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【六川亨の視点】2024年2月24日 J1リーグ第1節 東京ヴェルディvs横浜F・マリノス

J1リーグ第1節 東京V 1(1-0)2 横浜FM
14:04キックオフ 国立競技場 入場者数53,026人
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「歴史は繰り返す」とは古代ギリシャの歴史家ツキディデスの言葉だそうで、日本では明治末から使われ始めたという。試合後、記者会見の準備をしていた東京Vのベテラン広報は「よりにもよって、ここで繰り返さなくてもいいのに。皆さんに話題を提供してしまいました」と国立競技場で迎えた開幕戦での逆転負けにも笑顔で応えた。

いまから31年前のJリーグ開幕戦、国立競技場で開催されたヴェルディ川崎(現東京V)対横浜マリノス(現横浜F・マリノス)の試合は、V川崎が先制しながら横浜Mに1-2と逆転負けを喫した。31年前と同じ展開となった今シーズンの開幕戦に、当時を知るファン・サポーターは「歴史は~」を実感しただろうし、広報は「繰り返さなくても」と嘆いたわけだが、それほど東京Vは悲観する必要はないだろう。

横浜FMは昨シーズンこそ2位だが、一昨シーズンは優勝チームである。対する東京Vは16年ぶりにJ1の舞台に復帰した。このためスタメンにもJ1経験者は6人しかいなかった。しかし前半7分にMF山田楓喜が右FKから左足で鮮やかにねじ込んで先制点を奪うと、20分、30分、38分と立て続けにFW染野唯月やFW木村勇大らが決定機を迎える。いずれもGKポープ・ウィリアムの好セーブに阻まれたが、城福浩監督が「2点目を取らないと勝てない」と振り返ったように、ここで突き放していれば試合結果も違ったものになったかもしれない。

それでも試合終盤まで、横浜FMに決定機らしい決定機を作らせなかったのは、「昨年までやってきたことをブラッシュアップしただけ」と指揮官は言うものの、前線の選手を含めた守備意識の浸透である。特にダブルボランチの森田晃樹と見木友哉のインターセプトやプレスバック、さらにはDFラインに下がってのシュートブロックといった献身的な守備は横浜FMを苦しめた。

敗れはしたが、可能性を感じさせる戦いだった。ただし、城福監督も指摘していたように、善戦のまま未勝利が続くようでは選手も自信を失うだろう。次節、アウェーの浦和戦は両チームともシーズン初勝利に向けて「オリジナル10」の意地を見せられるか。選手、監督からしたら、「オリジナル10」という言葉自体、死語かもかもしれないが……。

 

 

 

 

六川亨(ろくかわ・とおる)

東京都板橋区出身。月刊、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長を歴任し、W杯、EURO、南米選手権、五輪を取材。2010年にフリーとなり超ワールドサッカーでコラムを長年執筆中。「ストライカー特別講座」(東邦出版)など著書多数。