【六川亨の視点】2021年5月1日 J1リーグ第12節 FC東京vs横浜F・マリノス
J1リーグ第12節 FC東京0(0-1)3横浜F・マリノス
14:03キックオフ 味の素スタジアム 入場者数0人
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4都府県に出された緊急事態宣言によりリモートマッチ(無観客試合)となったFC東京対横浜M戦。昨シーズンは点の取り合いとなった両チームの対戦(FC東京3-2横浜M、横浜M4-0FC東京)は、今シーズンも予想通りゴールラッシュとなった。
過去の対戦では、ボールを握って厚みのある攻撃を仕掛ける横浜Mに対し、FC東京はショートカウンターで対抗するというのが、“ポステコグルー監督対長谷川監督”のポリシーの図式でもあった。
ところが今シーズンの第1ラウンドは、横浜Mが鮮やかなカウンターからゴールを重ねた。まず前半7分、右SB松原とのワンツーで右サイドを抜け出したエウベルが、カバーに入ったCBジョアン・オマリをスピードで抜き去ってクロス。これをフリーのオナイウ阿道がワントラップ後に押し込んだ。
2点目は後半7分、MFマルコス・ジュニオールのワンタッチパスにまたもエウベルが快足を飛ばして右サイドを攻め上がりクロス。これが並走した左SB小川の足に当たってコースが変ったことでCB渡辺剛の予測は外れ、オナイウ阿道がフリーで決めた。
そして3点目は森重のパスをインターセプトしたCBチアゴ・マルチンスからマルコス・ジュニオール経由で左ペナルティーエリア内のエウベルに渡ると、エウベルのシュートはGK波多野にブロックされたものの、こぼれ球をオナイウ阿道が難なく決めてハットトリックを達成した。反撃しようと前掛かりになったFC東京の裏をかく、鮮やかな「ファストブレイク」だった。
では、なぜ横浜Mはショートカウンターからゴールを重ねることができたのか。それは試合後のスタッツからもわかる。FC東京が獲得したFKは直接が16本、間接が2本の計18本だ。これに対し横浜Mは5本と1本の計6本しかない。
これが意味するところは、ミドルサードでの横浜Mの守備の強度であり、わかりやすく言うなら横浜Mは警告を受けない程度に巧妙な反則でFC東京の攻撃を止めまくった。とりわけ前線3選手のプレスに加え、FC東京にカウンターを許さなかったボランチの扇原と喜田の粘り強い守備は効果的だった。
「いい攻撃は、いい守備から」とはよく言われるが、それを実践しているのがいまの横浜Mと言えるだろう。
六川亨(ろくかわ・とおる)
東京都板橋区出身。月刊、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長を歴任し、W杯、EURO、南米選手権、五輪を取材。2010年にフリーとなり超ワールドサッカーでコラムを長年執筆中。「ストライカー特別講座」(東邦出版)など著書多数。