J論 by タグマ!

Jユニ女子会の活動が大好きなクラブ、大好きなJリーグのためになればいいなと思っています

J論では定期的なシリーズ企画として、Jユニ女子会のメンバーにインタビューを敢行し、Jリーグの新規ファン層拡大のために、私たちができることを検証していく。

J1リーグの2ステージ制導入など、近年のJリーグは新規ファン層の開拓に向けて積極的に取り組んでいる。しかし、満員の観衆で埋まる日本代表の公式戦と比べて、まだまだJリーグの動員力にはさまざまな課題が残っている。新規層に響くJリーグの魅力とは何か。その女性的視点で、女性ファン拡大の取り組みを続けている団体が『Jユニ女子会』だ。J論では定期的なシリーズ企画として、Jユニ女子会のメンバーにインタビューを敢行し、Jリーグの新規ファン層拡大のために、私たちができることを検証していく。第1回は主宰者の二人が前編と後編の2回シリーズで登場する。

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第1回主宰者対談
木下紗安佳さん(浦和レッズサポーター)
幸菜さん(大宮アルディージャサポーター)

▼「サッカーを語る女子会」がいまや400人超え
ーーJユニ女子会のメンバーは現在、何名ほどいらっしゃるのでしょうか?
木下「もうすぐ400名に到達します」

幸菜「メンバーは各地方にも散らばっていますが、関東圏に集中していますね」

ーーJユニ女子会のそもそもの成り立ちを聞かせてください。
幸菜「最初は周りにJリーグの話をできる同世代の女友達がほとんどいなくて、もともと別のきっかけで仲良くなった木下さんと、埼玉サッカーファン同士ということでよくサッカーについて話していました。そこで、他にも同じように女性サッカーファン仲間が周りにいないという子は意外と多いのでは?と思い、『たしかあの子もJリーグ好きだったよね?』という感じで共通の友達を紹介し合って、たった5名で普通にサッカーを語る女子会をするようになったんです。

それぞれユニフォームを着て語っているだけなのですが、その様子をSNSで発信するようになると、『私も入りたい!』とまったく知らない人からコメントが付くようになりました。それで、『他にも仲間を集めて女性サポーターの仲間を増やしてみんなで盛り上がろう!』という気楽なノリで『Jユニ女子会』と名付けて活動を始めました」

木下「それが今年の1月下旬でした」

幸菜「いざ始めてみると、サポーターはもちろんメディアの方からの反響もあり、女子サポーターが集まって盛り上がっている様子を楽しそう! と思ってくれる人が一人でも増えればいいなと、Webでメンバー登録フォームやブログを作りました。Jユニ女子会の活動を通じて、Jリーグに興味のない女性にもクラブを知ってもらったり、日本の女性サッカーファンが少しでも盛り上がるきっかけになればいいなと思ったんです。最初は『1年で100人ぐらい集まればいいよね?』と話していましたが、いまや400人を超えました!」

木下「増えるの、早かったぁ」

ーー定期的な活動内容を具体的に教えてください。
木下「現在は3カ月に一回か、間隔が空けば半年に一回ほどのタイミングで、Jユニ女子会主催のイベントをやっています。それがメインの活動にはなるのですが、毎週末公式戦があるので、Facebookの非公開グループで『次の●●戦行く人がいれば、会いましょう』とか、『一緒に観戦する人募集』という書き込みをメンバーが自由にし合って、対戦チームの女子サポが集まって写真を撮ったり……といったアクションなどが各試合で増えてきています。メインの大きなイベントは来月の忘年会で7回目になります。そのほかに最近では、東京以外のエリアでもメンバーが地方開催を企画してくれたり、全国でコミュニティが広がっています」

幸菜「最初は私たちが5人、10人と友達同士の輪を広げていったように、サポーター仲間を増やす良い機会になればいいなと思っています。SNSやリアルコミュニケーションの取れる機会づくりがメインの活動ですね。メンバーのみんなで集まったときの様子をSNSなどで「#Jユニ女子会」を付けて発信したりして、楽しさをシェアし合っています」

木下「私にとっては昨年は一人で観戦していたので、女子と観戦できたりアウェイゲームに行けたりと、ウソのような今シーズンでした」

ーーもともとの大きな動機は、女子の観戦仲間を増やしたい、だったと。
幸菜「男性だとサポーター仲間がいますし、確かにスタジアムへ行けばサポーター仲間はいますが、日頃から移籍情報があったときに『誰かに聞いてほしい!』と思っても、そういう仲間がいなかったり、SNSでサッカー関連のことをアップしても、『だから何?』という空気があったりするじゃないですか」

