
【六川亨の視点】2025年4月12日 J1リーグ第10節 東京ヴェルディvsヴィッセル神戸
J1リーグ第10節 東京V 0(0-0)1 神戸
15:03キックオフ 味の素スタジアム 入場者数17,474人
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今シーズンはケガ人の続出とACLEによる連戦で黒星が先行し、16位と予想外の順位に沈んでいる神戸。しかしACLEはラウンド16で敗退したものの、ケガ人の復帰により東京V戦ではリーグ連覇の王者の復活を予感させる完勝を収めた。東京Vの城福浩監督が「球際の身体を入れる反応の早さ、強さで上回られた」と振り返ったように、フィフティーフィフティーのボールへは複数の選手が反応してルーズボールの回収に成功する。さらに前線からの連動したプレスと球際での強さに加え、マイボールはシンプルにワンタッチ、ツータッチで素早く前線につないで、東京Vのプレス、ボディーコンタクトを無力化。体力を消耗する余計な球際の競り合いも回避したのはさすがである。決勝点は後半6分、宮代大聖がドリブルでカウンターを仕掛けると、素早く左へ展開。パスを受けたエリキはGKと1対1だったが、シュートは選択せずに中央へ折り返す。すると汰木康也がゴールカバーのDFに当てながらも確実に決めて今シーズン3勝目をチームにもたらした。
ただ、敗れた東京Vにも勝機がなかったわけではない。木村勇大や交代出場の山見大登らがカウンターから決定機を演出したが、ゴールカバーに入った選手やGK前川黛也らのファインセーブに阻まれてノーゴールに終わり6試合ぶりの黒星を喫した。しかし神戸と同様、東京Vの攻守も序盤戦に比べてかみ合ってきている。「決定的なチャンスは作っているので全否定する必要はない」(城福監督)のも確かだ。そして「サッカーはどうしてもルーズボール、局面の戦いが多い。そこで球際の強さで負けていたら話にならないし、神戸さんとの差を埋めていかないといけない」と敗因も明確だ。大切なのは、両チームともこの試合の課題と収穫を次に生かすことではないだろうか。
六川亨(ろくかわ・とおる)
東京都板橋区出身。月刊、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長を歴任し、W杯、EURO、南米選手権、五輪を取材。2010年にフリーとなり超ワールドサッカーでコラムを長年執筆中。「ストライカー特別講座」(東邦出版)など著書多数。