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【六川亨の視点】2022年2月18日 J1リーグ第1節 川崎フロンターレvsFC東京

J1リーグ第1節 川崎 1(0-0)0 FC東京
19:05キックオフ 等々力陸上競技場 入場者数17,544人
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2022年シーズンの開幕戦、3連覇を狙う川崎Fとアルベル新監督を迎えたFC東京の一戦は非常に興味深い試合となった。アルベル監督は前日の会見で6人の選手がコロナに感染して出場できないことを明かした。

試合当日のマッチデープログラムの予想スタメンから名前が消えていたのはキャプテンの森重真人、ベテランの東慶吾、俊足ドリブラーのアダイウトンの3人。さらにテクニシャンの高萩洋次郎、新加入FWの山下敬大もベンチ外だった。

長谷川健太前監督の堅守速攻から、アルベル監督の掲げるポゼッションスタイルへの転換を図っているFC東京にとって、かなりのハンデとなる主力の不在である。実際、試合が始まってみるとGKからビルドアップしようとしても、川崎FのプレスにパスをつなぐことができずGKへのバックパスの繰り返し。選手同士の距離間が悪く、パスミスから自陣でのプレー時間が長かった。

ただ、その間の川崎Fの決定機をGKヤクブ・スウォビィクが無失点に抑えたのが大きかった。

前半22分にベンチ前に選手が集まり「修正部分を監督から指示された」(ディエゴ・オリベイラ)ことで、FC東京は無理をしてパスをつながず、シンプルなカウンターに切り替える。するとレアンドロや新人MF松木玖生、ディエゴ・オリベイラらが決定機をつかんだ。

後半も押し気味に試合を進めたのはFC東京だった。川崎Fは昨シーズンのように何本ものパスをつないで守備網を次々に剥がすパスサッカーを展開することができない。家長昭博はすっかり消えてしまい、後半17分にチャナティップとマルシーニョの左サイドの攻撃陣が交代してからは防戦一方になった。

それでも36分に左CKからレアンドロ・ダミアンが技ありのヘッドを決めて勝利をたぐり寄せた。とはいえ、改めて田中碧と旗手怜央の抜けた穴の大きさを露呈し、3連覇が容易ではないことをうかがわせた。

一方のFC東京は、これまでの惨敗に比べれば自信につながる敗戦だったと言えるだろう。ただし、善戦しても連敗続きでは負のスパイラルに陥る危険もある。

 

 

 

六川亨(ろくかわ・とおる)

東京都板橋区出身。月刊、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長を歴任し、W杯、EURO、南米選手権、五輪を取材。2010年にフリーとなり超ワールドサッカーでコラムを長年執筆中。「ストライカー特別講座」(東邦出版)など著書多数。