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テーマアジア大会取材記者陣、手倉森ジャパンを切る

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熱き軍曹・平野貴也

2014 09/27  12:01

『チームニッポン』の中の手倉森ジャパン。選手村で、大会で、若きサムライが得るべき刺激とは?

「U-23+オーバーエイジ3名」が年齢制限のアジア大会へ、あえて「U-21」のチームで参加している日本。その最終目標は、あくまでリオ五輪でのメダル獲得にある。今回の『J論』ではそんなアジア大会を取材している記者陣が、さまざまな角度から"手倉森ジャパン"を診断していく。第2弾となる今回は、開会式から横断的に多種目を取材してきた平野貴也が、他競技目線から"手倉森ジャパン"を考える。


▼男子サッカーにとって、ここは強化の場
 アジア大会に参加しているサッカー男子U-21日本代表は、ラウンド16でパレスチナに快勝し、準々決勝でいよいよ開催国・韓国との対戦を迎える。日本でもすべての試合がTV中継されているようなので、国内にいるサッカーファンの方々はその戦いぶりを把握されていることだと思う。

 ところで、皆さんはこの大会をどのような位置付けで見ているだろうか。

 サッカーの世界から見れば、アジア大会は「リオ五輪を目指すU-21日本代表の腕試し、五輪アジア予選の試金石」でしかないかもしれない。実際に、23歳以下という参加条件をさらに下回る世代であえて勝負しているあたりには「何としてもアジア大会を優勝(連覇)したい」という気持ちよりも、「アジア大会を使って五輪世代を強化したい」という狙いのほうが大きく見える。

 単純に「日本サッカーにとってのアンダー世代の強化のための大会」とざっくり位置付けてしまっても、大きくは間違っていないだろう。一方、アジア大会全体を見てみると、多くのアマチュアスポーツがどうにか競技をアピールしようと必死に戦っている姿がある。今回は、少し外側からサッカー、あるいは手倉森ジャパンが置かれている立場を考えてみたい。

▼選手村という特殊な空間で
 アジア大会は規模こそ違うが、五輪同様に各競技が同じ地域で一斉に開催される総合競技大会だ。どの競技にとっても普段の大会とは少し異なる雰囲気となる。その特徴の一つは、「選手村」だ。普段は関わることのない他競技の選手が一斉に集う。わずかな時間で極端に交流が深まるわけではないが、何となく、どことなく、すれ違う人たちが気になってくる場だ。

 過去にも五輪やアジア大会に出場した選手に話を聞いてきたが、その多くが「テレビで見たことのある選手を間近で見た」とか「よく見かける人だなと思ったら、金メダルを取って次の日の新聞に載っていた」という話が珍しくない。実際、今大会でなでしこジャパンの一部の選手は、他競技の女子選手と相部屋になっているともいう。

 選手村の建物は大会後にマンションとして売り出される。部屋の中の部屋を割り当てられている形だ。残念ながら各競技で行動スケジュールが合わないため、同部屋でも顔を合わせる機会は多くはない。知り合いなどを通して交流を深める選手もいれば、会釈だけで会話はしない選手もいるというのが実情である。

 つまり、互いが関心を示さなければ、選手村は単なる合同宿舎に過ぎないのだが、近年の日本は五輪やアジア大会において選手団に「一つのチーム」としての結束を促す方向へ舵を切った。ホッケー男子のMF川上啓(名古屋フラーテル)は「ほかの競技の選手が頑張っている姿を見ると、『自分たちも』と思う。チームニッポンとしての誇りをすごく感じる。フェンシングの太田雄貴選手(森永製菓)も言っていたと思うけれど、『マイナー競技の自分たちもできるぞ』というところを見せたいと思っていた。(メジャー競技の)おこぼれじゃないけれど、他競技の活躍で大会の注目度が高まるのもチャンスだと思う。サッカーや野球、競泳など日本で有名なスポーツがある中、『ホッケーもある』と知ってもらえる大会。他競技の選手も同じジャージを着て、同じ宿舎に泊まっている。深いコミュニケーションを取ることはなかなか難しいけれど、僕は競技を終えた(日本選手団主将の)ウェイトリフティングの三宅宏美選手(いちごグループ)に声をかけてもらって、すごく刺激を受けた」と話していた。

