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【田村修一の視点】2025年2月8日 富士フイルムスーパーカップ ヴィッセル神戸vsサンフレッチェ広島

富士フイルムスーパーカップ 神戸 0(0-1)2 広島
13:36 キックオフ 国立競技場 入場者数53,343人
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この試合に向けて新戦力も含め、プレシーズンキャンプで蓄え構築した力のすべてを発揮した広島と、怪我人を抱えながら3日後のACLに備えて主力を温存した神戸。試合に臨む両チームのスタンスの差がキックオフからハッキリと出て、終了まで続いた試合だった。

 

新戦力が融合し、昨年同様のプレーの強度と前線からのプレス、トランジション、攻撃での縦の流れるような連携を維持し続ける広島の完成度の高さは特筆に値する。外国人ふたりが抜けた穴は、ジャーメイン良やボランチの中島洋太朗など新戦力の力で十分に補っている。特に18歳の中島は、ミヒャエル・スキッベ監督も大きな期待を寄せるように、無限の可能性に溢れている。

 

問題は監督も認める選手層の薄さだろう。今年も昨年同様に、過密日程をターンオーバーすることなくほぼ固定メンバーで戦わねばならない。日本で4年目のシーズンとなるスキッベが、そこをどう対処してタイトル獲りに行くのかを注目したい。

 

他方、史上初となるJリーグ3連覇とアジア(ACL)初制覇を目指す神戸は、この日はすべての面で広島に後れをとったせいか、試合後の吉田孝行監督の表情は冴えなかった。ただ、神戸のプレーのクオリティが低かったかと言えばそうではない。広島との相対的な力関係で劣勢を強いられたが、どこに問題があり、何を修正しなければならないかは吉田監督自身が最もよくわかっている。怪我人が復帰しないままのシーズン突入は不安だが、連覇の間に培ったノウハウで、今季もJの主役として日本のサッカーシーンを盛り上げて欲しい。

 

 

 

 

 

田村修一(たむら・しゅういち)
1958年千葉県千葉市生まれ。早稲田大学院経済学研究科博士課程中退。1995年からフランス・フットボール誌通信員、2007年から同誌バロンドール選考(投票)委員。現在は中国・体育週報アジア最優秀選手賞投票委員も務める。