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【六川亨の視点】2022年5月4日 J2リーグ第14節 東京ヴェルディvsベガルタ仙台

J2リーグ第14節 東京V 3(1-1)1 仙台
14:03キックオフ 味の素スタジアム 入場者数12,521人
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第8節では2位まで浮上した東京Vだったが、その後は1分け4敗で昇格圏外の7位まで後退した。そして迎えた5月4日の第14節、相手は3連勝で2位に浮上した仙台である。昇格争いに踏みとどまるためには負けられない一戦だったが、FW新井瑞希が2ゴールに絡む活躍から仙台を3-1で下してプレーオフ圏内の6位に復帰した。

前半の東京Vは4-3-3の布陣から、右FWの新井と左FW杉本竜士がワイドに開いて幅を取り、CF佐藤凌我の両サイドのスペースにインサイドハーフの梶川諒太と森田晃樹が飛び出すことで仙台ゴールに迫った。そして開始3分には杉本の左クロスに森田がヘッドで合わせて先制点を奪う。佐藤をダミーに、背後から飛び込んだ森田の、身長167センチとは思えない打点の高いヘディングだった。

しかし仙台もすぐさま反撃し、FWフェリペ・カルドーゾがドリブル突破で粘ると、FW皆川佑介のシュートはバーに嫌われたが、跳ね返りをMF名倉巧がボレーで押し込んでタイスコアに戻した。

そして後半を迎えるにあたり、堀孝史監督は杉本に代えてFWバスケス・バイロンをピッチに送り出す。バイロンを右FWに入れ、新井を左FWにコンバートしたが、これがズバリ的中した。新井は得意のドリブル突破で仙台の右サイドを蹂躙。味方がサポートに来てもお構いなしに、2~3人がかりのマークでもタテへの突破を図る。16分にマークを完璧に外してのクロスはニアでブロックされ左CKに変わったが、18分の突破は佐藤のボレーによる決勝点に結びつく。さらに40分、スローインを受けるとワンタッチでマーカーの股をぬいてクロス。これは中央の佐藤と合わなかったものの、右サイドで待ち構えていたバイロンが落ち着いてワントラップからダメ押しの3点目を決めた。

敗れた仙台の原崎政人監督は、2失点後に右SB加藤千尋に代え真瀬拓海を送り出した采配について、「自分の交代が遅れた。もう少し早く交代しておくべきだった」と悔やんだが、それでも新井のドリブルを止められたかどうか保証はない。それほどキレキレの、左サイドでの新井だった。

 

 

 

六川亨(ろくかわ・とおる)

東京都板橋区出身。月刊、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長を歴任し、W杯、EURO、南米選手権、五輪を取材。2010年にフリーとなり超ワールドサッカーでコラムを長年執筆中。「ストライカー特別講座」(東邦出版)など著書多数。