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【森雅史の視点】2024年5月15日 J1リーグ第14節 FC町田ゼルビアvsセレッソ大阪

J1リーグ第14節 町田 2(0-0)1 C大阪
19:03キックオフ 町田GIONスタジアム 入場者数6,546人
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情に流されない采配が決勝点を生んだ。

 

やや押し気味の町田に対してC大阪が鋭くカウンターで仕掛ける展開は、後半半ばまでスコアが動かなかった。だが町田は前半平河悠が走り回り、疲れが見え始めたC大阪の左サイドにナ・サンホを投入して突破させる。70分、そのナ・サンホが入れたクロスを中央でオ・セフンがゴールに蹴り込んで1-0とした。

 

だがその4分後、黒田剛監督はそのオ・セフンをミッチェル・デュークに交代させる。オ・セフン、ナ・サンホ、ミッチェル・デューク、エリキ、バスケス・バイロンと外国人枠の制限でベンチにすら入れなくなってもおかしくないFW争いの中、連戦で疲労の蓄積を避けるためとはいえ、選手としては出場時間を延ばし、さらに点数を積み重ねたかったところだろう。もっともミッチェル・デュークにしても今季まだ1ゴールと、すでに今季6ゴール目をオ・セフンが挙げるのをベンチから見て「モチベーションが上がっていた」。

 

しかし、守りに入った町田を逃がすほどC大阪は甘くなかった。迫力ある攻撃をみせると町田の守備は完全に後手に回った。そして82分、レオ・セアラの突破を止めようとしたチャン・ミンギュが転んだところにレオ・セアラが引っかかりC大阪がPKを得る。これを84分にレオ・セアラが決めると、土壇場で同点となった。

 

これで振り切れたのか、町田は再び前に推進力を見せ始めた。そして90+3分、左サイドで林幸多郎がボールを持つと、下田北斗が相手選手を惹きつけて縦に走る。それで出来た一瞬の間に林がクロス。これをミッチェル・デュークが「薄く当てるのが得意。髪の毛が短いから」というヘディングでゴールに流し込み、町田が劇的な勝利をつかんだ。

 

激しいポジション争いに、出た選手の焦りが見えることもある。だがこの日は、あえて交代させたことでミッチェル・デュークが守備だけではなく、ゴールという本来の仕事でチームに貢献できると証明する機会が生まれた。

 

 

 

森雅史(もり・まさふみ)
佐賀県有田町生まれ、久留米大学附設高校、上智大学出身。多くのサッカー誌編集に関わり、2009年本格的に独立。日本代表の取材で海外に毎年飛んでおり、2011年にはフリーランスのジャーナリストとしては1人だけ朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の日本戦取材を許された。Jリーグ公認の登録フリーランス記者、日本蹴球合同会社代表。2019年11月より有料WEBマガジン「森マガ」をスタート