木下「『楽天がバルサのスポンサーになった』くらいのニュースじゃないと、『何?』みたいな(笑)」

幸菜「女性は男性に比べて”共感欲”が強いですし、もともとみんなで集まって写真を撮りたいという女子会的コミュニケーションを好む人も多いので、一緒にサッカーを楽しんでくれる仲間が一人でも増えたらいいな、という気持ちで活動しています。周りに巻き込む人を増やすことで、そういえば開幕当初Jリーグを観に行ったことあったなとか、サッカーに興味はあるけれど、観戦に行くきっかけがなかったという人を掘り出す良いきっかけにもなっています。

あとは単純にメンバーのみんなは本当にそれぞれのクラブのことが大好きなので、やっぱり一人でも多くの方に自分が愛するクラブのことを知ってもらいたいじゃないですか。例えば、サッカーに興味のない人には馴染みがないようなチームでも、『何だか楽しそうだな』とか、サッカーをあまり知らない人にも知ってもらいたいですし、Jユニ女子会の活動が大好きなクラブのためになればいいなと思っています」

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▼玉田と闘莉王しか知らなかったのに……
ーーそもそもお二人がサッカーを好きになったきっかけを教えてください。
幸菜「私が小学生のときにJリーグが始まったのですが、当時は休み時間も放課後も男女が混ざってサッカーで遊んでいたり、クラブ活動も女子サッカークラブに入っていました。そういう意味では昔からサッカーには馴染みがありました。ただ、なかなかJリーグを観に行くきっかけがなかったのですが、初めてJリーグをスタジアムで見たきっかけは、幼馴染の大宮サポーターに誘われて見に行ったという気楽なものでした。しかも、いきなり最初にゴール裏へ行ったんです。

でも、サポーターは怖いというイメージがありましたし、いきなりそんなホットゾーンに入っても、チャントは分からないし、『怒られたらどうしよう……』と思っていたのですが、大宮のサポーターはみんなすごく優しかったんです。

チャントが分からなくてもノリ方を教えていただきましたし、ほかの大宮サポーターがその日からtwitterで絡んでくれるようになりました。『なんて温かな場所なんだ、ココは!』と、大宮サポーターが作り出す雰囲気が好きで、大宮アルディージャというクラブまで好きになってしまったのです。それが2011年ホームでの名古屋(グランパス)戦です」

ーーその瞬間、大宮に恋してしまったと(笑)。
幸菜「それまでも何度か誘われていたのですが、『むしろ、浦和じゃないの?』と最初は実はまったく興味がなかったんです。アルディージャの選手は誰一人知りませんでした。そのとき、NACK5のピッチに立っている選手で知っているのは、玉田と闘莉王だけでした(笑)」

ーーちなみに木下さんがサッカーを好きになったきっかけは?
木下「私が一番初めにサッカーに触れたのはJリーグが開幕した時期です。Jリーグ開幕の翌日は学校中がJリーグ一色でしたが、地元の浦和レッズは全然勝てなくて(笑)、新聞屋さんがくれたチケットで見に行ったのが初めての試合でたしか駒場スタジアムでのコンサドーレ札幌戦でした。

スタジアムに行けば、レッズのサポーターの声援が耳に残るし、ずっと結果などは追いかけていたのですが、大学生のときに大分トリニータやジュビロ磐田がすごく好きな友達がいるぐらいで、そこまで深くはハマらなかったんです。

でも、浦和のファッションビルで勤務しているときに、リーグ優勝が懸かった最終節の日には逐一情報が流れてきたり、お客さんも『長谷部が、伸二が』とよく話していたので、地元にレッズは根付いているんだなと思うことは多かったです。

でも、なかなかサッカー観戦に興味がある友達がいなかったので、ガンバ大阪戦やサンフレッチェ広島戦など、お客さんがたくさん入る話題性のある試合くらいしか友達を誘えず年間3~4試合くらいの観戦といった年が何年か続きました」

ーー例えば浦和と大宮はさいたまダービーのライバル関係にありますが、Jユニ女子会と言えども、他サポ同士でのライバル関係はどうなのでしょうか?
幸菜「めっちゃありますよ」

木下「さすがに試合終わりとその次の日は連絡しなくていいかなぁとか。ちょっと今日だけは凹ませてください。連絡しなければならないことがあるけど、明日連絡します、みたいな(笑)」

幸菜「浦和に対して、めっちゃくちゃライバル心はありますが、大宮の立場からすると、浦和があるから大宮のモチベーションも上がるんです。大宮サポーターの一番の特徴は、家族のような温かさをみんなが持っていることだと個人的に思っていますが、そんないつも温かな大宮サポがみんなで一丸となって熱くなれるシチュエーションが、浦和とのさいたまダービーです。自分たちが熱くなれるパワーが出てくるのは、浦和レッズが存在しているおかげです。でも、私たちJユニ女子会のメンバーは、試合結果を踏まえて、対戦相手に対しての攻撃はしません」

