
【六川亨の視点】2025年4月11日J1リーグ 第10節 FC東京vs柏レイソル
J1リーグ第10節 FC東京 1(1-0)1 柏
19:03キックオフ 国立競技場 入場者数43,813人
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今シーズン、柏の監督に就任したリカルド・ロドリゲス監督はポゼッションによるサッカーを標榜してチームを上位に導いている。しかし試合後には「ボールを支配する選手を選ぶと決定力に欠けるし、その逆の場合もあるのが難しいところ」とサッカーの奥深さを語った。その言葉通り、前半からボールを支配しながらゴールが遠い。後半の立ち上がりも同様で、後半から交代出場したFW木下康介がサイドに流れてチャンスを作っても、ゴールの予感は漂わなかった。一方のFC東京は、雨でスリッピーなピッチ状況を最大限に利用。タテへの速くて強いパス交換で柏ゴールに迫れば、左CB土肥幹太の正確なロングフィードから1トップの佐藤恵允の推進力を活かすなど、開幕当初に見られたポゼッション・サッカーからの転換を図って好機を演出した。そして前半35分、俵積田晃太の左クロスがCB田中隼人に当たってこぼれるところ、仲川輝人が押し込んで貴重な先制点を奪った。
優勢に試合を進めながら決定機をつかめない柏は、後半の終盤から木下の190センチの高さを活かした攻撃にシフトする。当然といえば当然の策である。これが90+4分、木下の貴重な同点ゴールにつながった。高さを活かしたゴールではないが、MF熊坂光希の右クロスに倒れ込みながら長い足で押し込んで同点に追いついたのだ。松橋力蔵監督は「最後、人がいるけどやられてしまった。今回だけじゃない。守備をしている時間が長かった。組織的な部分と個人の強度が必要」と課題を指摘した。しかし、23歳の岡哲平と木村誠二、20歳の土肥によるCB陣は試合を重ねるたびに成長を感じた。ようやくFC東京にも“新しい風”が吹きつつあることを実感せざるを得ない。この結果、柏は3位に、FC東京は17位に浮上したものの、稀に見る大混戦だけに毎節順位が変わる可能性が高い。いまは結果が最優先だろうが、それに一喜一憂せず降格ラインにいる松橋監督には自分自身の信じるチーム作りに専念して欲しい。
六川亨(ろくかわ・とおる)
東京都板橋区出身。月刊、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長を歴任し、W杯、EURO、南米選手権、五輪を取材。2010年にフリーとなり超ワールドサッカーでコラムを長年執筆中。「ストライカー特別講座」(東邦出版)など著書多数。