【森雅史の視点】2023年5月21日 J2リーグ第17節 FC町田ゼルビアvs清水エスパルス
J2リーグ第17節 町田 2(1-1)1清水
14:03キックオフ 町田GIONスタジアム 入場者数10,444人
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もし清水のファンなら、この試合は前半だけを見返して後半は忘れるべきだろう。そして清水のファンではなく、この試合を見ていない人がいたらDAZNでフルタイムを見ることをお勧めしたい。今季取材したゲームの中でもトップクラスのドラマが詰まっていた。町田GIONスタジアムの最高入場者数と、町田のホーム200点目が決勝点というサイドストーリーもあり、どう切り取ってもまるで先に書かれたシナリオがあるかのようなゲームになった。
個人に注目しても楽しめる。乾貴士の1人次元の違う判断力はそれだけでも試合を面白くした。町田FWエリキは何度も快足を飛ばして突破したが、それを清水DF高橋祐治らが必死にカットするプレーも迫力満点で、常に手に汗握る場面を繰り広げていた。前半の激突、町田DF池田樹雷人vs清水FWオ・セフンは迫力満点で、お互いに100パーセント以上の力で戦っているのがよく分かるぶつかり合いを見せる。その池田が負傷し、交代選手の準備が遅れている間に同点に追いついた清水の試合の勘所のつかみ方と清水MF中山克広の落ち着きはさすがだった。
采配の妙も随所にあった。愚直に相手のボールを追いかける町田の迫力は首位に君臨するチームというよりチャレンジャーそのもの。その相手をいなしながら華麗にパスをつなぐ清水は最後まで美しさを追求した。同点で迎えた後半、清水は何としてもゴールを奪うべく中盤をダイヤモンド型にして攻撃に出ようとする。その清水を少しずつ疲労させ、相手に疲れが見えたところで町田が一気に勝負に出るが、ポストに当たったり権田修一の好セーブに阻まれる。それでも最後は町田DFチャン・ミンギュが蹴り込んで決勝点を奪った。失点の少なさから「守備のチーム」と思われている町田がそこまで攻め込んだところに黒田剛監督流の冷静な計算が現れていた。
ここまで絶賛してきたが、だからと言ってミスが少なかった試合ではない。だが、それでも見ている人たちの心を大いに揺さぶることはできたはずだ。
森雅史(もり・まさふみ)
佐賀県有田町生まれ、久留米大学附設高校、上智大学出身。多くのサッカー誌編集に関わり、2009年本格的に独立。日本代表の取材で海外に毎年飛んでおり、2011年にはフリーランスのジャーナリストとしては1人だけ朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の日本戦取材を許された。Jリーグ公認の登録フリーランス記者、日本蹴球合同会社代表。2019年11月より有料WEBマガジン「森マガ」をスタート