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【森雅史の視点】2024年3月9日 J1リーグ第3節 FC町田ゼルビアvs鹿島アントラーズ

J1リーグ第3節 町田 1(1-0)0 鹿島
14:03キックオフ 町田GIONスタジアム 入場者数11,901人
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町田が勝利に徹し、J1ホーム戦で初めての勝点3をあげた。13分、前線からのプレスでボールを奪うと、素早くつないで逆サイドから入ってきた平河悠につなぐ。平河は力強いシュートを放ち、GKの体に当てたもののゴールを割った。

町田のサッカーを見ていると、アジアカップでの中東勢の戦いと被ることがある。ボールの奪い方こそ違うものの、奪取したとたんにとにかく素早く攻める。点を取るために無駄を徹底的に排除する。「勝つ」ということが目的で、そこを見失うことはない。清々しいまでに「守る」「攻める」以外のことをそぎ落としているのだ。もちろん個々のタレントは自分の特長を生かしている。だが、「自分のやりたいプレー」をやることはない。まるで毎試合、負けたら終わりというトーナメントを戦っているようだ。今チームを構築しようとしている鹿島と、割り切って勝負に徹した町田という構図だったゆえに、町田が押し切った。

町田の采配で特徴的だったのは第1節で退場した仙頭啓矢を出場停止明けにすぐ先発に入れたこと。試合後、仙頭は自分でも意外だったことを打ち明けたが、仙頭にとっては監督に感謝するとともに、自分の背水の陣であることも感じたことだったろう。かつて鳥栖でチームメイトだった樋口雄太と中盤で縺れたとき、仙頭は樋口の倒れ方が悪ければ退場もあるのではないか、もしそうなったら自分はこのチームでは終わりだと心配したと、試合後に顔を合わせた樋口と言葉を交わしていた。

この日の主審はモロッコ生まれでアメリカ在住のエルファス・イスマイル審判。審判員交流研修プログラムの一環として来日して笛を吹いている。試合ではときにパスのコースに入ったり、選手が使いたいだろうスペースに入り込んでいた。これはたぶん、イスマイル主審が普段経験しているサッカーよりもJリーグはもう一つパスをつなぐから、ということなのだろう。1チームあたりの平均入場者数が2万人を超えるMLS(メジャーリーグサッカー)のスピード感は、この町田のサッカーよりも早いものではないかと推測できた。そして、イスマイル審判のプレーを見極めたり試合をコントロールする力はさすが国際審判員だった。

 

 

 

森雅史(もり・まさふみ)
佐賀県有田町生まれ、久留米大学附設高校、上智大学出身。多くのサッカー誌編集に関わり、2009年本格的に独立。日本代表の取材で海外に毎年飛んでおり、2011年にはフリーランスのジャーナリストとしては1人だけ朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の日本戦取材を許された。Jリーグ公認の登録フリーランス記者、日本蹴球合同会社代表。2019年11月より有料WEBマガジン「森マガ」をスタート