
【六川亨の視点】2025年4月13日 J1リーグ第10節 FC町田ゼルビアvs浦和レッズ
J1リーグ第10節 町田 0(0-2)2 浦和
14:03キックオフ 国立競技場 入場者数44,363人
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昨シーズンは初のJ1で3位に躍進した町田の攻撃をどう封じるか。そのヒントとなる浦和の戦いぶりだった。まず守備ラインを低目に設定し、GKとの距離を空けすぎないようにした。町田の得意とするショートカウンター対策である。さらに両SBとMFとの連係から左右のポケットへの侵入を極力阻止した。この狙いは左サイドではほぼ完璧だった。ただ右サイドでは相馬直樹のドリブル突破を止めきれず何度か侵入を許したものの、身体を張ったシュートブロックでゴールは死守した。そして最大の特徴は、両サイドからのアーリークロスは上げられてもオーケーという絶対的な自信だ。町田にはオ・セフンという194センチの長身ストライカーがいる。さらに後半からはミッチェル・デュークという186センチのFWも投入した。しかし浦和のCBダニーロ・ボザとマリウス・ホイブラーテンはともに184センチ、さらにボランチのサミュエル・グスタフソンも187センチと空中戦を得意とする。単純なアーリークロスなら跳ね返せる自信があるからこその、低い守備ラインの設定だったのだろう。黒田剛監督も「高身長の選手をゴール前に集めていたので、もう1つ越えていかなかった」と敗因を口にした。このためゴール前で許したヘディングシュートは前半25分の西村拓真の1本だけ。さらにゴール前だけでなく、この日の浦和は空中戦で競り負けることなく制空権を握り続けた。
首位浮上の可能性もあった町田も、チャンスがなかったわけではない。オ・セフンのシュートはGK西川周作に、ミッチェル・デュークのボレーはSB石原広教にブロックされるなど、常に“赤い壁”に阻まれた。順位こそ7位に後退したが、今シーズンのJ1は過去に例を見ないほどの大混戦。勝点3で順位は大きく変動するだけに、それに惑わされず、目ざすスタイルを追求するべきだろう。
六川亨(ろくかわ・とおる)
東京都板橋区出身。月刊、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長を歴任し、W杯、EURO、南米選手権、五輪を取材。2010年にフリーとなり超ワールドサッカーでコラムを長年執筆中。「ストライカー特別講座」(東邦出版)など著書多数。