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【六川亨の視点】2021年3月24日 J2リーグ第3節 大宮アルディージャvs京都サンガF.C.

J2リーグ第3節 大宮アルディージャ1(1-1)2京都サンガF.C.
19:03キックオフ NACK5スタジアム大宮 入場者数2,531人
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3月13日に行われたJ2リーグ第3節の大宮対京都戦は、折からの雷雨のため中断から18分に京都が1-0とリードしたところで中止となった。

このため24日に、19分から京都の1-0リードで試合が再開された。

京都は前半44分に右SB荻原拓也のバックパスが短くなったところをMF松田詠太郎に奪われ、最後はFWネルミン・ハスキッチに押し込まれて同点に追いつかれた。

この致命的なミスにより前半で交代させられた荻原は、ハーフタイムのロッカーで泣きじゃくったという。しかし曺貴裁監督は「必ず今日のことが彼を伸ばすと思う。レフティーでスピードもあり、将来の代表になれる選手。期待しているし、みなさんも期待して欲しい」と21歳の若者に試練を与えた理由を話した。

試合は後半になって猛攻を仕掛けた京都がPKから決勝点を奪った。パスを出したらそこで一休みするのではなく、例え疲れていても全速力で大宮のボックスを目指す。それは逆サイドにいる選手も同じで、味方を追い越すように走る。貴裁監督が湘南で実践したサッカーを、京都の選手は必死になって実践していた。

NACK5スタジアムはピッチと観客席が近いので、京都の選手が1プレーして一息つこうとしつつ、曺貴裁監督の指導を実践しようと走り出す一瞬のタイムラグが手に取るように分かるので、つい応援したくなってしまった。

この試合で触れておきたいのは、両チームとも若手を積極的に起用していることだった。荻原だけでなく、京都は4-3-3のシステムから中盤の逆三角形のアンカーに19歳の川﨑颯太を起用。昨シーズンも19試合に出場している川﨑は、DF陣からパスを引き出し、前線のサイドへ散らしたり、スルーパスで好機を演出したりしていた。

対する大宮は4-4-2の布陣から、ベテラン三門雄大とコンビを組んだ20歳の松本大弥は180センチの大型ボランチで、彼もまたパサータイプであり、すでに広島在籍時代にJ1リーグで11試合に出場している。広島からのレンタル選手であるが、大宮で背番号4を与えられていることからも期待の高さがうかがえる。

さらに大宮の岩瀬健監督は、1-1の膠着状態で最初の交代カードに選んだのは、アカデミー時代に「大宮のメッシ」と言われた18歳の柴山昌也だった。結果を求めつつ次世代の育成という両輪を実践している両チーム(監督)の現在地を確認できたのは大きな収穫だった。

 

 

六川亨(ろくかわ・とおる)

東京都板橋区出身。月刊、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長を歴任し、W杯、EURO、南米選手権、五輪を取材。2010年にフリーとなり超ワールドサッカーでコラムを長年執筆中。「ストライカー特別講座」(東邦出版)など著書多数。