フットサルライターがJリーグを取材して気づいた3つのこと
横浜駅からバスに揺られて数分。いつもの横浜市平沼記念体育館が見えた。ここは、フットサルのFリーグ・ディビジョン2(F2)に所属しているY.S.C.C.横浜のホームアリーナである。普段はこの平沼で取材をしている。そうフットサルを主戦場にしているライターだから。でも、今日はその平沼を素通りし、お隣にあるニッパツ三ツ沢球技場へ。同じY.S.C.C.横浜でもサッカーの方、J3の公式戦に向かった。
▼広大な芝生のスケール感
スタジアムに入ると、目の前に芝生が見える。広大な辺り一面の芝生にはスケール感があり、まだ何も始まっていなくても「サッカーを観に来た」という高揚感がある。そして、空が見える。風の流れがある解放感と、昼に始まり夕方に向かっていく時間の経過を肌で感じ取れる。また日によっては雨が降っている、雨が降るかもしれないという緊張感もある。そして雨が降り出すと、そこにいる人たちが一斉に雨具を装備し始める妙な一体感ですら楽しかった。
Fリーグは屋根のある体育館で行われている。フットサルに慣れている自分にとっては、この試合中に天候を気にすることはないし、密閉された空間から外に出ないと「もう日が暮れてきた」という時間の経過も忘れてしまう。芝生と空がある。この当たり前のことがすごく新鮮。自然の恵みを人工物であるスタジアムで感じることができる。箱が違うだけでこうも違う。そして箱の存在だけで、その競技を観に来たという『演出』がされているように感じた。
▼流れているリズムの違い
22人が広い芝生の上で等間隔に並び、狭い空間を作り出し始めた。ゆっくりと最終ラインとボランチでボールを回し、一気に縦へと動き出す。その瞬間、「来た!」と声を上げている人がいた。サッカーにはこの『緩』と『急』で展開されている。
フットサルは出場している人数が少ないため、出しどころを作りながらも奪われないように移動をしなければいけない。狭いスペースで常にボールと人が左右に動き続けている。いわば、常にハイスピードなビートが奏でられている。細かい戦術や技術よりも前に、観ている景色とリズムが全く違っている。それはどちらも違った心地よさを持たせている。同じボールを蹴る競技ではあるけれど、それぞれの特徴と個性があった。
▼似て非なるもの、でも同じもの
サッカーとフットサル、それは似て非なるスポーツである。でも、着ているユニフォームが同じ水色だった。それが数あるJリーグの試合がある中で、このニッパツ三ツ沢球技場に来た理由である。Y.S.C.C.横浜はサッカーもフットサルもある。見慣れた水色のユニフォームをアリーナではなくスタジアムで観ることは、その環境の違いから最初不思議な感覚があった。でも、時間が経過すると、同じユニフォームの選手たちが戦っていることに没頭し始めた。試合中、監督や選手たちは時には悔しそうに、時には嬉しそうに、そして時には怒ったりもしている。それはサッカーもフットサルも同じ。さらにサッカーはJ3から、フットサルはF2から上を目指し戦っているのも同じ。サッカーもフットサルと同じように、選手たちから熱い気持ちが心に刺さっていた。
サッカーが好きな人はサッカーを優先してほしいし、フットサルが好きな人はフットサルを大切にしてほしい。でも、もし時間があれば、試合日程が被っていない日があったら、隣にあるアリーナや隣にあるスタジアムに来てほしい。いつもとは違う場所で、いつもとは違う競技で新たな刺激を受け、それをスタジアムやアリーナに持ち帰ってほしい。そして選手、スタッフ、フロントが戦い、それをサポーターたちが応援している同じ風景を体験してほしい。そこにはいつも楽しんでいることと同じ、スポーツの面白さが溢れている。