トーキョー、リーグ優勝へのラストピース!? ピーター・ウタカをどこで使うのか?
豊富なタレントを要する攻撃陣の中で、昨季得点王の起用ポジションはどこになるのか。FC東京の番記者である後藤勝氏が迫った。
(C)後藤勝
▼起用ポジションの可能性
ピーター ウタカがやってきてしまった。これで現在のFC東京には大久保嘉人、前田遼一とあわせて3人のJ1得点王が在籍していることになる。しかし3人が同時にピッチに立つことはあるのだろうか? 基本のフォーメーションは[4-2-3-1]で、純粋なFWのポジションは一つ。前田ですら後半のカードになっているこのチームの、どこにピーター・ウタカを置くべきなのか。篠田善之監督も頭を悩ませていることだろう。
まったくシステムを変えないという前提であれば、ピーター・ウタカが出場するためには、大久保嘉人をベンチに追いやって1トップの座を奪うしか手はないだろう。サイドハーフの1枚にFW的な役割を与えるなら、大久保嘉人を1トップに置いたままピーター・ウタカがそのサイドの一枚に据えられる可能性はあるが……。昨季から今季にかけての篠田監督のチームで言えば、ムリキや中島翔哉が入ったときの左サイドハーフはそういう性格のポジションになっている。また、監督は違えど、かつて岡元勇人、鏑木享、小林成光、福田健二、阿部吉朗を同じ左サイドハーフで起用している”前科”がこのチームにはある。あり得なくはない話だ。
もちろん、ピーター・ウタカと大久保嘉人を共存させるべく、トップの解釈を変えていく選択肢もあり得る。この場合、2トップでもいいし、どちらかがトップ下になってもいい。
もしも大胆なアレンジを加えるなら、前田を軸にした前線を構成していくと面白い。もともと前田と大久保嘉人のコンビは、キャンプの段階からテストを重ねてきている。長身の前田が1トップ、大久保嘉人がトップ下なら噛み合わせもいい。ターゲット不足で苦しむのは前田が先発にいないからで、前田を1トップにすればクロスに対するヘディングにしろ、ポストプレーにしろ、有効な手になる。そしてその傘の下で、ピーター ・ウタカと大久保嘉人が裏に出てゴールを奪えばいい。
その場合、基本的にはトップ下のポジションをピーター・ウタカと大久保嘉人で奪い合うわけだが、さらに構想を進めて3人の3トップにすることもできる。1トップ2シャドーにしろ、1トップ2ウイングにしろ、前田を中央に置いたまま二人が動き、あるいは角度を付けてゴール方向に入っていくことで、決定機が生まれやすくなるはずだ。
ただ、サッカーはフィニッシュだけでもなければ、裏を取る仕掛けや、チャンスメークだけでもない。前線からのプレスやセカンドボールの奪い合いもあれば、ビルドアップもある。トータルで考えたときに、FWの専門職を3人同時に起用することでのデメリットもあるだろう。ましてここまでのFC東京は、前線からプレッシャーをかけていき、それができなくなったときに後方に下がってブロックを作る、あるいは押し込めるとみれば主体的な攻撃に打って出るという、守備ベースのサッカーで2連勝の結果を残しているのだ。あくまでも攻守のバランスを堅持しながらチーム作りを進めていくのであれば、ピーター・ウタカの起用には、ある程度慎重にならざるを得ない。
▼目標からの逆算
もっとも、焦る必要はないのかもしれない。長期的に考えるのなら、ピーター・ウタカが在籍していることはFC東京にとってプラスになる。例えば、仮に今夏のウインドーで売れてしまう選手が出現したとき、戦力ダウンに慌てなくて済む。
今回の移籍が期限付きとなった背景には、かかわったクラブの資金面の問題があるようだ。少なくともヴィッセル神戸のポドルスキー獲得ほどのコストがかかっているわけではなく、焦って元手を回収しなくとも、シーズンを通して戦力になっていけばいい。試合を重ねればチーム状況も先発メンバーも変わってくる。悩む間もなく使う日が来ることもあるだろう。
残留にも苦労するほど勝ち点のないチームが救世主を待ち、一刻も早く実戦に投入しようとするのとはわけが違う。FC東京の目標はリーグ優勝。ピーター・ウタカの役割は、チャンピオンの座に就くためのラストピースになることだ。大一番で必要とされるときが来たら、ゴールなりチャンスメークで、この選手は必ず仕事をする。今はその重要な瞬間を、ひたすら待ちわびていよう。
後藤 勝(ごとう・まさる)
サッカーを中心に取材執筆を継続するフリーライター。FC東京を対象とするWebマガジン『トーキョーワッショイ!プレミアム』を随時更新。著書に小説『エンダーズ・デッドリードライヴ 東京蹴球旅団2029』(カンゼン刊)がある。