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【六川亨の視点】2023年5月14日 J1リーグ第13節 鹿島アントラーズvs名古屋グランパス

J1リーグ第13節 鹿島アントラーズ2(1-0)0名古屋グランパス
13:35キックオフ 国立競技場 入場者数56,020人
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3位につける名古屋に対し、無失点の4連勝で5位に浮上してきた鹿島。30年前の5月16日、Jリーグ開幕戦と同じカードは「Jリーグ30周年記念スペシャルマッチ」と銘打って国立競技場で開催されたが、正直、稀に見る凡戦だった。名古屋のサイドアタッカー内田宅哉と森下龍矢は、鹿島のサイドハーフ仲間隼人と名古新太郎に封じられて前半は何もできず。チームとしてもミスパスが多く、とても3位につけているチームとは思えなかった。

一方の鹿島も、名古屋FW永井謙佑やキャスパー・ユンカー、マテウス・カストロのドリブル突破を警戒してか、4BKは深く引いて守り、守備ラインを押し上げることはしない。攻撃は自陣からのロングパスを、名古屋の22歳と若い左DF藤井陽也の守るスペースに出して、FW鈴木優磨や垣田裕暉とマッチアップさせるクラシカルなスタイル。「鹿島伝統のスタイル」と言えば聞こえはいいが、そこからの脱却を図ってここ数シーズンは悪戦苦闘してきたのではなかったか。

決勝点は樋口雄太の右CKを鈴木がファーサイドでフリーとなってヘッドで決めた。鈴木は前半12分にも樋口の右CKに後方から走り込んで鮮やかなジャンプヘッドを決めたが、樋口がキックする前にペナルティーエリア内で鹿島の反則があったとして、VARと主審のオンフィールドレビューの結果ノーゴールとなっていた(反則はアウトオブプレーだったため、名古屋のFKではなく鹿島の右CKで再開)。取り消されたとはいえ、2度も同じ選手にヘディングシュートを決められたのは、「マークが甘い」と指摘されても仕方ないだろう。

名古屋はCK時にゾーンディフェンスを採用しているため、後方から走り込んだり、ファーに流れて待機したりしている鈴木をマークできなかった。鈴木は天性の嗅覚があるストライカーなのだから、やはりマンマークとゾーンの併用で抑えるべきではなかったか。2失点目もFW知念慶のシュートはGKランゲラックがスーパーセーブを見せたのに、こぼれ球をクリアせず無理してつなごうとして引っ掛けられ、知念にゴールを許した。ミスからの連続失点に、GKランゲラックが怒りを露わにしたのは当然だった。

 

 

 

六川亨(ろくかわ・とおる)

東京都板橋区出身。月刊、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長を歴任し、W杯、EURO、南米選手権、五輪を取材。2010年にフリーとなり超ワールドサッカーでコラムを長年執筆中。「ストライカー特別講座」(東邦出版)など著書多数。