Jがアジアで勝つため『4つのプレミア化』を求む

AFCチャンピオンズリーグ。2002年に欧州のUEFAチャンピオンズリーグを模倣する形で創始されたこの大会で、日本勢が苦しんでいる。07年大会を浦和が、08年大会をG大阪がそれぞれ制して以降、Jリーグクラブのファイナル進出は皆無である。「なぜ勝てないのか、どうすれば勝てるのか」。『J論』では、このテーマを掘り下げてみたい。今回は『週刊サッカーマガジン』の元編集長である北條聡が、ACLで勝つためになすべき"4つのプレミア化"を提言する。


▼インセンティブの必要性
 どうすりゃ、ACLで勝てるのか?

 事の良し悪しはともかく、勝てる可能性を大きくするには出場クラブの「プレミア化」が、ある程度は必要になってくるのではないかと思っている。現状では、ACLで勝つためのインセンティブが働きにくい。出場クラブの自助努力はもちろん必要なのだが、やはりJリーグ側の支援が必須だろうと思う。

 それはざっくり言えば、「お金」と「環境」のサポートである。

▼プレミア化・その1=賞金アップ
 現在のJリーグでは、上位クラブが手にする金銭面のメリットが少ない。J1リーグの優勝賞金は2億円、2位が1億円、3位が8000万円。さらに天皇杯の優勝クラブは強化費という名目で1億円を手にする。だが、これらを順位相応に各選手や監督、スタッフの年俸アップに費やせば、強力助っ人の獲得はおろか、選手層の底上げにもつながりにくい。遠征助成金が支給されるようになったとはいえ、これで「来年は『ACLも頑張ってね』と言われてもなあ」というのが、出場クラブの本音だろう。

 そこで「勝つための投資」を促すために、せめて現在の2倍の賞金額は欲しいところではないか。それでも強化費に回せるかどうかは怪しいくらいである。自前で相応の資金を調達できるクラブ以外、優勝しても現有戦力の維持がやっとという状況では、ACLまで勝ちに行く余力は生まれにくい。Jリーグ側がACLで勝つことにそれなりの意義を見いだしているなら、ぜひとも再考を願いたいところである。

▼プレミア化・その2=過密日程の緩和
 お金の支援が不十分なら、せめてJリーグ側には環境整備に努めてもらいたい。今年のACLでは広島、川崎F、C大阪の3クラブがラウンド16で力尽きたが、過密日程による疲労の影響が色濃くあった。急きょ直前の試合をキャンセル(日程変更)し、万全の状態で川崎Fとの試合に臨んだFCソウル(韓国)とは対照的だった。Jリーグ側にも試合の延期を含む代替案の道筋をつけておくようなサポートがほしい。優勝という目的のためなら手段を選ばぬ韓国・中国勢とまともに張り合うには、そうした配慮、姿勢が必要なのではないか。

▼プレミア化・その3=常勝軍の台頭
 こうしたサポートが実現したとしてもなお、強化費が漸減傾向にあるJクラブ勢にとって、莫大な資金力を誇る広州恒大(中国)のようなパワープレーは難しい。そうした状況でどうすればいいのか。

 端的に言えば、J1リーグにおいて「抜けた存在」になるほかない。それが、実はACL制覇への最大の近道なのだと思う。

 もちろん、簡単な話ではない。ただ「お金の力」に頼れぬJクラブは純粋な競技力をもって道を切り開いていくしかないだろう。正直なところ、国内リーグで抜けた存在になったようなクラブ出なければ、もう一つのコンペティションに全力を注ぐのは難しい。しかも、ACLには移動、スタジアム環境、ジャッジの問題などアジア仕様の戦いがあり、毎年のように出場して経験値を蓄えていくことも極めて重要になる。そのためには、ACLを戦いながら、Jリーグで常に3位以上をキープできるくらいの抜きん出た実力がほしいところだ。

 ACLで優勝した当時の浦和は、それこそJ1リーグにおいて「抜けた存在」だった。その点では、ACLの前身であるアジアクラブ選手権を制した当時の磐田も同じだったと思う。欧州チャンピオンズリーグでも金満クラブと互角以上に渡り合い、決勝に駒を進めた今季のアトレティコ・マドリーは三強の、昨季のドルトムントは二強の一角であり、さらにジョゼ・モウリーニョ時代に優勝したポルトもまた、国内リーグでは圧倒的な存在だった。その利点が、欧州CLの中で生きた格好だった。

▼プレミア化・その4=独自のアイディア
 現在のJ1リーグは、かつての鹿島と磐田や、浦和とG大阪のような二強時代を経て、群雄割拠の戦国時代を迎えている。2シーズ以上、年間で70ポイント近い勝ち点を稼ぎ出す実力を備えているかどうかが「二兎追い」を可能にする、一つの目安かもしれない。浦和やG大阪がそうであり、名古屋もACLで4強入りを果たしている。まずは、J1の戦国乱世を終わらせる常勝軍の台頭が、ACLで勝つための第一歩かもしれない。

 常勝軍への道は、J1連覇を果たした広島のように、お金の代わりに独自のアイディアをもって、それをとことん極めることだろう。ドルトムントもオリジナルの戦法をもって金にモノを言わせるメガクラブに対抗した。広島以外のクラブにもアイディアの芽は育ちつつある。ぶっちゃけて言えば、金の切れ目が縁(王者)の切れ目――みたいなオチが想像できるどこかの国のリーグよりも、よほど大きな伸びシロがJリーグにはあるのではないか。金より知恵に拍車がかかる現状は、そんなに悪いものじゃない。これは負け惜しみではなく、である。


北條 聡(ほうじょう・さとし)

1968年生まれ、栃木県出 身。元『週刊サッカーマガジン』編集長。現在はフリーランス。1982年スペイン・ワールドカップを境に無類のプロレス好きからサッカー狂の道を突き進 む。早大卒の1993年に業界入り。以来、サッカー畑一筋である。趣味はプレイ歴10年のWCCF(アーケードゲーム)。著書に『サカマガイズム』(ベー スボール・マガジン社)など。また二宮寿朗氏(フリーライター)との共著『勝つ準備』(実業之日本社)が発売中。

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