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テーマ再開J1リーグ後半戦大展望。五人五様の『イチ推しポイント』

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メガネの元サカマガ編集長・北條聡

2014 07/15  08:15

本命浦和は「0.64」の強みが光るが、超絶なる川崎Fもイチ推しだ

7月15日、W杯による中断期間に入っていたJ1リーグが再開される。まずはACL組同士による未消化試合2試合を実施し、週末からはJ1全クラブがリーグ戦へと再突入していく。週替わりのテーマについて複数の論者が意見を交わす『J論』では、この再開されるJ1リーグを大展望。それぞれの筆者が、自分の『イチ推しポイント』に焦点を絞って論を展開していく。二番手はメガネの元サカマガ編集長・北條聡が、過去のデータ的な蓄積と今季の戦いぶりから優勝クラブを予想する。



▼優勝争いは上位8クラブまで
 最後に笑うJ1クラブはどこか。

 まだシーズン全体の約40%を消化したに過ぎないが、ここまでの各クラブの戦いに基づいて、タイトルの行方を占ってみたい。中断前の14節を終えた時点での首位は浦和だ。その勝ち点は『29』。そこから『8』差の8位につける川崎Fまでが事実上、タイトルレースに参加できる最終ラインではないだろうか。

 昨季を例にとると、14節終了時点でのトップは勝ち点『33』の大宮。そこから8ポイント差の5位が鹿島だった。首位から11ポイント差の川崎F(7位)は最終的に3位へ食い込んだが、優勝戦線には加わっていない。しかも、32節終了時点では優勝の可能性はほぼ消えていた。首位・大宮は予想外の監督交代もあって後半戦で脱落していったものの、トップ5につけていた残りの4クラブは、したたかに優勝争いに絡んでいる。

 よほどのことがない限り、今シーズンも8ポイント差の中でひしめく上位8クラブの中からJ1王者が生まれることになるのだろう。後半戦の驚異的な追い上げ(14勝2敗)で逆転優勝を果たした2007年の鹿島の例もあるが、これを再現するには相応の「上積み」が必要だ。鹿島の場合はセリエA(イタリア)のメッシーナへレンタル移籍していた小笠原満男が7月に復帰を果たし、逆転優勝への切り札となっていた。

▼浦和が持つ「0.64」の強み
 もっとも、現時点でこの手のビッグディールが判然としない以上、9位以下の大逆転という予想は立てにくい。上位8位クラブの中でさらに優勝候補を3つに絞るなら、本命が浦和、対抗が広島と川崎Fだ。ACL組の広島と川崎Fはいずれも消化した試合数が1つ少ない中で8位以内に入っている。これからリーグ戦に集中できる「利点」は見逃せない。

 では、なぜこの2クラブではなく浦和を本命に推すか。

 理由は2つ。失点の少なさと2ケタ(10ポイント)を記録する得失点差の数だ。前者はリーグ最少、後者はリーグ2位(最多は鳥栖の11ポイント)である。1シーズン制に転じた2005年以降、優勝を果たした全9チームのうち7チームまでがリーグ3位以内の失点数を誇っており、8チームはリーグ3位以内の得失点差を稼いでいる。ロースコアの僅差勝負に強く、確実に勝ち点を拾い、得失点差を伸ばす力を持っていた。優勝には、収入(得点)を増やし支出(失点)を抑える収益構造が必須というわけだ。

 今季の浦和は例年に比べると、確かに得点の数が少ない。おまけに、チーム最多得点者(4得点)の原口元気が中断期間中にドイツのヘルタ・ベルリンへ移籍してしまっている。後半戦の課題が得点力にあるのは間違いないが、何も1試合に3点も取る必要はない。浦和の1試合平均失点は実に0.64なのである。1点あれば勝ち点3、悪くても勝ち点1を狙える計算だ。2点取れば、ほぼ勝利を手にする。極めて効率がいい。負けない浦和の強みと言っていい。

▼浦和の「前から守る」インテンシティー
 浦和の第一次黄金期を支えた堅守速攻が、現在の浦和における収益化のハブではない。堅守「遅攻」だ。往年のダイレクトプレーからポゼッションプレーへ転換し、理想的な収益構造を見いだしつつある。1試合平均のポゼッション率はリーグトップの57%だ。浦和のスタイルを貫きながら、懸案の失点を減らしている。森保一監督の就任以降、安定した守備力を手に入れてリーグ連覇を果たした広島のサクセスモデルをキャッチアップしたかのようだ。

 もっとも、手段は違う。広島が後ろで守るのに対し、浦和は前から守る。攻と守を高速転換し、人(球)に対して速く、激しく寄せて球を奪う。ハナから自陣ゴール前に相手を近づけない。インテンシティーの高いフットボールだ。一人ひとりの守備意識が高まり、カウンターをまともに食らうケースも少なくなっている。しかも浦和の最後尾には西川周作が控えているのだ。開幕前に浦和を本命視したのも、リーグ最高の守護神の加入があったからこそ。僅差勝負に強くなった一因だとも思う。