木下「たまに言うこともありますけど(苦笑)、お互いに笑い合えることだったり、審判についてだったり、基本相手チームのことを悪口を言い合うようなことはありません」

幸菜「何かを言うにしても笑顔で言える感じだよね」

木下「鹿の角、折ってやるぜみたいなね(笑)。実際に対戦するメンバーと試合前日などに連絡を取り合いますが、『お菓子を持って行くから、勝ち点は頂戴ね』とか、それぐらいのことは言います。ただ試合が終わったあとに仲良くご飯に行けるような感じはないですね」

幸菜「そうなってしまうと、対戦相手のメンバーの前で喜ぶにしてもうまく喜べないですし、相手に気をつかう感じになっちゃうよね」

木下「たとえ試合が引き分けに終わったとしても、お互いに言いたいことはいっぱいあるだろうから、それならばお互いに先に試合前に会っておいて、試合後はチームごとでいいんじゃないかな、と」

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▼クラブに”恋”した結果……
ーーお二人はそれぞれ浦和と大宮のレプリカユニフォームを着ていますが、それぞれのクラブの魅力をPR大使になったつもりでアピールしてください。
木下「自分のこと以外で応援できるチームや居場所があることが魅力かなと。そもそもレッズはサポーターの数は多いですが、一人ひとりが出している声量が他サポと比べて全然違います。みんなが本気で応援できる空間がすごいなと。単純に家族でもないチームをあれだけ本気で応援し続けることはなかなかできないですし、レッズは浦和の街に根付いています。レッズがあるから毎日頑張れるんです。幸菜ちゃんはどう?」

幸菜「もう大宮アルディージャほど無償の愛を捧げられるクラブはないと思います。多分、大宮アルディージャのために流した涙は、人生の中で一番多いんじゃないか、というぐらい。勝っても負けても涙が出ちゃうんですよね……」

ーーちなみに最も印象に残っている大宮の試合は何ですか?
幸菜「2015年11月14日J2第41節・大分トリニータ戦です。0-2から大逆転勝利を飾った試合です。多分、私が死ぬときも思い出すんじゃないかな。思い出すだけでいまだに泣けます。実は大宮サポーターがあの試合をまとめた動画があるのですが、その動画を見るだけで私たちは何度でも泣けるんです。この前の大宮サポの集まりでその動画を見ながらむっちゃ泣いていたら、店員さんにビックリされました(笑)。

私が応援を始めた2011年から、アルディージャはずっと残留争いをしていましたし、何度も今年はユニフォームを買うのを止めようと思いました。監督もコロコロ代わるし、勝てない時期も続いたり……。そこで人生の絶望を味わいましたが、自分にはどうすることもできないですし、選手や監督、社長は辞められるけど、サポーターで居続ける限り、サポーターだけは取り残されていくんですよね。それでも残ったサポーターたちが苦しい時を乗り越えて、あの試合で大分に勝利し、J2優勝を決めたことで苦労が報われた気がした瞬間でした。

結局、J3に降格した大分に負けそうになりましたし、本当に人生の終わりだ、ぐらいまで思ったのですが、そこから劇的に逆転まで持ち込んで勝ち切りましたから、もう生涯忘れられない、何とも言えない気持ちになりました」

ーー2015年の大分戦が幸菜さんの心の中にあるマイ・ベストゲームなのですね。
幸菜「もう人生で何があっても頑張れる気がするぐらいの。本当にあきらめなければ、願いは叶うことが分かりました」

(後編「日本のサッカー文化を盛り上げる意味でも良い存在になっていきたい」)

木下紗安佳さん(浦和レッズサポーター)
埼玉県さいたま市(旧大宮市)出身。いまは9番の武藤雄樹選手がイチオシ。陰から飛び出て点を決めてくれる姿にワクワクしています! Jユニ女子会を始めてからサッカーライフの幅がかなり広がり自分自身でもビックリしています。来シーズンはJユニのレッズメンバーで遠征したい!!

幸菜さん(大宮アルディージャサポーター)
東京都出身、埼玉県越谷市育ち。ファミリーのように温かな大宮アルディージャがとにかく大好き。スタジアムでは熱くなり過ぎて、勝っても負けても涙が出るほど。好きな選手はゴールキーパーの加藤順大選手。

郡司聡

茶髪の30代後半編集者・ライター。広告代理店、編集プロダクション、サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』編集部勤務を経て、現在はフリーの編集者・ライターとして活動中。2015年3月、FC町田ゼルビアを中心としたWebマガジン『町田日和』を立ち上げた。マイフェイバリットチームは、1995年から1996年途中までの”ベンゲル・グランパス”。