
【田村修一の視点】2025年12月7日 J1昇格プレーオフ2025準決勝 ジェフユナイテッド千葉vsRB大宮アルディージャ
J1昇格プレーオフ2025準決勝 千葉4(0-2)3 大宮
13:04キックオフ フクダ電子アリーナ 入場者数 17,074人
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これ以上はない劇的な展開で、千葉がJ1昇格プレーオフ決勝進出を果たした。
引き分け以上で勝ち上がりが決る千葉だったが、大宮に先制(20分、泉柊椰)を許したうえに後半開始早々(48分、アルトゥール・シルバ)には3点目を決められて、ほぼ絶望的ともいえる戦いを強いられた。
それでも千葉は、慌てることも自棄になることもなかった。小林慶行が監督に就任してから千葉が追求してきたのは、最大瞬間風速(目の前の試合の勝利)を求めることであると同時に、いかにチームとしてのプラットフォーム(総合的な戦闘力、組織力=ピッチ内外でのクラブの戦う態勢)を向上させていくかであり、選手の個の力を伸ばす環境を整えるかだった。
もちろん監督にできることは限られている。だが、後者への揺るぎない確信があるからこそ、前者で困難に陥ってもブレも混乱もなく戦い続けることができた。大宮との決戦、最も大事な試合で最も困難な状況に直面しても、それは変わらなかった。
0対3になってからの、60分の姫野誠の投入。その17歳の姫野が試合の流れを変え、勝負を分ける同点ゴール(83分)を決めたことが、大きなセンセーションとして受け取られるのは当然のことではある。だが、それは、小林の奇策でも、クラブの将来を考えた未来への一石でもなく、3年間の積み重ねの必然の結果であり、選手たちもそれを当然と受け止めていたことは、改めて強調しておきたい。
徳島とのプレーオフ決勝。クラブの全存在とサポーターの思いを賭けた戦いに小林と選手たちは、ここまで培ってきたことへの自信と平常心で臨むのだろう。
他方、ショッキングな逆転負けを喫した大宮だったが、今後に向けての可能性は十分に感じさせた。何よりも攻撃が整備され、外国人たちの個の力を日本人選手も絡めたコンビネーションに昇華させたのは、宮沢悠生監督の功績であるといえる。ただ、監督に就任してからまだ2カ月とちょっと。千葉との違いは、チーム作りにかけた時間の違いに他ならなかった。来季以降に期待したい。
田村修一(たむら・しゅういち)
1958年千葉県千葉市生まれ。早稲田大学院経済学研究科博士課程中退。1995年からフランス・フットボール誌通信員、2007年から同誌バロンドール選考(投票)委員。現在は中国・体育週報アジア最優秀選手賞投票委員も務める。



