ワールドサッカーでコラムを長年執筆中。「ストライカー特別講座」(東邦出版)など著書多数。