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【森雅史の視点】2023年10月8日 J2リーグ第38節 FC町田ゼルビアvsヴァンフォーレ甲府

J2リーグ第38節 町田 3(2-1)3 甲府
14:04キックオフ 町田GIONスタジアム 入場者数8,326人
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最後まで手に汗握る熱戦だった。

町田は3バックを敷いて積極的にボールを奪いに行った。選手間の距離もうまく整備されており、ダイレクトでボールが次々につながる。サイドをうまく使いながら、ときおりミッチェル・デュークの高さを生かして攻撃に変化を付けながら甲府を押し込んだ。

だが甲府はしたたかだった。しっかりと守りつつ、町田の守備の手薄なところを狙い続ける。26分、長谷川元希がアウトサイドでスルーパスを通すと、飯島陸がそのボールに反応し、落ち着いて先制点をねじ込んだ。すると試合の流れは一気に甲府ペースに。甲府の攻めは町田の網をかいくぐるようになり、次第に町田は押し戻されるようになった。

そんな雰囲気を一変させたのは藤尾翔太だった。37分、ミッチェル・デュークのクロスが甲府の選手に当たって目の前に転がってくると、倒れ込みながら体を反転させながらゴールに蹴り込んで同点とする。この一点で町田に活気が戻った。さらに41分、藤尾が左の翁長聖に渡すと翁長はダイレクトでゴール前へ。そのボールにスライディングしながら合わせたのは宇野禅斗。これがJ初得点とは思えないほど絶妙なゴールでついに町田がリードを奪った。

後半、町田は前半の勢いのまま攻め続ける。だが甲府は守りながらしたたかに反撃の時を待つ。前半からアグレッシブに守備を続けた町田の勢いが一段落した80分過ぎ、そのチャンスがやって来た。82分、甲府がゴール前にボールを運ぶが、町田の選手は人数がいるもののみんながボールに集まってしまう。そこを外から現れた関口正大がミドルシュートで間を抜き、甲府が追いついた。

もう町田にエネルギーはほとんど残っていなかった。パタリと足が止まってしまう。甲府はこの時とばかりに攻め立て続ける。そして90+2分、またもボールに多くの選手が集まってしまった町田をあざ笑うかのように、ジェトゥリオがゴール前からこぼれてきたボールをゴールに突き刺した。

最後の力を振り絞って、町田はパワープレーに賭けた。ゴール前にひたすらロブを入れる。甲府もしっかりとはね返し続けた。ところがもう残り時間もほとんどない90+7分、一度だけ甲府が綻びを見せた。ゴール前にフラフラと上がったボールをGKがはじき出そうとするもののボールは町田の選手に当たってゴール正面にこぼれた。そこに走り込んでいたのは、またも宇野だった。持ち出そうとしたボールは甲府のゴールに飛び込んでいく。土壇場での同点劇に場内の興奮は最高潮に達した。

ともに3点ずつを奪い、両者が勝点1を獲得する試合になった。甲府の試合の勘所を読む上手さと、町田の悲願の初昇格にかける思いがぶつかり合ったと言えるだろう。そして町田には、この日のようなチャレンジャーの姿がよく似合っている。

 

 

 

森雅史(もり・まさふみ)
佐賀県有田町生まれ、久留米大学附設高校、上智大学出身。多くのサッカー誌編集に関わり、2009年本格的に独立。日本代表の取材で海外に毎年飛んでおり、2011年にはフリーランスのジャーナリストとしては1人だけ朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の日本戦取材を許された。Jリーグ公認の登録フリーランス記者、日本蹴球合同会社代表。2019年11月より有料WEBマガジン「森マガ」をスタート