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【六川亨の視点】2025年3月1日 J1リーグ第4節 川崎フロンターレvs京都サンガF.C.
J1リーグ第4節 川崎 0(0-0)1 京都
15:03キックオフ Uvanceとどろきスタジアム by Fujitsu 入場者数22,404人
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川崎Fにしてみれば「もったいない試合」であり、京都からすれば「狙い通りの試合」と言える。立ち上がりの京都は長身FW原太智にロングボールを送ることで川崎Fを自陣に押し込んだ。しかし時間の経過とともに川崎FはミドルサードでMFパトリッキ・ヴェロンやボランチの橘田健人、河原創がワンタッチプレーで京都のプレスをかいくぐり、20分過ぎから試合の主導権を握った。ただし、押し込みながらも決定機をつかむことができない。これが試合の趨勢を決めたし、「もったいない試合」の由縁である。京都は後半4分、自陣での連動した粘り強いプレスから川崎Fの侵入を阻止すると、攻撃を組み立て直そうとした橘田のバックパスミスを誘発した。するとボールをカットしたFWラファエル・エリアスがドリブルで持ち込み、GKと1対1から最後は走り込んだ奥川雅也にパス。奥川は無人のゴールに流し込んで、J1初得点から京都に今シーズン初勝利をプレゼントした。
15年に京都でJ2にデビューした奥川にとっては、10年ぶりに古巣となる京都での初ゴール。曺貴裁監督は「選手(ラファエル・エリアス)の信頼がないと渡してもらえない。1点決めたことで、ゲストではなく京都の一員になれたかな」とアカデミー出身のドリブラーを称えた。京都は2分後にも交代出場の川崎颯太がスルーパスに抜け出すなど、カウンターから決定機を演出。その原動力となったのが、曺貴裁監督が信条とするハードワークと衰えない走力だ。結果としてイエローカード3枚と与えたFKは20本だったが、前節の神戸戦とは違い最後までゴールを死守して勝点3を獲得。そして今シーズン初黒星を喫した長谷部茂利監督は「京都のやりたいことを受けてしまった。京都の良さを出さしてしまった。もったいなかったな」と淡々と試合を振り返ったのだった。
六川亨(ろくかわ・とおる)
東京都板橋区出身。月刊、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長を歴任し、W杯、EURO、南米選手権、五輪を取材。2010年にフリーとなり超ワールドサッカーでコラムを長年執筆中。「ストライカー特別講座」(東邦出版)など著書多数。