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【森雅史の視点】2021年5月16日 J1リーグ第14節 川崎フロンターレvs北海道コンサドーレ札幌

J1リーグ第14節 川崎フロンターレ2(0-0)0北海道コンサドーレ札幌
15:03キックオフ 等々力陸上競技場 入場者数4,932人
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後半アディショナルタイムに小林悠が得点を挙げて、やっと川崎の選手は一息つけた。仙台戦に続いてこの日の終盤は相手の猛攻を何とか凌ぐという展開になった原因を小林は「ベンチから見ていて選手の疲れを感じていた」という疲労だと明かす。だが同時に「どう(試合を)終わらせるかが今のフロンターレのカギ」(小林)ということは時間帯得点分布に表れている。

15分単位で得点が生まれた時間帯を考えると、川崎は46分〜60分が8得点、61分〜75分までが7得点、76分〜試合終了までは7得点。つまりこの札幌戦で小林がゴールを挙げるまで、後半の凝り15分の得点が時間帯別では一番少なかった。だが残り15分が後半で一番得点が生まれやすい時間帯というのが11チーム(仙台、鹿島、FC東京、横浜FM、湘南、清水、名古屋※、C大阪、神戸、福岡、大分※)ある(※は他の時間帯と同数)。J1リーグが18チームになった2005年以降のデータを調べると、76分〜試合終了に生まれた得点が後半最多得点「ではなかった」チームは、J1在籍経験29チームのうち2つ(柏、徳島)だけ(長崎は他の時間帯と同数)。川崎も46分〜60分が192得点、61分〜75分が190得点、76分〜試合終了は244点と、終盤での得点力が高かったのだ。

つまり今年の川崎は連戦の疲労から終盤は守勢に回り凌いできたということだ。それでも失点数が2位タイということは、今年の川崎の強さは攻撃陣だけでなく守備陣の奮闘があるからと言えるだろう。

その守備陣の活躍で、札幌戦の1つのハイライトは60分、ゴール前のFKを防いだシーンだった。札幌のキッカーは福森晃斗。GKチョン・ソンリョンは細かな駆け引きをしていた。「ポジションが(最初は)真ん中より少し右に取っていたと思うのですが、それを少しだけ左に動きました。そこはキッカーも見ていたと思います。そこは壁と力を合わせました」。さらに、GKからキックの瞬間が見にくくはなるが、壁の後ろに味方選手を横たわらせて「ゴールの下には蹴れないというプレッシャーをキッカーに与える」ことができたという。その上で、「先に動かないことを意識しました」「最後までボールを見て反応できたと思います」と明かす。こういう積み重ねが川崎の強さになっている。

 

 

森雅史(もり・まさふみ)
佐賀県有田町生まれ、久留米大学附設高校、上智大学出身。多くのサッカー誌編集に関わり、2009年本格的に独立。日本代表の取材で海外に毎年飛んでおり、2011年にはフリーランスのジャーナリストとしては1人だけ朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の日本戦取材を許された。Jリーグ公認の登録フリーランス記者、日本蹴球合同会社代表。2019年11月より有料WEBマガジン「森マガ」をスタート