 前から守れる分、自陣と敵陣を往復する体力的なロスが減り、不用意なボールロストも減っている。クリーンシート(無失点)はリーグ最多の9試合。うち5試合が1-0という僅差勝ちだ。それも相手に球を譲らず、試合をコントロールしての話である。その点が2位につけている鳥栖との大きな違いか。派手さの代わりに勝負強さが備わりつつある。

 原口を失ったが、柏木陽介を2列目に上げ、ボランチに青木拓矢を据えれば、戦力面におけるマイナスも最小化できるのではないか。心身の充実ぶりが見て取れる柏木の得点力に期待が持てるうえに、今季は意欲的な攻撃参加が目につく阿部勇樹のランプレーも頼もしい。あとは1トップの李忠成がうまくパズルにはまるのを待つばかり。最大の死角となる決め手不足にメドが立つかどうかの分かれ目だろう。

▼イチ推しは超絶ポゼッションの川崎F
 浦和が決め手不足を引きずり、勝ちを拾い損ねる試合が増えるようなら、広島と川崎Fのチャンスがふくらみそうだ。三連覇を狙う広島の経験値は侮れない。ただ、ポテンシャルの高さなら川崎Fではないか。好調時におけるポゼッションプレーの質はリーグ随一と言っていい。相手を自陣に縛り付ける、文字どおりのハーフコートゲームをやってのける。

 必見は卓抜したパスワークを演出する中村憲剛と大島僚太のペアだ。まるでバルセロナ(スペイン)におけるシャビとイニエスタの関係を思わせる。大島同様、成長著しいFW小林悠の存在が中村と大島のアイディアを十全に引き出している点も大きい。今季も好調な大久保嘉人との和製2トップは、リーグ屈指の破壊力を秘めていると言っていい。

 各々の技術とセンスに強く依存するオーダーメイドのチームだけに、現在のスタメン組が抜けた際の調和やイメージの共有に乱れが生じやすい。そこが最大のネックだろう。もっとも、ベストの面子がそろえば、どんな相手も破格のポゼッションで圧倒し、ゴールラッシュを演じるだけの力がある。後半戦の追い上げはクラブの定番となっており、1試合少ない状況で首位と8ポイントの差は十分に射程内。巻き返しの楽しみなクラブだ。

 ちなみに、浦和と川崎Fが激突した一戦(第8節)は個人的に前半戦のベストゲームだと思っている。技術的にも戦術的にも極めてレベルの高い攻防だった。しかもハイテンポでアグレッシブ。互いにミスも少なく、あっという間に時間が過ぎていった。タイトル争いとは別に、こうしたハイレベルのゲームが後半戦でも量産されることを期待したい。

▼浦和や川崎Fの「天敵」にも期待
 また、浦和や川崎Fらポゼッション志向の強いチームとは対照的に強力なプレッシングから鋭利なカウンターを繰り出すチームの「反抗」も楽しみだ。隙のないハードマークをもって積極的にパスワークを潰しにかかる鳥栖や新潟に加えて、手倉森政権下の凄みを取り戻しつつある仙台こそ、浦和や川崎Fの天敵となり得るはずだ。

 昨季のスペインリーグにおいて、レアル・マドリーとバルセロナの二強を最も苦しめたのが、当代随一のハードワークとプレッシングを誇るアトレティコ・マドリーだった。浦和や川崎Fに牙をむくのは、鳥栖の役どころか。隙間だらけの守備ブロックを相手にいくらパスを回しても、ポゼッションの質は一向に上がらない。そのことを、彼らの妥協なき「強奪守備」が教えてくれるだろう。懸案の得点力にメドが立てば、新潟も怖い存在となるはずだ。

 先のW杯を観ていても分かるように、世界には「あんなサッカー」もあれば「こんなサッカー」もある。多種多様な相手を打ち破る懐の深さがなければ、頂点にたどり着くのは難しい。異種格闘技戦のような摩擦を通じて、戦い方の幅や深み、創意工夫が生まれてくるのではないか。

 Jリーグは、そうしたダイナミズムを誇るリーグであってほしいと思っている。


北條 聡(ほうじょう・さとし)

1968年生まれ、栃木県出 身。元『週刊サッカーマガジン』編集長。現在はフリーランス。1982年スペイン・ワールドカップを境に無類のプロレス好きからサッカー狂の道を突き進 む。早大卒の1993年に業界入り。以来、サッカー畑一筋である。趣味はプレイ歴10年のWCCF(アーケードゲーム)。著書に『サカマガイズム』(ベー スボール・マガジン社)など。また二宮寿朗氏(フリーライター)との共著『勝つ準備』(実業之日本社)が発売中。

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