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【森雅史の視点】2024年2月24日 J1リーグ第1節 東京ヴェルディvs横浜F・マリノス

J1リーグ第1節 東京V 1(1-0)2 横浜FM
14:04キックオフ 国立競技場 入場者数53,026人
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読売クラブ、日産自動車時代から続く名勝負にまた新しい1ページが加わった。冷たい雨が降りしきるあいにくの天気だったが、国立競技場に詰めかけた5万3026人の観客は、自分の目でその瞬間を見ることができた。

前半は圧倒的に東京Vのペースとなった。21日に開催されたACLベスト16バンコク・ユナイテッド戦の疲労の色が濃い横浜FMを相手に、31年前から変わらないテクニックの多彩さを見せつける。相手の逆を取るテクニックは世代が変わっても伝統として息づいていた。1人、2人とかわしていくかと思えば、意外なタイミングで、意表をついたところにパスを出す。相手をあざ笑うかのようなプレーは東京Vの真骨頂だった。7分、山田楓喜がFKを決めて東京Vがリードしたこともその流れには拍車をかけた。

このFKの場面が一つのカギになった。縦に出たボールをポープ・ウィリアムがペナルティエリアから飛び出して処理しようとする。ところがうまくコントロールできず、東京Vの選手たちに詰められ、ポープはファウルで止めた。もしこの場面で上島拓巳がカバーのために戻ってきていなかったら、ポープは得点機会の阻止ということで退場になっていたはずだ。FKを与えたものの、上島の判断がポープを救った。そしてこれが試合の最後に効いてくる。

後半に入ると横浜FMは積極的な選手交代でリズムを取り戻した。対する東京Vは後半に入ると次第に足が止まり、時折鋭いカウンターを見せるものの、最後は丁寧に崩さずミドルシュートで終えるようになってしまった。

もしも横浜FMが前半で退場者を出していたら、もっと慎重にゲームを進めていただろう。だが11人揃っていて、相手の選手の動きが鈍っていたことで大胆なプレーをすることができた。89分にアンデルソン・ロペスが決めたPKは、東京Vにとって不幸なハンドだったと言えるだろう。だが90+3分に松原健が決めた決勝点は、横浜FMの持ち味であるダイナミックな動きの中で生まれたものなのだ。

川淵三郎初代チェアマンの試合前の挨拶から、31年前のと同じスコアでの決着、まるで前半のFKからすべてのストーリーがつながっているかのような決着だったと考えるのは、少々ロマン主義的だろうか。

 

 

森雅史(もり・まさふみ)
佐賀県有田町生まれ、久留米大学附設高校、上智大学出身。多くのサッカー誌編集に関わり、2009年本格的に独立。日本代表の取材で海外に毎年飛んでおり、2011年にはフリーランスのジャーナリストとしては1人だけ朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の日本戦取材を許された。Jリーグ公認の登録フリーランス記者、日本蹴球合同会社代表。2019年11月より有料WEBマガジン「森マガ」をスタート