J論 by タグマ!

【六川亨の視点】2023年8月18日 J1リーグ第24節 浦和レッズvs名古屋グランパス

J1リーグ第24節 浦和レッズ1(1-0)0名古屋グランパス
19:34キックオフ 埼玉スタジアム2○○2 入場者数32,578人
試合データリンクはこちら

 

当り前のことだが、サッカーはパスの本数やボールポゼッションの割合を競うスポーツではない。勝敗は単純で、ゴールに成功したかどうかで決まる。しかしそれが簡単ではないから監督は苦労するし、異能の才を持つ「ストライカー」にはどのクラブも、とりわけここ数週間はサウジアラビアの4クラブが高額のギャラを支払って集めている。

浦和対名古屋の試合は、その「ストライカー」がいるかどうかが明暗を分けた。前半11分、明本考浩の左クロスはペナルティーエリア内でゴールを背にしていたホセ・カンテの後方、自陣よりのグラウンダーだった。これをカンテは自陣に戻るよう反転しながら右足のワンタッチシュートで決めた。GKランゲラックにすれば意表を突かれたシュートであり、DFのブラインドにもなっていたのか、名手がまったく反応できない一撃だった。今シーズン、16試合で5ゴールと調子を上げているストライカーに、マチェイ・スコルジャ監督が「好調を示すように、早い時間帯にいい点をとることができた」と満足げな表情を見せれば、長谷川健太監督は「シュートを褒めるしかない。ああいうタイミングで打ってきた」と脱帽していた。

対する名古屋は、8月2日の天皇杯で浦和から先制点を奪い、今シーズン20試合で4ゴールのマテウス・カストロがサウジアラビアへ移籍。2点目を決めたキャスパー・ユンカー(リーグ戦は22試合で11ゴール)は契約上(期限付き移籍のため)浦和戦には出場できない。そこで3トップの中央を任されたのは酒井宣福だったが、今シーズン19試合出場0ゴールの酒井はシュートを1本も打つことなく前半で退いた。ベンチには今夏にFCユトレヒトから獲得したスピードスターの前田直輝、札幌から移籍した188センチの長身FW中島大嘉もいたが、前者はここまで2試合出場、後者は10試合出場も0ゴールだ。長谷川監督は「キャスパーがいたら決めてくれたかどうか分からないが、いないから取れないと言ったら情けない」と庇ったものの、契約上、使えないだけに割り切るしかなかったのだろう。

名古屋は前半に野上結貴、ワンサイドゲームの後半は前田、森下龍矢、久保藤次郎がGK西川周作と1対1の決定機を迎えたものの、野上と久保のシュートはゴール枠を捕らえられず、前田のシュートはGK西川にブロックされ、森下もクロスバーに阻まれた。堅守を誇る浦和とはいえ、これだけ決定機を外していては敗戦も順当な結果と言わざるを得ない。

 

 

 

六川亨(ろくかわ・とおる)

東京都板橋区出身。月刊、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長を歴任し、W杯、EURO、南米選手権、五輪を取材。2010年にフリーとなり超ワールドサッカーでコラムを長年執筆中。「ストライカー特別講座」(東邦出版)など著書多数。