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【六川亨の視点】2023年5月7日 J1リーグ第12節 川崎フロンターレvsサガン鳥栖

J1リーグ第12節 川崎フロンターレ1(0-0)0サガン鳥栖
15:03キックオフ 等々力陸上競技場 入場者数17,674人
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GK朴一圭とCB山﨑浩介、田代雅也に加え、ダブルボランチの河原創、森谷賢太郎らで自陣からていねいにビルドアップして攻撃を組み立てようとする鳥栖。川井健太監督の意図を体現しようと選手らは奮闘した。しかし攻撃の組み立てはほとんどが河原を経由してからなのでスピードが上がらない。カウンターは後半10分にMF本田風智が単独ドリブルで仕掛けた1回だけ。ダブルボランチに蓋をされるとCBやGKに戻してから攻撃を再構築しなければならないのはもったいなかった。

ただ、川井監督は「今日に関して言えばスピーディーさが足りなかった。川崎もうまく守っていたが、そこをかいくぐれなかった。人のスピード、判断のところのスピードを上げたい」と指摘したように課題は明確だ。中2日でアジア王者の浦和に挑むが、堅守をこじ開けられるか注目したい。

対する川崎Fは、鬼木達監督が「Jリーグのホームゲームでずっと勝てなかったので、今日のゲームは勝ちにこだわった中で、選手はしっかりといい結果を残してくれた」と開口一番指摘したように、ホーム等々力で6試合目にして今シーズン初勝利を奪った。効果的だったのは「前半も流れは悪くなかったが、速い攻めが多く、1つの狙いでもあったが、もう少しボックスの付近、崩しのところで人数をかけたり、相手の足を止めたかった」と鬼木監督が説明したように、後半開始からMF大島僚太を投入したことだ。前半はボランチのジョアン・シミッチの展開からマルシーニョが快足を飛ばして決定機を演出した。これはGK朴一圭に防がれたが、マルシーニョのカウンターだと散発攻撃になりやすい。そこで大島を起用することで、パスを出し入れすることにより厚みのある攻撃を仕掛けられるようになった。

これで川崎FはGWの3連戦を3連勝で終え、順位を6位まで上げてきた。前節の京都戦(1-0)では大島のクロスからFW小林悠が決勝点を決めるなどケガ人も徐々に戻りつつあるだけに、今後は優勝戦線に浮上してくるかもしれない。

 

 

 

六川亨(ろくかわ・とおる)

東京都板橋区出身。月刊、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長を歴任し、W杯、EURO、南米選手権、五輪を取材。2010年にフリーとなり超ワールドサッカーでコラムを長年執筆中。「ストライカー特別講座」(東邦出版)など著書多数。