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【六川亨の視点】2022年3月5日 J2リーグ第3節 大宮アルディージャvsロアッソ熊本

J2リーグ第3節 大宮アルディージャ1(1-0)2ロアッソ熊本
13:03キックオフ NACK5スタジアム大宮 入場者数4,531人
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2試合を終えて1分け1敗で下位に低迷する両チーム。今シーズン初勝利を手にしたのはJ3から昇格したアウェーの熊本だった。

大宮は霜田正浩監督の方針により、GKからパスをつないでビルドアップする。当然、対戦相手は前線からプレスをかけに来る。ボール保持者はもちろん、パスの受け手にもフリーにさせないようプレスをかける。この結果、開幕戦の横浜FCと同様、熊本はマンマークで大宮の攻撃を封じに来た。13分に大宮の河田篤秀に先制点を許したものの、その後はほぼワンサイドゲームを展開した。

これに対し大宮はGK上田智輝とCB西村慧祐がロングパスを選択したが、正確性を欠いたため熊本に拾われては波状攻撃を招いていた。そこで霜田監督は後半開始から西村に代えてMF新里亮、MF三幸秀稔に代えてMF大山啓輔を投入。この交代策は的中し、イーブンの展開に持ち込む。一方の熊本も後半26分にMF竹本雄飛に代えてMF田辺圭佑、1トップの高橋利樹に代えてFW粟飯原(あいはら)尚平を投入。この起用がずばり的中した。

後半28分に田辺の右CKからCB菅田真啓がJ初ゴールで同点弾を決めると、41分には田辺のクロスを粟飯原がヘッドで叩き込んで逆転に成功。大木武監督が「前からしっかりプレッシャーをかけられた。プレッシャーがうまくかかって押し込めた」と勝因を語れば、霜田監督は「相手がいいというよりウチが悪すぎた。自滅したようなゲームになってしまったのはすべて僕のせいだと思っています」と敗戦を素直に受け入れていた。

他にも両チームの明暗を分けた理由としては、チームの完成度も指摘できる。両SBを始め主力クラスが大量に抜けた大宮は、スタメン11人中5人が今シーズン加入した選手。一方の熊本は2人だけ。熊本は昨シーズンの主力がほぼ残留し、2ゴールに絡んだ田辺やレフティーの若手CBイヨハ理ヘンリーら補強も抜かりはない。このため大宮は、開幕戦で0-2から2-2に追いつく健闘を見せながら、アディショナルタイムにPKを与えて敗れた横浜FC戦。2-0のリードから2-2に追いつかれて引き分けた新潟戦と同様、いましばらくは苦しい戦いが続くのではないだろうか。今後の不安材料は、こうしたネガティブなイメージが選手にとってトラウマになることかもしれない。

 

 

六川亨(ろくかわ・とおる)

東京都板橋区出身。月刊、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長を歴任し、W杯、EURO、南米選手権、五輪を取材。2010年にフリーとなり超ワールドサッカーでコラムを長年執筆中。「ストライカー特別講座」(東邦出版)など著書多数。