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【六川亨の視点】2023年4月15日 J1リーグ第8節 FC東京vsセレッソ大阪

J1リーグ第8節 FC東京1(0-0)2セレッソ大阪
16:03キックオフ 味の素スタジアム 入場者数16,939人
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4月9日の第7節、湘南戦(2-2)はケガで出遅れた右SB中村帆高がスタメンで、MF安部柊斗とFW渡邊凌磨も交代出場ながら復帰を果たした。さらに第6節の鳥栖戦(0-1)はU-20W杯アジア予選の疲労を考慮してメンバー外となったMF松木玖生もスタメンに戻るなど、FC東京の戦力は徐々に整いつつあった。そして第8節のC大阪戦は彼ら4人が揃ってスタメンに復帰した。

サイドアタッカーに渡邊と仲川輝人、中盤はアンカーに小泉慶が入り、右に松木、左に安部とドリブラーが揃った前線は破壊力がパワーアップ。速攻はもちろんのこと、ボールを保持してのビルドアップでも昨シーズンとはひと味違った厚みのある攻撃を披露した。就任1年目だった昨シーズンのアルベル監督は、ボールを保持する攻撃スタイルを指向しながらも、ディエゴ・オリヴェイラやアダイウトンのドリブル突破という個人技頼みの堅守速攻スタイルだった。しかし敗れはしたものの、C大阪戦後の指揮官は「今日もチームの成長を見せることができた。後ろからのビルドアップとボールロストの回数を減らすことができた」とチームの成長を口にした。

では結果はというと、昨シーズンは8試合を終えた段階で4勝2分け2敗の6位で、失点は5点しかなかった。ところが今シーズンは2勝3分け3敗の11位で、失点は9点と倍増近い。この日も押し込みながら、C大阪のカウンターにヒヤリとさせられるシーンが何度かあった。堅守速攻からの脱却を図りながら、逆に堅守速攻の鳥栖やC大阪に苦杯をなめる皮肉な結果になっている。とはいえ、これが産みの苦しみなのだろうし、このスタイルを継続するしかない。このため第10節(22日)、完成度の高い広島との一戦は格好の試金石と言えるだろう。

一方、2019年以来リーグ戦は2分け5敗とFC東京を苦手にしていたC大阪は、それまでのボックス型の中盤の4-4-2から「新たにチャレンジしている4-3-3」(小菊昭雄監督)にしたのがハマった。原川力をアンカーにして、右インサイドに奧埜博亮、左インサイドに香川真司を配置した中盤は、回数こそ少ないものの決定的なシーンを演出。「香川と奧埜のローテーションでスペースを見つけて行く。ポジションチェンジしてスペースを見つける。彼らしか絡めない感覚」と小菊監督もベテラン2人の熟練のプレーを絶賛していた。

 

 

 

六川亨(ろくかわ・とおる)

東京都板橋区出身。月刊、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長を歴任し、W杯、EURO、南米選手権、五輪を取材。2010年にフリーとなり超ワールドサッカーでコラムを長年執筆中。「ストライカー特別講座」(東邦出版)など著書多数。