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「日本vsコートジボワール」プレビュー 指揮官は遠藤と青山を両方「選ぶ」

初戦が決戦であるという認識は多くが共有しているだろうし、力の均衡したこのグループで黒星スタートは相当に厳しい。勝って始まるための術策が求められる。

毎週、週替わりのテーマで議論を交わす『J論』。今週は「W杯初戦。J論的注目選手&注目ポイントはここだ」と題して、各書き手がコートジボワール戦、そしてW杯に向けた注目選手と注目ポイントを説いていく。その最終回は代表キャップ140を超える重鎮、G大阪MF遠藤保仁と、Jリーグ王者・広島で磨き抜かれた新鋭MF青山敏弘の起用法について、J論編集長・川端暁彦が考察する。


▼スーパーサブ遠藤への疑問符
 日本時間15日10時に行われるコートジボワール戦が刻一刻と近付いてきた。初戦が決戦であるという認識は多くが共有しているだろうし、力の均衡したこのグループで黒星スタートは相当に厳しい。勝って始まるための術策が求められる。

 その意味で最も難しい人選を迫られているのは、何かと注目される1トップよりもボランチではないだろうか。昨秋の欧州遠征ではボール奪取と機動力に秀でた山口蛍がスタメンに定着した一方で、遠藤保仁が「スーパーサブ」としての適性を示した。途中交代でパスワークのリズムを様変わりさせることのできる遠藤を起用することは、彼自身が守備面でのウィークポイントを抱えていることと合わせて合理的なもので、日本代表は一つの方程式を得たような感触さえあった。

 経験豊富な長谷部と若くてエネルギッシュな山口というコンビで先発し、状況に応じて遠藤を投入するという方程式。オランダ、ベルギーとの試合を通じて山口の成長を確認できたことで、ザッケローニ監督も、恐らく3月のニュージーランド戦までは「スーパーサブ遠藤」にある種の確信を持っていたように思う。

 ところが、長谷部誠の負傷離脱が長引き、復帰したあとの状態も決して良好とは言えないことを受けて、ある種の選択を迫られることとなった。つまり、山口の相棒を誰にすべきかということだ。

▼指揮官は遠藤に懸ける
 一つは当然ながら長谷部であるが、これは彼の負傷が万全に癒えていたとしても、不安の大きい選択だ。豊富な経験はプレッシャーのかかるW杯初戦において頼もしいが、試合勘を失っていることは間違いないし、そのパフォーマンスは”やってみるまで分からない”という部分が小さくない。起用するとしたら、かなりの博打となる。

 別の一手として青山敏弘という選択もある。守備の激しさと鋭い縦パスという特長を備えたこのボランチの能力に指揮官が一目を置いているのは間違いないが(そうでなければ、細貝萌を落としてまで選ばないだろう)、最もプレッシャーのかかるW杯初戦の先発に、国際Aマッチ出場歴一ケタの選手を起用するのは、これまた大きな博打である。

 よってこの初戦、指揮官は遠藤に頼るのではないか。確かに今季の遠藤は優れたパフォーマンスを見せているとは言い難い。守備の実効性という意味で4人のボランチ候補の中で最も弱みを持つ選手でもある。ただそれでも、140試合を超える国際試合を戦い抜いてきた百戦錬磨の舵取りがピッチに立つ意味は小さくない。「スーパーサブ遠藤」はメリットのある策だが、それも長谷部のような経験ある選手が万全で先発してこそのものである。

▼スーパーサブ青山
 では、青山には出番がないのか。

 これが実のところ「ある」のではないか。ゆっくりとしたボール回しを好む遠藤を途中から入れることでリズムを変えて相手を幻惑するのが「スーパーサブ遠藤」が持つメリットならば、逆の一手も有効だろう。すなわち、縦に速く鋭いパスを、リスクを冒してでも入れていくプレーを特長とする青山を、途中から入れることだ。

 本番直前の親善試合、ザンビアとの一戦で遠藤に代わった青山が見せた縦一本のロングパスは決して偶然の産物ではない。それまで出て来なかったタイプのパスが、突然出てくるようになる効用は、あの一戦でも見え隠れした。あそこまでハマることはまれだろうが、守備の強度に不安のある遠藤の出場時間を限定するという意味でも、「遠藤→青山」のスイッチは有効な一手だ。

 かつてのように、遠藤の先発が彼のフルタイム出場を前提としたものにはならないだろう。G大阪と広島という、Jリーグを代表するパスサッカーの2チームが育て上げた新旧二人のボランチ。どちらが先発するにせよ、そのスイッチングが生み出す攻守の効用は、初戦のキーポイントとなるかもしれない。