【六川亨の視点】2023年5月12日 J1リーグ第13節 FC東京vs川崎フロンターレ
J1リーグ第13節 FC東京2(2-1)1川崎フロンターレ
19:34キックオフ 国立競技場 入場者数56,705人
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FC東京にとっては、「長いトンネルをようやく抜け出した」といったところか。リーグ戦は2018年5月5日の第13節で2-0と勝って以来、1分け8敗で直近まで7連敗を喫していた。そんな“天敵”に5シーズンぶりの勝利を収めたのだから、FC東京のファン・サポーターにとって「Jリーグ30周年記念スペシャルマッチ」となった多摩川クラシコは、試合前のアトラクションも含めて特別な一日になったかもしれない。
試合は左SB徳元悠平の個人技によるゴールと、ディエゴ・オリヴェイラが起点となったショートカウンターから2-1とリードして前半を折り返す。ただ、ボール支配率では川崎Fが上回っていた前半だった。勝負の分かれ目となったのは後半5分のプレーだった。MF脇坂泰斗のFW仲川輝人へのタックルで、西村雄一主審はFC東京にFKを与えた。ところがここでVARが介入し、オンフィールドレビューの結果、西村主審は脇坂にレッドカードを提示した。場内のオーロラビジョンによるリプレーでも、脇坂のタックルは足が高く上がっていて、足裏も見えている。ただ、それほど強い力ではなかったので、西村主審も最初はカードを提示しなかったのだろう。
ボールポゼッションを得意とする川崎Fが1人少ないハンデ、しかも豊富な運動量で攻守に貢献するキャプテンを欠いたのは痛手だった。それでも鬼木達監督は、5枚の交代カードを次々と切って中盤と前線の選手全員を入れ替える。すると試合終盤はFW遠野大弥が2度の決定機をつかむなどFC東京を攻め立てた。「彼らは勝っても負けてもスタイルを貫いている完成されたチーム」(アルベル監督)と言ってしまえばそれまでだが、ベンチにはMF大島僚太や橘田健人ら攻守に貢献できる中盤の人材が豊富だ。対するFC東京は個人技によるカウンター主体のチームのため、ベンチにもアダイウトンやペロッチ、俵積田晃太らFWの人材は多いものの、中盤の選手は塚川孝輝しかいない。このため疲弊していても東慶吾や小泉慶、安部柊斗を引っ張らざるをえなくなり、最後は守備ブロックを下げて耐えるしかなかった。
連敗をストップしたFC東京だったが、5シーズンも勝てなかった理由が改めて浮き彫りになった両チームのベンチワークと言える。
六川亨(ろくかわ・とおる)
東京都板橋区出身。月刊、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長を歴任し、W杯、EURO、南米選手権、五輪を取材。2010年にフリーとなり超ワールドサッカーでコラムを長年執筆中。「ストライカー特別講座」(東邦出版)など著書多数。