
【田村修一の視点】2025年11月22日 天皇杯決勝 FC町田ゼルビアvsヴィッセル神戸
天皇杯決勝 町田3(2-0)1神戸
14:02キックオフ 国立競技場 入場者数31,414人
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試合へのモチベーション、タイトルへのモチベーションで町田が神戸を上回った試合だった。
それはプレー強度の違いとなったピッチ上に現れ、藤尾翔太の先制点(6分)の後も強度を緩めない町田が、32分(相馬勇紀)にも追加点を挙げて試合の流れを決定づけた。後半も勝利を手繰り寄せる3点目(56分)を藤尾が決めると、その後は神戸の攻撃にも冷静に対処し、反撃は宮代大聖の1点のみ(62分)に抑えて、J1昇格2年目にして念願のメジャータイトル——J2優勝を除く——を獲得した。
高校サッカーで実績を築いた黒田剛監督は、そこで培ったさまざまなコンセプトをプロの世界に持ち込んだ。なかでもロングスローは、今や世界的な潮流となりつつある。そうしたものが、今後、世界のトレンドとどう噛み合っていくのか。ひとつの注目すべきところである。
一方、連覇を狙った神戸だが、この試合に向けて用意してきたものを悉く町田に凌駕され、ペースを完全に失った前半がすべてだった。後半のスタートから大迫勇也を投入して試合は拮抗したものの、流れを自分たちのモノにするまでには至らなかった。
神戸のようなチームですら、新たにタイトルを獲得するためには、つけ入る隙の無い周到な準備と、揺らぐことのない高いモチベーションが必要。マネジメントの難しさを痛感させられた試合だった。
これで今季は無冠が確定。巻き返しに期待したい。
田村修一(たむら・しゅういち)
1958年千葉県千葉市生まれ。早稲田大学院経済学研究科博士課程中退。1995年からフランス・フットボール誌通信員、2007年から同誌バロンドール選考(投票)委員。現在は中国・体育週報アジア最優秀選手賞投票委員も務める。