▼この環境から若き選手が得るべきもの
 サッカーは、1993年のJリーグ発足以来、国内でのメジャー競技としての立場を確固たるものにした。今大会で全試合がTV放送されている競技というのはそう多くない。日本選手団の旗頭としての役割も担っていると言える。なでしこジャパンが、国内リーグの存亡を背負って戦いながら、国際大会で勝って知名度を得て来たのと同じように、多くのアマチュア競技はこの大会で「名を挙げたい」という気持ちを秘めてこの場に立っている。

 バドミントン男子のエース・田児賢一(NTT東日本)は「やっぱり、全競技が行われる大会のときに、注目度は上がる。バドミントンの人気が出て、テレビでバンバン放送してもらうようになったらいいなという気持ちは、選手はみんな持っていると思う。多分、バドミントンだけではなくて、普段は(メジャー競技の)影に隠れてしまっている競技の選手もみんなが厳しい状況の中でやっているから、きっと同じように思っている。注目度のある大会で結果を残すことが、注目される一番の近道」と話した。実際にサッカーへの関心度が他競技の注目度へとつながるかどうかは未知数だが、それでも手倉森ジャパンが勝ち進むこと自体が他競技への刺激になっていくのは確かだ。

 そして、若きU-21日本代表には、他競技からの刺激をもっと深く、存分に受けてもらいたいと思う。手倉森ジャパンの守備の要である岩波拓也(神戸)は「競泳とかバスケットボールの試合を少しだけテレビで見ました。チームメートから同世代のすごい選手が競泳に出場していると聞いたけど、瀬戸大也選手(JSS毛呂山)が金メダルを獲得した姿はすごかったし、刺激になりました。普段あまり見ない競技を見るのも新鮮でした。ただ、バスケットはルールをよく知らないので、随分と笛が鳴るんだなという印象だけで、あまり分からなかったです(笑)。でも、選手村にはテレビなどで見たことのある選手もいますし、いろいろな競技の方がアジア大会で日本にたくさんのメダルを持ち帰ろうとしている雰囲気を感じますし、刺激になっています」と正直な感想を話していた。

 他競技のことなど、最初はよく分からないものだ。だから、関心も持ちにくいかもしれない。しかし、プロであろうが、アマチュアであろうが、その道のトップを本気で目指す選手が触れ合って刺激を受けないわけがないとも思う。ましてや「競技の未来」を背負って戦う選手の姿を知れば、思うところもあるだろう。その重さを知ることは、一人のアスリートとしての成長を促してくれるに違いないのだ。

 国民の、選手団の期待を背負って日韓戦を制し、それが他競技の選手への刺激になり、今度は他競技の活躍に刺激を受ける。そんなサイクルが「チームニッポン」に生まれれば最高だ。他の国際大会とは異なり、このU-21日本代表には、アジア大会ならではの「チームニッポンの一員としての手倉森ジャパン」という立場がある。だからこそ得られる刺激。それを存分に受け、さらに強く、たくましい選手、チームになってもらいたい。


平野貴也

1979年3月1日生まれ。東京都出身(割りと京都育ち)。専修大卒業後、スポーツナビで編集記者を経験。1カ月のアルバイト契約だったが、最終的に6年半居座る。2008年に独立。フリーライターとして大宮のオフィシャルライターを務めつつ、サッカーに限らず幅広く取材。どんなスポーツであれ、「熱い試合」以外は興味なし。愛称の「軍曹」は、自衛隊サッカー大会を熱く取材し続ける中で付けられたもの。

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