【森雅史の視点】2021年2月26日J1リーグ第1節 川崎フロンターレvs横浜F・マリノス
J1リーグ第1節 川崎フロンターレ 2(2ー0)0 横浜F・マリノス
18:03キックオフ 等々力競技場 入場者数4,868人
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リーグ戦にVARが戻ってきた。日本でのVARは2020年に導入されたものの、新型コロナウイルスの影響からリーグ戦1試合で導入が中止されていた。2021年シーズンは先のゼロックススーパーカップに加え、ルヴァンカッププライムステージ13試合、そしてJ1リーグ戦全380試合でVARが使われることになっている。
近年のリーグ改正ではハンドの反則となる部分が細かく規定されたり、オフサイドの精度をギリギリまで上げるようになってきたため、人間の目だけではファウルかどうか追いきれない可能性が高い。そういう中でVARは決定的な判定違いを避けるために必須だと言えるだろう。
一方でVARの導入から新たな混乱が生まれることも懸念される。たとえばゴールが生まれた後レフェリーが長々とビデオを確認していたら、スタジアムの熱狂はもどかしい雰囲気の中でしぼんでいく。また、ずいぶん前の時間まで巻き戻ってファウルと判定されると、観客は意味が分からずに混乱しかねない。
ではこの開幕戦はどうだったか。西村雄一主審はVARが入っていることをほとんど感じさせなかった。それくらいスムーズな試合運びで、VARの存在を感じられたのはオフサイドがあったときぐらいではないだろうか。
VARが導入されると、副審は際どいオフサイドをあえて流してチャンスの芽を摘まないようにし、その後VARが事実確認を行って主審に伝える。そのため副審が見逃したように見えてしまうのがこれまでとの大きな違いになり、その違和感はあったかもしれない。
だが、この日の判定では見ている側にとって「待ち時間」は少なく、VARの存在はゲームの流れを邪魔しないと知らしめたはずだ。
そしてこの試合では運良く誤審に繋がるようなプレーはなく、VARがゲームを救わずに済んだ。この日のVARを担当したのは山本雄大主審。2019年の誤審後、等々力陸上競技場で主審に復帰し、両チームの選手や観客に励まされた。VARの存在は、山本主審のように1つのジャッジがレフェリーを潰しそうになる危険性を排除してくれる。
リーグ戦へのVAR再導入がトラブルなく終わったことは、今後に向けて明るい兆しになったはずだ。それがこの試合のもう一つの価値だった。
森雅史(もり・まさふみ)
佐賀県有田町生まれ、久留米大学附設高校、上智大学出身。多くのサッカー誌編集に関わり、2009年本格的に独立。日本代表の取材で海外に毎年飛んでおり、2011年にはフリーランスのジャーナリストとしては1人だけ朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の日本戦取材を許された。Jリーグ公認の登録フリーランス記者、日本蹴球合同会社代表。2019年11月より有料WEBマガジン「森マガ」をスタート